偉業への評価は後世に任せる
行いは己のもの。批判は他人のもの。知ったことではない――。
これは幕末の偉人、勝海舟の言葉です。ちなみに彼を師と仰いだ坂本竜馬も、
世の人は我を何とも言わば言え 我なすことは我のみぞ知る――。
という言葉を残しています。
これらの言葉の意味は、自分の活動や行いには、周囲や他者からの非難もたくさんあるだろう。しかし、自分は信念に基づいて行っているのだから、周囲の批判や評価を恐れずに信じた道を突き進むのだ――というものです。
こうした志や信念を持った人の活動を、本当に評価することができるのは誰か? それは後世の人々です。信念のある人は同時代の人たちの非難を恐れない。だからこそ、大きなことを成し遂げる。そして、後の世の人が歴史的観点から見て高い功績のあった人だと、評価をするわけです。
上記のような言葉は、偉業を成すために必要な考え方でしょう。自分の生きている時代には認められなくても、死に物狂いで道を切り拓こうとしている人物だからこそ、口に出せる言葉ですよね。
自己評価よりも他人からの評価を重視する
自分が生きている間に他者からの評価を得ようと頑張るのも、決して悪いことではないのです。そして、他者からの評価を得るために大切な考え方があります。それは、評価は他人のものである――ということ。
いくら頑張ったつもりでも、相手から評価してもらえなければ、それらの努力は自己満足にしか過ぎません。特に組織の中で働く場合には、自己評価よりも他人の評価のほうが重要です。
そこで、最大の顧客は上司である――と考えてみる。
上司ではなく、「お客様を大事にするのが仕事ではないか」と思う方もいるかもしれません。ところが、上司からの評価や許可を得ないと、自分のやりたい仕事ができないケースって多いですよね。だからこそ、上司の満足度を高めることが自分の仕事力を高めることにつながるのです。上司から仕事ができる人間だと評価されれば、やりたい仕事をやらせてもらえるチャンスが広がります。
では、いかにして上司から自分への評価を高めるのか。まず、上司の評価軸を知ることが先決です。それは業務上の、会社的な基準だけではなく、上司がどういう性格でどんなことをいいと思っているのかも含みます。それを知ろうとするのは、将来的に自分が部下や後輩を持ったときの勉強にもなります。
会社組織の中で働くためには、自己満足、自画自賛の評価ではなく、他人がしている自分への評価を受け入れることが大切です。それが最終的には自分自身の評価アップ、仕事力の向上につながります。
お客様からの直接的な評価ばかりを目指すのではなく、まずは上司の評価を得ることを考えて頑張る。そのほうが、結果的には成長が早く、お客様からの評価も得られやすくなります。また、上司からの評価を得ることで成長も実感できます。
運が良い人、悪い人の違いは?
例えば、ダメな上司が助けてくれず自分が苦境に立たされた時に、「これは成長のチャンスだ」と受けとめ、「こんなチャンスが訪れるなんて、自分は運がいい!」と言い切ってしまえる人は運が良い人です。同じシチュエーションで、「これは何のケチのつきはじめだろか、ダメ上司のせいだ!」と考えて暗くなってしまう人は、自分から運が悪い人になってしまっています。そうではなく、つらいときも前向きに、「成長のチャンスだ、自分は運が良い!」と考えれば、見えてくる景色がガラリと変わるはずです。
人間には、自分の運が良いと思っているか、運が悪いと思っている人かの2種類しかいません。自分の身に起きることは、刃物と同じなのです。それを道具として使いこなすのか、刃の部分を握って怪我してしまうのか。運の良し悪しは、自分の考え方次第。あなたはどちらですか?
最高の才能は努力を続けられる才能
普通の人は何か達成したい目標がある場合、それを目指すにあたって、歩きやすい、舗装された道を探そうとします。なぜなら、ぬかるみは進みづらいですから、躊躇して一歩踏み出すのをためらってしまうんです。
しかし、努力を惜しまない人は、目の前の道が歩きやすいかどうかで歩みを止めたりはしません。汚れようが、傷つこうが、ただただ、一歩ずつ前に進んでいく。そして、その一歩を積み重ねた結果、夢や目標である山の頂に到達する。このように、小さな一歩を止めずに続けることが真の努力であり、それを続けられる人こそ才能のある人だと私は思います。
結果をすぐに求めるのではなくずっと先の目標を見据えて、稽古を続けているのだと思うようにする。仮になかなか結果が出なくても、努力することだけはやめない。そして、決して諦めない。その一歩ずつの小さな積み重ねが、時を経ると他者との圧倒的な力の差となるのです。
ですから、努力をやめないという才能こそ、真に価値ある才能だと私は考えています。
第5回 自分の評価を高めるための運と才能について
著者プロフィール
西村 貴好 Nishimura Takayoshi
一般社団法人日本ほめる達人協会 理事長
経 歴
1968年生まれ。大阪府出身の「泣く子もほめる!」ほめる達人。ホテルを経営する家の三代目として生まれ、経営術を学びつつ育つ。関西大学法学部卒業後、大手不動産に入社して最年少トップセールスを樹立。その後、家業のホテルを継いで経験を積み、2005年に覆面調査会社「C’s」を創業する。短所ではなく長所を指摘することが調査対象の企業成長に効果があると発見し、「ほめる」ことの重要性に気付く。数々の実績を上げる中で、2010年2月に「ほめ達!」検定を実施する、一般社団法人日本ほめる達人協会を設立し、理事長に就任。以降、検定を通じて「ほめ達!」の伝播に尽力している。著書に『繁盛店の「ほめる」仕組み』(同文舘出版)、『ほめる生き方』(マガジンハウス)、『心をひらく「ほめグセ」の魔法』(経済界)、『泣く子もほめる!「ほめ達」の魔法』(経済界)、『人に好かれる話し方41』(三笠書房)などがある。
日本ほめる達人協会オフィシャルサイト
西村貴好オフィシャルブログ
http://ameblo.jp/nishitaka217/
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