保険料率改定が解約返戻率に影響
法人の保険には、保障目的や資産形成目的などさまざまな種類がありますが、資産形成を目的とする保険は以前に比べ効果が薄くなってしまっているのが現状です。資産形成を目的とするためには、解約したときの返戻率(解約返戻率)が高い商品を選択する必要があります。しかし、2017年4月に保険会社が一斉に保険料率を改定した影響で、以前と同じ保険にもかかわらず保険料が上がり、解約返戻率が低下して、中には販売停止してしまった商品もあります。
保険料率改定の理由を簡潔に説明すると、マイナス金利を導入したことで利率が下がり、保険会社が当初予定していた運用益を出せなくなってしまった、というのが原因です。このニュースが発表されてから、2017年3月までに「資産性の高い商品に入っておきたい!」と駆け込みでの申し込みが保険会社に殺到したのは記憶に新しい出来事です。
個人では外貨建て商品の需要が高まる
こうして保険料率の改定以降、軒並み資産性の高い商品のニーズが低下しました。そこで新たに注目されたのが外貨建ての保険です。外貨建ての保険は為替リスクなどを背負う一方で、円建ての商品よりも遥かに高い資産性を誇ります。それは円よりも外貨のほうが高い金利を維持していることが要因で、長期間運用するほど効果を発揮します。
もともと円建てよりも外貨建ての商品のほうが、解約返戻率が高いのは間違いありませんでした。ただ、円建ての商品も悪くはなかったため、為替のリスクを避けて円建ての商品を選ぶ方は多かったと思います。しかし、今では円建てと外貨建ての商品との解約返戻率の差が大きく開いてしまったため、為替のリスクを考慮しても外貨建ての商品を選ぶお客様が増えているのです。よって、今まで教育資金積立や老後資金積立で、円建ての学資保険や終身保険が選ばれていたものが、外貨建て終身保険などにシフトしてきている傾向があります。
経費に算入できる法人向け外貨建て保険が増える?
個人向けの外貨建て商品の需要が高まってきたのに対し、法人向けの需要は保険料率の改定以降も変わりませんでした。理由は明白で、経費に算入できる外貨建て保険が限りなく少なかったためです。しかし料率改定から1年、ついに金融庁の認可が下り、一部の保険会社では経費に算入できる法人向けの外貨建ての保険が新たに販売されようとしています。1つの保険会社から新商品が発売されれば、これを追うように他の保険会社も新たな商品開発に動くのではないでしょうか。
為替のリスクを少しでも分散させるために
外貨建ての保険を選ぶうえで気になるのは、やはり為替リスクであると思います。保険金額と保険料が共に外貨であるがゆえに、 円換算すると毎月の保険料が変動し、円安に振れているときは保険料が割高に、円高に振れているときは保険料が割安になります。保険金や解約返戻金を受け取るときはその逆で、円安に振れれば振れるほど多く金額を受け取れる計算となります。外貨建ての保険に加入する際は、まずこのリスクを十分に理解してから加入する必要があります。
このリスクを少しでも分散させるためには、保険料の払い方を月払にすると良いでしょう。通常、保険は年払にすることで、保険料の若干の割引があり、それによって解約返戻率も上昇します。しかし、外貨建ての保険に加入する上では、保険料12ヶ月分を一括で払うことは、その時点の為替レートで支払う保険料を確定させてしまうことになるのです。その時点のレートが円高に振れていれば良いですが、先のことは分かりません。月払にすることで、少しでも保険料の支払を分散し、レートを平準化するほうが得策と言えるでしょう。
外貨に抵抗をお持ちの方もいらっしゃると思います。しかし、資産性の高い商品であることは間違いありません。リスクをしっかりと理解し、円建て商品と外貨建て商品を組み合わせるなど、リスク分散しながらベストなポートフォリオを組みましょう!
vol.5 法人の保険にも外貨建ての時代がやってくる?
著者プロフィール
八木 照浩 Yagi Akihiro
Ever Side 八木照浩保険代理店FP事務所 代表
経 歴
慶應義塾大学経済学部で国際金融論を専攻。卒業後は国内の生命保険会社で企業保険や個人保険の営業、法人リスクコンサルティングを行う。総合保険代理店に転職し、複数の生命保険会社の商品を手掛け、ノウハウを蓄積する。その後、培った知識と経験を活かすため独立を決意。生命保険に特化した総合保険代理店FP事務所Ever Sideを開業した。日本FP協会東京支部会員。保有資格は1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®(日本FP協会)、トータル・ライフ・コンサルタント(生保協会認定FP)、相続アドバイザー、コンプライアンス・オフィサー。
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