企業が取り組むべき「BCP(事業継続計画)」とは
シリーズ第3回 大阪府の中小製造業に見るBCP策定の実情
◆ BCPの認知と策定状況
- BCPを、意味を含めて認知しているのは3割弱
- BCP策定済みは5.5%、策定中は5.0%、策定予定は11.2%、策定する予定なしは41.7%
- 全般的にBCP関連の施策の認知度は低く、ガイドラインの認知度は5.5~18.8%と低い
- 資金支援施策の認知度も5.9~18.2%と低い
- BCPを策定する動機は、従業員を守り、取引先に対する供給責任を果たすため
- BCPを策定しない理由は、知識やノウハウの不足、人材や資金といった資源の不足
◆ BCPを策定済みの企業の傾向
- 親会社がある(災害に対する意識が高く、防災計画の策定率も高い)
- 化学・ゴム製品、食料品の製造企業が多い
- 関西地域外や海外に事業拠点を持っている
- 海外の企業と取引関係がある
- 災害による事業中断の経験がある
- 防災計画等を策定済みである
- BCPに関する施策の認知が高い
- 情報の収集に積極的である
◆ 調査で明らかになった傾向
- 災害による事業中断の経験があるのは2割弱
- 約6割の企業が、事業の継続を妨げるような災害が発生すると考えている
- 9割以上の企業が、防災に取り組むことが企業の責務と考えている
- 約7割の企業が、国や自治体の防災施設の推進に協力したいと考えている
- 防災計画を策定しているのは約3割。策定に際して想定する災害は、火災、地震、新型インフルエンザである
◆ 調査で明らかになった課題
- 策定中、策定予定の企業でも、人材や資金といった資源の不足が課題
- BCPの策定における課題は、情報の少なさ、知識やノウハウの取得が難しいこと
- 社内への浸透、取引先との連携、優遇策や支援策等が今後の課題
災害を経験している企業はBCPへの関心が高い
これまでの調査報告書と際立った違いはないが、「大阪府の中小製造業」 ということでいくつかユニークな視点が浮き彫りになっているように思える。そのあたりを、調査と報告書作成に当たった同研究所の研究員・天野敏昭氏に聞いてみた。大阪という場所柄、阪神・淡路大震災は、BCP策定を考える際に現在でもインパクトが強いのではないかというのが、筆者の聞きたいポイントの一つであった。
天野氏によると、災害による事業中断の経験がある企業ほどBCPを策定する傾向が見られたという。阪神・淡路大震災の震源地は兵庫県だったが、大阪市内でも事業所が損壊した、神戸方面の従業員が出勤できなくなった、会社ぐるみで被災者の支援に出向いたなどの理由で事業中断を余儀なくされた企業が少なくなかった。震災を経験している企業は、防災やBCPへの関心が高く、震災時の経験を踏まえて策定するケースが多かったという。
「大規模火災による事業中断の経験を持つ企業もありました。これらの企業は、経験のない企業に比べてBCP策定に対する意気込みや真剣さが異なっていました。関西地区では、今後30年以内に東南海・南海地震の発生が予測されているため、これに対処するためBCPを策定する企業もあります。ただ、震災の規模が想定できないため、BCPの策定は手探りにならざるをえないといった声が聞かれました」 (天野氏)
報告書の中では、国や自治体、商工会議所、NPOなどが出しているガイドラインを参考にして、自社用にコンパクトなものを導入している事例が見受けられた。コンサルティング会社は、「ガイドラインは参考にはなるが、個別の企業や業界に即したより実践的なBCPを策定すべきだ」 とアドバイスする。実際の中小企業は、BCPを策定する際にこれらのガイドラインをどのように捉えているのだろうか。
ガイドラインが有効であるかどうか判断できるのは、実際に災害が発生し、事業中断の危機がある場合だが、インタビューした企業の多くが、「まずは、ガイドラインに則して策定してみることが大切」 と考えていたという。