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ノウハウ “クオリティ”から始めよう vol.4 「セッション」の習慣を持とう “クオリティ”から始めよう 人財育成コンサルタント

ノウハウ
 
国際線チーフパーサーとしてVIP用特別機を担当し、天皇皇后両陛下や各国の元首クラスを接遇してきた里岡美津奈氏。「パーソナルクオリティ」 を磨くことで日常の、あるいはビジネスのパフォーマンスを向上させるプロフェッショナルです。里岡氏が送るワンランク上のコミュニケーションメソッド。4回目は、前回に続き自分の 「スタイル」 を持つことについて、「セッション」 の勧めです。
 
 

「スタイル」とは自ら表現するもの

 
 前回、人は他人の 「クオリティ」 を、まず 「外見」 から判断すると書きました。また、私のCA時代の体験談として、周囲の目に配慮しながら自分の 「外見」 や振るまいを正していくうちに、いつしか、私なりの 「スタイル」 のようなものが生まれた、という話もしました。──あなたには、自分のものだと胸を張れるような 「スタイル」 が備わっていますか?
 
 本題に入る前に、キーワードをおさらいしましょう。ここでいう 「スタイル」 と 「クオリティ」 は、微妙に重なり合った概念です。一般に 「スタイル」 というと、
 
 (あ、あの人スタイルいいなぁ・・・うらやましい)
 
 などという使い方をしますが、私がこの言葉に込めた意味は少し違います。あえて大まかに区別するなら、「スタイル」 は自分から表現するもの、「クオリティ」 は他人の評価によって定まるもの、といえるでしょう。たとえば自動車に置き換えると、車体のデザインや色、あるいは走行性能など、メーカーがコンセプトに沿ってそのクルマに与えた特徴や美点は 「スタイル」。いっぽう、そのクルマを見た人に、欲しい、買いたいと思わせる価値の全体が 「クオリティ」 です。
 つまり、「クオリティ」を測る基準の一つが 「スタイル」 であり、自動車の場合は他に、各モデルが持つブランドイメージや、メーカーの評判なども判定基準に加味されます。もちろん、実際に買うか買わないかは価格によるところが大きいのですが・・・
 
 さて、人が身に付ける 「スタイル」 に話を戻します。「スタイル」 は表現だと言いましたが、自分一人の趣味や趣向だけで生み出せるものではありません。「外見」 であれ行動であれ、働く現場や社会への心配りを常に織り込むこと、そして、第2回で触れた 「自分ルール」 と同様に、他人とのコミュニケーションを重ねることによって、あなたの中に 「スタイル」 が形作られます。
 
 ここでぜひ皆さんにお勧めしたいのが、ただの友達ではない、ビジネスの相手でもない、上質な話し相手との自由で濃密な交流です。私はこれを、会議とも世間話とも性格の違う、一区切りの時間内で行う気ままな討論という意味で 「セッション」 と呼んでいます。
 
 

思考が育つ「セッション」のススメ

 
 「セッション」 とはどんなものなのか、一例をご紹介しましょう。私には、日本滞在歴が30年を超える、イタリア人男性の心友がいます。その方はスイスを拠点とする著名な銀行家であり、大変な教養人。そして、現在70代半ばという年齢が嘘に思えるほど、エネルギッシュです。今も日本とヨーロッパの間を忙しく行き来していますが、来日中は頻繁に連絡を取り合い、よく一緒に食事をします。
 
 互いに異なる文化の中で育った、性別も職業も違えば、年齢の開きも大きい間柄。そんな彼と過ごす時間は、私にとって単なる友交以上の価値を持っています。私の思考を一段上に引き上げてくれる、貴重な学びの機会なのです。
 学びといっても、机に向かって黒板の文字をノートに書き写すようなことはしません。ランチやディナーの載ったテーブルを囲んで、楽しくお喋りするだけです。しかし、普通の雑談かというとそうではなくて、仕事について、あるいは今の世界について、人生について、リラックスしながらも真面目に意見を交わしています。
 
 私の考える 「セッション」 の特徴は、1)ある程度テーマを絞って話し合う、2)結論を出すことより、それぞれが自分の考えを整理し、深めることを主眼とする、3)議論が白熱しても、目安の時刻になったら打ち切る、といったところです。件のイタリア人の心友との交流は、これらの条件を全て満たしています。1回当たりの制限時間は大体90分。先日は 「日本では今、どんな人材が求められているのか」 という彼の問いかけから始まり、やがて、日本人にとってのグローバル化の意味を探る議論へと発展していきました。
 こんな話をビジネスで知り合った人とはまずしませんし、まして、普通の友達相手に持ち出すことはないでしょう。ともすれば、人間関係が固定化し、コミュニケーションの内容も偏りがちな中、「セッション」 に恰好な相手と親しくなれたことは、とても幸運だったと思います。
 
 

相手と違いがあるからわかりあえる

 
 人生の大先輩であるその心友と 「セッション」 に臨む時、いつも感心するのは、彼が私の意見を決して否定しないことです。落ち着いた物腰で静かにこちらの話を聞いてから、はっきりと賛成しない場合でも、「それは違う」 ではなく、「なるほど、そういう考えもあるんですね」 と必ず受け止めてくれます。
 
 彼のこうした態度は、さっき説明したように、私たち2人が国籍も性別も異なり、親子ほど歳が離れていることと無関係ではないでしょう。様々な点で違っていることを会話の前提として意識しているからこそ、私の言ったことが少々風変わりに思えたとしても、それを打ち消すのではなく理解しようと努力するのだと思います。だとすると、2人の間に共通点よりも相違点のほうが目立つのはマイナスどころか、相互理解のためにはむしろプラスに作用していると言えるのではないでしょうか。
 
 「セッション」 を通じてそれまで気付かなかった多様な考えに触れることで、自分に新たな視点がもたらされる。それを繰り返すうちに、自分を律する 「内面」 が充実し、それが 「外見」 や行動にも自然に反映されて、一つの 「スタイル」 になっていく──。「セッション」 とは、あなただけの 「スタイル」 を磨くためのレッスン。あの人ならと思う人物に出会ったら、臆することなく果敢にアプローチして、刺激に満ちた 「セッション」 の時間をぜひ体験してみてください。
 
 
 
 
"クオリティ"から始めよう ~元トップCAの信頼をつかむコミュニケーションメソッド~
vol.4 「セッション」の習慣を持とう

 執筆者プロフィール 

里岡美津奈 Mitsuna Satooka
人財育成コンサルタント

 経 歴 

1965年生まれ。愛知県岡崎市出身。1986年に全日本空輸(ANA)に客室乗務員として入社。以来24年間、国内線および国際線に乗務し、うち15年は国賓クラスの特別機を担当。その接遇技術と実績が評価され、「ANAで最も優れたキャビンアテンダント」と呼ばれるように。2010年の退職後はパーソナルクオリティコンサルタントとして活躍。国内外のVIPを多数接遇した経験からくる独自のコミュニケーション論や能力開発メソッドが注目されている。

 フェイスブック 

https://www.facebook.com/mitsuna.satooka

 
 
 
 

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