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眠りの重要性を周知する「睡眠の日」

 
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Photo by ぱくたそ(www.pakutaso.com)
先日、3月14日に観測史上最も早く、東京で桜の開花が宣言された。例年であれば、どこも花見客で賑わう季節だが、今年は新型コロナウイルスによる影響で、多くの人々が自粛を余儀なくされている。しかし、欧米各国に比べて、日本は感染率の上昇が緩やかだ。中には、日本での検査数が少ないからだという意見もあるものの、マスクを付けたり手洗いやうがいをしたりといった、日本人の普段からの習慣づけが功を奏しているという見方もある。
 
こうした衛生状態を保つための習慣づけと同様に、基礎体力と免疫力を向上させるための習慣づけ、意識づけも必要だ。そこで重要な要素と言えば、食事、運動、そして、睡眠である。近年は長時間労働による過労死事件が相次いだ。働き方改革によって労働時間や労働環境の改善が促されている現在でもなお、たびたびニュースとして報じられるほどである。当然ながら、適度な睡眠や休息はビジネスパーソンには決して欠かせないものであり、企業にとっても、社員の睡眠不足による業務効率の低下は課題と言えるだろう。
 
世界睡眠学会(World Sleep Society)は、毎年、春分の前の金曜日(2020年は3月13日)を「世界睡眠の日」と定めている。日本においては、公益財団法人神経研究所の睡眠健康推進機構と日本睡眠学会が3月18日と9月3日の併せて年2回を日本独自の「睡眠の日」と制定し、前後1週間を睡眠健康週間として、睡眠に関する知識普及や啓発活動を行っている。そこで、この「睡眠の日」に連動する啓発活動に合わせ、ビジネスパーソンの睡眠の質向上に関わる取り組みを取り上げてみたい。
 
日本人の睡眠時間は世界的にも短く、2019年の調査では1日の平均睡眠時間が442分と、過去最短水準になっているという。日本疫学会によると、5万6953人の女性を対象にした調査において、睡眠時間が5時間以下の人は8時間前後の人に比べて1.39倍、肺炎になるリスクが高いという結果が報告されている。さらに、自治医科大学の研究から、睡眠時間が6時間以下の人は7~8時間の人に比べて、死亡率が2.4倍高くなるとされている。
 
一般的に言われるように、1日に7時間以上の睡眠が理想だとわかっていても、なかなか睡眠時間が取れないという人は少なくないだろう。しかし、睡眠時間を変えなくても、睡眠の質を良くすることで、睡眠状況の改善は可能なのだという。では、具体的にどのような取り組みがあるのか紹介していく。
 
 

睡眠状況を改善し、業務効率を向上

 
カルフォルニア州サンフランシスコに本社を置くアメリカの企業、Fitbit(フィットビット)は、睡眠データを計測したり、睡眠の質を向上したりすることを目的としたテクノロジーであるスリープテック事業を展開している。
 
同社は、日々の体調の変化や睡眠データを計測するといった機能で、健康維持のサポートを行うためのスマートウォッチやアプリを開発しており、欧米で人気を集めている。同社のスマートウォッチは腕に装着しながら眠ることで、就寝中の心拍数や寝返り回数などを計測・分析。それによって得られたデータをもとに、最適な睡眠・起床時間を計れたり、健康管理に役立てたりできるという。
 
Fitbitのアクティブユーザーは全世界で約2700万人いるとされており、収集した膨大なデータを活用することで精度の向上が図られているそうだ。日本では昨年9月に新機種を発売したほか、法人向けのサービスにも力を入れているという。Fitbitのサービスによって得られたデータをもとに健康維持の取り組みにつなげようと、これまでに三菱ケミカルや電通などの大手企業を始めとした100社以上が導入しているそうだ。
 
一方、日本国内でもスリープテック関連の事業を行う企業は、徐々に増えてきている。中でも株式会社ニューロスペースは、法人向けに「睡眠習慣デザインプログラム」というサービスを提供している。これは、睡眠を計測する睡眠計測デバイスや、計測結果をもとに改善を促すためのアプリを用いるほか、集合形式研修による3ヶ月のメニューで、睡眠の習慣を整えていくという。これらのプログラムは、NTTデータや第一三共ヘルスケアなどの企業が導入している。
 
また、同社では、KDDIのホームIoTサービスと連携した睡眠アプリを提供するほか、大手ベッドメーカーのフランスベッドと提携し、睡眠計測デバイスが内蔵されたスマートベッドを販売。さらに、ANAと時差ボケを調整するためのアプリを共同開発するなど、他業種との事業の共創も積極的に展開している。
 
ほかにも、自社の仮眠室について悩んでいる、あるいは仮眠の効果について検証を行いたいという企業へのソリューションサービスなども行っているそうだ。最近では、業務効率の向上を目的として、従業員の仮眠を推奨する制度を取り入れている企業も増えているとあって、今後ますます注目が集まる分野であろう。
 
 

健康を考える良い機会として活かす

 
現在、新型コロナウイルス関連の対策の一つとして、リモートワークを行っているビジネスパーソンも多いことだろう。その中には、自分自身の働き方に合っていると感じる人もいれば、慣れない環境で仕事をすることによる疲労やストレスを感じる人もいるに違いない。特に、業務時間が不規則になりがちなことによる生活リズムの乱れなどで、満足な睡眠が取れていないという人も少なくないのではないか。
 
記事冒頭でも述べたように、新型コロナウイルスは各方面で深刻な影響をもたらしている。東京都は、大規模イベントなどの開催自粛を来月4月12日まで延長すると発表した。経済状況なども先行きはまだまだ不透明ではあるが、こんな時こそ悲観に暮れるばかりではなく、時間を有効に活用したいものだ。この機会に健康への意識を高め、自身の働き方について考えるチャンスと前向きに捉えてみるのも悪くない。自身の生活スタイルを見直すとともに、あらためて睡眠にも注意を払ってみてはいかがだろうか。
 
 
Fitbit
https://www.fitbit.com/jp/home
 
株式会社ニューロスペース
https://www.neurospace.jp
 
(2020.3.25)
 
 
 

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