経営者たちに多い勘違い
演武を覚えさせてどうする!
もちろん、実際の競技で演武に出場されていた選手たちには敬意を払う。文字通り血のにじむような稽古を続けてあそこに立っていたからだ。それを理解したうえで私が思ったのは、事業経営、特に私たちみたいな中小企業のビジネスは、「無差別級」の、「組手」の、「団体戦」なんだよね。いかに美しく充実した形を演じても、ビジネスが組手である以上――場合によってはフルコンタクト空手である以上――、勝つか負けるかがすべてだ。演武と違って組手は、相手に体勢を崩されもするし、予想外の攻撃を食らうこともある。まぐれで入った一発で逆転負けを喫する可能性だってある。それでも勝たなければならない。本質的に違うんだ。
「事業経営は幹部を何人育てられるかで発展と永続が決まる」と昔から言われる。「人・モノ・金」であって「金・モノ・人」の順番じゃないのは、「人」が最初の要素だからだ。その「人」に演武を、つまり形を演じることを覚えさせてしまったら、勝てる集団になれるはずがない。そんなこともわからずに「うちには経営幹部が〇人います」と胸を張る経営者が最近多すぎるんだよ。
何が大事で何が付帯事項か
学校教育がわからなくさせた
私に言わせれば「はぁ?」だ。しかも彼が良くなかったのは、「会社が推しているこのサービスは見込み薄だから8月はこっちの商品で行こうと思います」という意味のことを言ったんだよ、チラッと。
そこで私はブチ切れた。「論点をすり替えるな! 俺はそんなこと聞いてない! これを5件成約してくるはずだったのが1件しか取れなかった話をしているのに誤魔化すな!」と。
彼も頑張ったのは頑張ったんだろう。真面目で一所懸命な人間であることは私も入社当時から知っている。けど、20件回ることがメインで、5件取ってくることは付帯事項だと思っている時点で、彼のやっていることは演武なんだよ。それじゃ話にならないんだ。
ただし、これは彼一人を責めて済む話ではないかもしれない。学校教育で一時期、「大事なのは努力すること。一所懸命やれば結果は問わない。優劣を付けない」という方針だった時期があった。考えてみたら彼はその教育を受けてきた世代な気もする。私はそういう人材を何人も鍛え直してきたから、今回もそうするつもりではいるけどね。
「あの時何を背負ってどうしたか」
超一流こそ言葉で語り継いでほしい
この傾向はどうやれば変わるだろう。私が思うに、今回のオリンピックで女子ソフトボールの上野由岐子選手がとった一連の振る舞いが一つのヒントになるんじゃないかな。
上澄みしか見ない人が今のように増えたのは、彼らの先輩世代が昔の年配者ほど自分の苦労話をしなくなった影響があると思う。今の年配者は成功話や楽しかった話しかしない。苦労話をすると嫌われると思っているからだ。だけど、それは違う。ちゃんと話したほうがいい。最初は相手も上澄みの話しか聞きたがらないかもしれないが、「なぜなら・・・」という背景のところからきちんと話して聞かせたほうがいい。
私が上野選手はすごいなと思ったのは、決勝戦で一度降板してから最終イニングに再登板してバシッと抑えたのも感動したけど、その理由もちゃんと説明したんだよ。苦労話と一緒に。メディアの記事からで悪いけど*1、彼女はこう言ったんだ。
「リリーフで投げてくれた後藤が顔面蒼白でいっぱいいっぱいだった。逆に自分が投げてやるんだと奮い立たせてもらった。最終的に皆さんの期待に応えられてよかった。(先発は)これが自分が背負っているものだと思っていた。13年間いろんな想いをしてここまで来たので、投げられなくなるまで今日は投げるという想いだった。
地元開催でプレッシャーもあったし、近くで麗香監督を見て日に日に押しつぶされてしまうんじゃないかって思った。13年という年月を終えて、最後に諦めなければ夢は叶うとたくさんの人に見せられた。ソフトボールは次回はなくなってしまうけど、また諦めることなくしっかり前に進んでいきたい。」
上野選手はもう39歳。引退していてもおかしくない年だ。なのに、功成り名を遂げてもまだ闘志が衰えていなかった。「逆に奮い立たせてもらった」「投げられなくなるまで投げる想いだった」という彼女の言葉を、今の世間の人たちはどう受け止めただろう。「根性論だ」「次の世代に花を持たせなかった」「監督は何で上野に託したのか」――もし試合に負けていたら、きっとそんなふうに受け止めていただろう。
だけど彼女は、自分が再登板すると決めた理由を説明した。どんな想いで投げたかも語った。だから、もし仮に負けていても、みんなが納得したと思う。「語り継いでいく」というのはそういうことなんだ。それができる上野選手はやっぱりすごいし、これから絶対最高の指導者になれると思う。
勝ち負けには運も作用するから一流になればなるほど最後は「楽しみます」と口にする。今回のオリンピックでもたくさんのアスリートがそう言っていた。彼らは世界中何億人という競技人口の中での1番とか2番だ。一流も一流、超一流だ。だから「楽しむ」というのも三流が「楽しむ」というのとは意味が違うわけで、であれば上野選手のように、ちゃんと言葉で説明してほしいと感じるのは私だけだろうか。
これは個人的な感想とは別に、経営者としての願いでもある。だって、そうじゃないと、「楽しみます」を言葉だけを受け取ってラクして真似できると勘違いしちゃう馬鹿が増えるから。そういう人材を教育するのは大変なのよホント(笑)。
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vol.58 オリンピックの演武を見て経営者たちの勘違いを嘆いた
著者プロフィール
佐藤 勝人 Katsuhito Sato
サトーカメラ代表取締役副社長/日本販売促進研究所.商業経営コンサルタント/想道美留(上海)有限公司チーフコンサルタント/作新学院大学客員教授/宇都宮メディア.アーツ専門学校特別講師/商業経営者育成「勝人塾」塾長
経 歴
栃木県宇都宮市生まれ。1988年、23歳で家業のカメラ店を地域密着型のカメラ写真専門店に業態転換し社員ゼロから兄弟でスタート。「想い出をキレイに一生残すために」という企業理念のもと、栃木県エリアに絞り込み専門分野に集中特化することで独自の経営スタイルを確立しながら自身4度目となるビジネスモデルの変革に挑戦中。栃木県民のカメラ・レンズ年間消費量を全国平均の3倍以上に押し上げ圧倒的1位を獲得(総務省調べ)。2015年キヤノン中国と業務提携しサトーカメラ宇都宮本店をモデルにしたアジア№1の上海ショールームを開設。中国のカメラ業界のコンサルティングにも携わっている。また商業経営コンサルタントとしても全国15ヶ所で経営者育成塾「勝人塾」を主宰。実務家歴39年目にして商業経営コンサルタント歴22年目と二足の草鞋を履き続ける実践的育成法で唯一無二の指導者となる。年商1000万〜1兆円企業と支援先は広がり、規模・業態・業種・業界を問わず、あらゆる企業から評価を得ている。最新刊に「地域密着店がリアル×ネットで全国繁盛店になる方法」(同文館出版)がある。Youtube公式チャンネル「サトーカメラch」「佐藤勝人」でも情報発信中。
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