成長が続く中国と、成熟がむしばむ日本

自転車のシェアサービスって、ご存じの方には今更だけど、スマホにアプリを入れておいて、街中の指定の置き場で空いている自転車があればQRコードをピッと読み取ってロックを解除して乗れて、同じく指定の置き場であればどこで乗り捨ててもいいっていう、レンタサイクルを進化させたようなサービスです。3年前にニューヨークで初めて見て、日本はいつ始めるかと思っていたら中国が先にさっさと始めちゃった。と思ったら、来月にはもう日本に上陸してくるらしい。まったく、中国はやることが早いよね。マジ感心するよ。
で、なぜ日本にはこのスピード感がないのかと考えて、「そうか、人間と同じだな」と思った。人間、若い頃は、やりたいことは議論するより先にやるでしょう。細かい失敗は目をつぶってとにかくやって、後のことはやりながら考えるでしょう。中国という国もそうなんです。学者はいろんな指標やデータから「成長がピークを越えた」と言ってるが、私の肌感覚では全然そんなことはない。中国はやっぱりまだ成長期なんです。
いっぽうの日本を人間にたとえれば、年を取って何事も変化を好まなくなった老人みたいだ。これはあながち比喩じゃなくて、実際にどの業界も凝り固まった爺さん連中が川上を牛耳っていて、意気のいい若い連中の芽がつぶされている。例えばライドシェアのような新しいシステムを入れようとしたら、旅客輸送系の既存企業と業界団体が一緒になってつぶしにくる。表向きは「事故が起きたときの責任主体が曖昧」とか「管轄法が未整備」とかもっともらしいことを言っているが、なんのことはない、自分たちの商売を脅かされたくないのよ。それも、脅かされるのが怖いっていうより、単に“今のままでいいじゃないか、なんで変えるんだ”っていう心理だからなおさらタチが悪い。具体的にどこに手を打てば引き下がるっていうのがないからね。年をとって成熟すれば人間みんなそうなるのかしらんけど、そういう「成熟」ならこっちから願い下げだ。自分たちは政治家や役人とつるんで旨い汁を吸ってるうちにお迎えが来るからいいだろうけど、これからの社会のことも考えろっての!
産業界全体で新旧の入れ替えを
これは自分の体験からもわかるんです。私は25年もジムに通っていますが、サボってしまったり忙しかったりで、定期的にトレーニングを続けることができなかった。それを今年からは、ライザップのようなパーソナルトレーニングに切り替えて、トレーナーについてもらって1回あたり30分、集中してみっちりやるようにした。このトレーナーの料金が1回2700円。そう話すとみんな、「佐藤さん、もったいないよ。1人でできるでしょ」と言うけど、いやいや、1人じゃできないんだって(笑)。確かにトレーナーは「頑張ってください」ぐらいしか言わないし、器具の使い方や正しい姿勢は1回教われば次から自分でわかるよ。でも、1人だとどうしても怠けちゃう。「はいOK!」とか「次のメニュー!」とか言ってくれる人が横にいるから、飽きずに頑張れるんだ。
走るのが趣味の人たちも同じでしょう。走行距離やタイムや消費カロリーを端末で出して、アプリで連携して競い合って、コミュニティでワイワイやるから楽しいんだ。ウェアにしても、布地が機能性だなんてことはもはや当たり前で、デザインで差が付く時代なんだ。だったらメーカーもそっちで勝負しなきゃ!
機能の追求は従来通り続ければいい。シューズのクッションがいいのは素晴らしいことだ。でも、ビジネスの勝負はもう違うフィールドに行っているんだ。だったら、若手のほうが新しいフィールドで勝負する気力も体力もあるんだから、彼らをもっと活躍させてあげなきゃ! 体制も新旧の入れ替えを進めなきゃ! これはスポーツ関連だけじゃなく、日本の産業界全体に言えることだと思いますよ。
私たち中小企業は発展途上だから強いんだ!
その先駆けがユニクロだ。日本は格差社会じゃないから普通の人も勉強して努力すれば上に行ける。実際に地方の小企業から成り上がった経営者がいっぱいいる。柳井さんだって最初は地方の小企業の社長ですよ。それがどうしてあそこまで大きくなれたかというと、本来日本の中小企業というのは、社長が企画から財務から宣伝から何から全部できるんだよね。大企業は組織体制が欧米型になってしまったから今は専門バカの社長が多いけど、中小企業の社長は基本、今でもゼネラリストなんだ。
それというのも、教育格差がないせいで――これからは怪しいけど――「努力すれば大抵のことはできるようになる」というメンタリティが基本にあるから、まともな社長なら一通りのことは勉強して身につけようとするんだよね。そうすると、超大手にはなれなくても、個人零細から中小に成り上がる企業が少なくない。中小企業の厚みがすごいのが日本の産業界の強みだ。
何を隠そう、我がサトーカメラも、栃木の零細からスタートして、それが中国に進出して、今やアジア各地でカメラ・写真販売業界に革命を起こそうとしている。自分たちの実例から考えても、日本は中小企業こそ期待できるんじゃないかな。まだまだ、私たちもこんなもんじゃ終わらないよ! ヨロシク!
-2017年7月の勝人塾-
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著者プロフィール
佐藤 勝人 Katsuhito Sato
サトーカメラ株式会社・代表取締役専務/佐藤商貿(上海)有限公司・総経理/日本販売促進研究所・経営コンサルタント/作新学院大学・客員教授
経 歴
1964年栃木県宇都宮市生まれ。1988年、兄弟とともに家業のカメラ店をカメラ専門チェーン店に業態転換させ、商圏をあえて栃木県内に絞ることにより、大手に負けない経営の差別化を図った。以来、「想い出をキレイに一生残すために」というコンセプトを追求し続けて県内に18店舗を展開。同時におちこぼれ社員たちを再生させる手腕にも評価が高まり、全国から経営者や幹部リーダーたちが同社を視察に訪れている。2015年からはキャノン中国とコンサルティング契約を結び、現場の人材育成の指導にあたる。主な著書に『売れない時代はチラシで売れ』『エキサイティングに売れ』(以上同文館出版)『日本でいちばん楽しそうな社員たち』(アスコム)『一点集中で中小店は必ず勝てる』(商業界)など。最新刊『断トツに勝つ人の地域一番化戦略』(商業界)が好評発売中。
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