◆冷え込む市場にまたも住宅エコポイント
多くの企業や官公庁が期末と位置づける3月は、同時に不動産の取り引きがもっとも活発化する時期でもある。これに先立って政府は昨年末、平成26年度補正予算に3度目となる住宅エコポイントの予算805億円を盛り込んだ。さらに今年4月から実施される平成27年度予算にも同制度向けの予算として100億円を押し込んでいる。
背景にあるのは、冷え込みのきつい住宅市場を活性化せねば、という強い焦りだ。2月16日に発表された2014年10月~12月期のGDPは実質で前期比0.6%増だった。なんとかマイナスは避けられたものの、年率換算2.2%という数字は市場の予想を大きく下回るものだ。消費税増税以来、消費の減速傾向が顕著になっている。特に駆け込み需要の半減もあり、住宅市場の冷え込みは深刻である。
ただそういった事情がなくとも、住宅市場そのものは間違いなく縮小傾向にある。少子高齢化が進み人口が減少する中、住まいに対する需要が低下しているためだ。試しに不動産情報サイトsuumoを使って東京、千葉、埼玉、神奈川の1都3県を対象に500万円以下のマンションを探してみたところ、140件も見つかった(2015年2月5日時点)。かくも底冷えしている住宅市場を「エコポイント制度でどうにか」というのは楽天的に過ぎる考えだろう。
◆進む二極化 ピークはオリンピック前に来る
こういった冷え込み基調は、まだそれほど深刻なものとして意識されていない。住宅ではなく土地市場においては景気のいい話も聞こえてくるからだ。実際、首都圏などの都市部では土地価格が上昇しているエリアも増えている。国土交通省の「地価LOOKレポート」によると、2014年第3四半期(7月1日~10月1日)には、全国の主要都市・高度利用地150地区のうち124地区で地価の上昇が見られたという。
地価上昇の要因となっている事柄はいくつかあるが、まず挙げられるのはアベノミクスにより大企業の収益が好転していることと、記録的な低金利だ。さらに国外からの投資も無視できない。円安を背景に外国人投資家が日本の不動産を購入するケースが増えており、人気物件を売り出すとすぐに中国人投資家がやってくる、との声も聞く。
ただ、こういった流れはいずれも時限的なものであり、少子高齢化・人口減少といった構造的な地価下落要因に対抗できるものではない。これ以上下げようがない金利はいずれ上昇するだろうし、近年は中国経済にもかげりが見え始めている。アナリストの分析は様々だが、地価は2016~2017年にピークを迎え、その後はまた下落に転じるだろうとの予想が多い。
◆日本経済を支えてきた「土地本位制」
バブル崩壊がそうであったように、土地価格の下落は社会全体に特殊な影響を及ぼす。日本の経済そのものが「土地本位制」とも呼ぶべきシステムで成り立ってきたためだ。
「土地の価格は右肩上がりで上昇する」という土地神話に基づいて、一般家庭は家を買い、企業も余剰資金がある時にはとりあえず資産として土地を買ってきた。実際に土地は値上がりしたため、家庭では老後の安心を支える資産となり、企業はその含み益を担保として設備の拡充を進めた。これぞ経済の土地本位制である。