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スポーツ 建山義紀の「ココだけの話」 vol.8 性格と好不調の波の関係 建山義紀の「ココだけの話」 テキサス・レンジャーズ投手

スポーツ
 
 こんにちは、建山義紀です。
 いや~、今シーズンも終わりました。今年はニューヨーク・ヤンキースへの移籍がありましたが、怪我もなくやってこれました。メジャーに上がるのはなかなかキビシかったけど、それでくさってしまったりというようなことはありませんからご心配なく。なんでそう思えるのか? 話してしまおうかな。ここだけの話やで!
 
 

自分の性格を自己分析

 
 自分の性格を分析すると、ぼくは 「自分に厳しく、不安を抱きやすいタイプ」 と言えるんですよ。不安は誰だってそれなりに抱くでしょうけども、ぼくの場合、不安に厳しさが同居しているから、うまくバランスがとれて、有頂天になったり調子に乗りすぎることがない。ある意味、クールと言えるのかもしれませんね。
 ぼくらがいるプロアスリートの世界は体調と調子が直接つながっていますから、好不調の波を自分で判断しやすい面があります。だから、調子がいい時は調子が悪くなる時のことを警戒して緊張感を持つことができるんです。「今の状態をずっとキープすることは難しいので、落ちた時に困らない準備をしておかなければ」 とね。その逆の時は開き直ることができる。「必ず上がる時がくるから、準備不足にはならないでおこう」 と。
 そうしたメンタルのバランスを保てているので、たとえ成績がよくても楽観的にはなりませんでしたし、成績がふるわなくても、開き直ってしまって、悲観的にとらえてこなかったんです。こういう考えって、案外ビジネスの世界にも通じるんじゃないですか? 
 
 ちなみに、ぼくに足らないところは、いい意味での一人よがり感ですね。アメリカには、「自分の世界に浸って投げる」 という独特のメンタルを持つ投手が大勢います。でもぼくは、周囲の状況が読めなくなるほど自分に入り込むことは、ない。どうしても周りを気にしながらやってしまうところがあるんですが、彼らみたいなメンタルのありようも持てるようになれたらいいなと思いますね。そういう選手はエゴイスティックに見える部分もありますが、やはりすごいなと思いますからね。
 
 

プロ入り最多のイニング数

 
 そんなことを感じながらアメリカでプレーを続けているのですが、今季は自分にとってよいシーズンでもありました。実はね、今年はリリーフ投手として、プロ入り後、最もイニングを投げたシーズンなんですよ。プロ入り後ですから、当然日米通した全キャリアでということ。意外に思われるかもしれませんけど。先月末なんか、4年ぶりに先発でも投げました。思ったより自然に投げれたわ。
 たくさん投げられた理由は、怪我がなかったことですね、やっぱり。怪我もなければ、故障者リスト入りも、もちろんしていません。そもそもアメリカに来てから、あまりイニングを投げなくなったので、怪我そのものは日ハム時代に比べて減少傾向にはあったんですよね。ただ、その中でも特に今年はコンディションを維持して、1年間を走り抜けることができた。ぼくにとって大きな自信になりましたね。「確かなものがつかめたシーズン」――そう言えます。
 
 ただ、常に目標を高いところに持っているせいか、成績が良くても単に 「よかったね」 で終わらせない自分がいます。やっぱりストイックなんかな?(笑)
 
 でもまあ、38歳になってイニングをたくさん投げられたことは、ほんと正直、「やるな、俺」って感じですよ。もちろん来年に残る疲労も今までとは違う形で出てくるでしょうから、シーズンが終わっても緊張感は保ち続けるけどね。
 
 

アメリカのファンと球場

 
 さて、ここで少し話題が変わりますが、編集部に質問を寄せてくれた読者の方がいらっしゃるので、お答えしたいと思います。
 
 「アメリカのファンはどんな雰囲気ですか?」
 そうですね、一言で言うと 「ノリがいい」 という感じですかね。マイナーリーグは球団が集客を頑張らないと、受け身の姿勢では球場が満員になりにくいもの。ですから、試合中に行われるイベントには趣向を凝らしたものが多いんですよ。各イニングの間にイベントを挟んで試合を盛り上げるんですが、試合時間が押していても必ずやる(笑)。お客さんもノリがいいので、しっかり受け入れてくれる。だから企画する側もやりがいを感じて 「次はどんなイベントでお客を喜ばせようか」 という試合内プロモーション(?)に力を入れるんです。そういうところは、アメリカならではの独特の雰囲気づくりだし、お客さんの気質だと思いますね。
 日本のプロ野球は、たとえばぼくが投げてた日本ハムファイターズは、温かく見守られている感じでした。失策をしたらファンからブーイングをもらいますし、自分も落ち込みますけど、気が付くとそのブーイングが妙に優しかったり(笑)。アメリカのお客さんは、とにかく自分が楽しむ目的で来ているので、シビアだけど、乗るところはどんどん乗っていく。そんな違いがありますね。
 
 さて、次は 「アメリカにはどんな球場があるんですか?」
 そうですね、球場の違いというよりは、環境の違いのほうが大きいかな。たとえば大陸の西と東ではよく言われることですけど、湿度などの関係でボールの飛び方の違いがあったりします。でもぼくが球場を見る時に気になるのは、雰囲気かな。球場の風格というか雰囲気も、球場ごとにそれぞれ。レッドソックスのフェンウェイ・パークやヤンキースのヤンキースタジアム、レンジャーズのマイナーチームの本拠球場のザ・デル・ダイアモンドなどは、球場自体の持つ雰囲気がとてもいいんです。
 
 やはりキレイで威厳のある球場で試合をやるのは一選手として嬉しいですし、何度でもこのマウンドに立ちたいと思うんです。ぼくの先輩方、たとえば、先日4000本安打を達成した――ぼくも何本か貢献してます。上原も2本貢献してるはずやで(笑)――イチローさんや、日本球界でも、すごく面倒見がよくて他球団の選手なのにアドバイスをくれたヤクルトの宮本さんや、48歳という年齢でまだ野球を続けている中日の山本昌さん・・・そういう人たちのように、一日でも長く野球をしていたいですね。
 
 
 
 

 執筆者プロフィール 

建山義紀 Yoshinori Tateyama

メジャーリーガー

 経 歴 

1975年、大阪府出身。中学時代からボーイズリーグにて野球を始め、現在のピッチングを支えるサイドスローを確立。東海大仰星高校ではエースとして君臨。1998年にドラフト2位で北海道日本ハムファイターズに入団すると、ルーキーイヤーの1999年にいきなり先発ローテーションへ定着。2002年から2004年にかけてセットアッパーとしての才覚を表すと、リーグ最多の13ホールドを記録し、最優秀中継ぎ投手を獲得。その後、先発・リリーフともに計算できる投手としてチームに貢献した。2010年に海外FA権を行使してのメジャー挑戦を表明、テキサス・レンジャーズとの契約を勝ち取った。2013年のシーズン途中からニューヨーク・ヤンキースに移籍。サイドスローから繰り出す角度のある速球と、ダルビッシュ有選手をして 「球界最上」 と言わしめたスライダーが武器。

 ツイッター 

http://twitter.com/tatetatetateyan

 
 
 
 

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