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ビジネス 川上徹也の「売り場に熱を!」 vol.6(最終回) 期待値の1%越え 川上徹也の「売り場に熱を!」  コピーライター/湘南ストーリーブランディング研究所代表

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あなたが扱っている商品やサービスはよく売れていますか? もっと売れていいと思っているならば、まず売り場に“熱”を産み出すことが大切です。それはリアルな店舗でもネットショップでも同じです。

こんにちは。コピーライターの川上徹也です。連載の最終回は「期待値をどう越えるか」の話をします。
 
 

店によって期待値は違う

 
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人は商品を買ったり、サービスを受けたりする時、無意識のうちに「だいたいこんなものかな」という期待値を設定します。同じカテゴリーに入る店や商品でも、値段や業態によって期待値は大きく異なります。例えば、同じホテルであっても、ビジネスホテルとラグジュアリーホテルとではサービスに期待する部分は大きく違ってくるでしょう。同じレストランでも、ファミリーレストランと高級フレンチでは、味でもサービスでも期待値が大きく違います。
 
期待値を下回ればお客さんは不満に思います。期待値よりはるかに低ければクレームをつけたくなるほどの大きな不満を感じます。二度と利用しようとは思いません。
 
では、期待値通りであればいいのでしょうか? 確かにお客さんは普通に満足はするでしょう。大企業やチェーン店などではそれで十分です。しかし、もしあなたが中小企業や個人店舗であるならば、期待値通りでは十分だとは言えません。
 
人は満足したからといって、その店に特別な感情を持たないからです。「顧客満足」を目指してサービスを改善している会社が多いですが、現在の日本において、お客さんが満足するのはもはや当たり前です。残念ながら満足した気持ちはしばらくすると簡単に忘れさられてしまいます。大企業やチェーン店であれば、広告や店を見て思い出すこともあるでしょうが、中小企業や個人店舗では思い出してもらえません。もちろんリピーターにもなってくれないでしょう。
 
では何を目指せばいいか。それは満足の一歩上です。人の感情が動くのは、商品やサービスが、期待値とは違っていた時です。期待値よりも上回ると、満足を越えて心が大きく動きます。そうすると、記憶にしっかり残りまた利用しようと思うのです。
 
 

ちょっとしたことで期待値を上回れ

 
だからといって「期待値を上回れば上回るほどいい」かといえばそうではありません。値段が高くない店でサービスが期待値より高すぎると、お客さんは逆にうっとうしく感じたり、何か裏があるのかと警戒したりするからです。また期待値は一度受けたサービスが基準になります。次回その期待値をさらに上回るのは至難の業ですし、まず続きません。だから期待値は上回りすぎてはいけないのです。表題のように「期待値の1%越え」くらいがちょうどいいのです。
 
そもそも商品やサービスなど本筋の部分で満足を越えるのはかなり難しいことです。また、人は期待していない時に何かが起こるほうが、強く心が動きます。本筋の商品やサービスではない些細なことのほうが心に残りやすいのです。
 
では、具体的にどのようなことをすれば、期待値を1%上回ることができるのでしょう? 一番簡単なのは、何か「おまけ」を渡すことです。ただし、最初からおまけがあるとわかっていると人の心は動きません。予想していない時に「おまけ」があるからこそ、心が動くのです。
 
以前、ある小さな地方都市へ講演に行った時のことです。コンビニでコーヒーを買うと「これ一緒に食べてください」と小さなクッキーを渡してくれました。コンビニでそのようなおまけをもらったのは初めてだったので、ちょっと驚きましたがとても心に残りました。店を見回すと、オリジナルのPOPも目につきました。講演でその話をすると、そのコンビニのことは多くの人が知っていました。新しく赴任した女性店長の発案でいろいろな試みを実施していて、クッキーのサービスも「コーヒーを飲む時にちょっと甘い物が欲しくなるよね」ということで始まったものらしいです。そのような期待値を越えるサービスにより、チェーン店にもかかわらずとてもファンが多く、売り上げコンテストがあるとみんなで買って応援するぐらいの店になっているとのことでした。
 
本連載のvol.3「おもしろそうと思ってもらう」でも取り上げた、「星野リゾート青森屋」では、チェックアウトの時にスタッフが折り紙のカエルを渡してくれました。「無事にカエルことができますように」と「いつかまた青森屋へカエってきてくれますように」の2つの意味を込めてと説明してくれました。このように予想してない時の「おまけ」は、人の心を動かします。もちろん「物」である必要はありません。
 
以前、あるネットショップで買い物をした時のことです。当日配送の締め切り時間はかなり過ぎていたのですが、急ぎであることを備考欄に書いておいたら、すぐに「今日発送の便にギリギリ間に合ったので明日届きます」というメールが送られてきました。そのような柔軟な対応一つであっても、人の心は大きく動くものです。
 
また何か失敗してしまった時は、期待値を上回るチャンスでもあります。以前、あるカフェを利用した時のことです。オーダーを聞かれカプチーノを頼むと、スタッフが「シナモンは振りかけますか?」と質問してきたので、「お願いします」と答えました。やがて、カプチーノが運ばれてきて、半分くらい飲み進めた時、スタッフが謝りに来ました。
 
「申し訳ありません。実はさっきのカプチーノ、シナモンを振りかけるのを忘れてしまいまして」
 
確かに、シナモンは振りかけてなかったかもしれませんが、特に気にせずおいしく飲み進めていたのです。「もういいですよ」と言いましたが、スタッフは「今、新しいのをおつくりしてますから、こちらはそのままお飲みください」と言って、去っていきました。やがて、新しくつくり直してシナモンを振りかけたカプチーノと、小さなお菓子が一緒に運ばれてきたのです。小さなお菓子はお詫びのサービスとのことです。ちょっとしたことですが、得したような申し訳ないような気持ちになりました 新しいカプチーノはさらにおいしかったです。今までその店を何度か利用していましたが、特別な感情を抱いたことはありませんでした。しかしそのエピソードがあってからは、頻繁に利用するようになりました。
 
いずれも、些細なことばかりですが、予想していないサービスや気配りだったので心を動かされたのです。「期待値の1%越え」で心を動かされたお客さんは、あなたの会社や店のファンになる可能性は高いでしょう。
 
あなたの会社や店でお客さんの期待値を1%上回ることはなんでしょう? 「おまけ」以外にもいろいろ方法はあるはずです。ぜひ考えてみてください。 
 
この連載は今回で終わりです。半年間、ありがとうございました。
 <連載了>
 
 
川上徹也の「売り場に熱を!」
vol.6 期待値の1%越え

 著者プロフィール  

川上 徹也 Tetsuya Kawakami

コピーライター/湘南ストーリーブランディング研究所代表

 経 歴  

大阪大学卒業後、大手広告代理店に入社。営業局、クリエイティブ局を経て独立。コピーライター&CMプランナーとして50社近くの企業の広告制作に携わる。東京コピーライターズクラブ(TCC)新人賞、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC賞など受賞歴は15回以上。
「物語」の持つ力をマーケティングに取り入れた「ストーリー・ブランディング」という独自の手法で「企業」「地域」「大学」などが本来持っている価値を見える化し輝く方法を、個別のアドバイスや講演・執筆などを通じて提供している。
著書『物を売るバカ』『1行バカ売れ』(角川新書)、『キャッチコピー力の基本』(日本実業出版社)など多数。 最新刊『あなたの弱みを売りなさい』(ディスカヴァー21)が好評発売中。

 オフィシャルホームページ 

http://kawatetu.info/

 
 
 

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