「いやー、暑いですね。あっちいあっちい。」
今年の最高気温は何度までいくかな。去年の記事のときの群馬みたいに39.8℃っていうのは、さすがにないと思うけど。
大手家電量販店が安売り競争をやめた
そこで、大手家電量販店の話だ。どうも彼らが価格競争を卒業しつつあるらしい。消費増税の影響やネット通販の低価格戦略にやられてここ数年低迷していたが、今年の決算では大手首脳が口をそろえて「高機能、付加価値商品の販売が好調」と発言していた。メーカー側の業績が悪化してリベートや販促費をそんなに投入できなくなったこともあり、価格秩序が回復したのが要因だという。かつては業界トップのヤマダ電機の販売価格が事実上の標準になっていた。でもそのヤマダ電機自体、自社競合が生じた結果大規模閉店に追い込まれ、もはや安売りを旗印にしない方針に転換している。
これ、私に言わせれば「やっとか」という話なんです。価格競争がいずれなくなるのは当たり前のことなんだ。アメリカは1970年代からもう、その次のステージであるサービス競争の時代に入っていました。何度も言ってるように、日本は初期型のチェーンストア理論に影響されて低価格至上主義に走ってしまった。その果てに現れたのが今のネット通販だ。無人化とローコストオペレーションの究極の解は店舗を持たないことだからね。
逆に言うと、それがわかっていてリアル店舗を持つのは、「自分たちはサービスで競争していくぞ!」と覚悟することでもある。接客など人的な要素から返品対応のようなシステム面の要素まで、価格じゃなくサービスで競争する余地はまだまだ、大いにある。顧客ももはやそれを望んでいる。むしろネット通販が伸びたおかげで、「商売の正道とは何か」という古くて新しいテーマに、我々はようやく気付けたのかもしれないね。
地域別価格は是か非か
とはいえ、価格は重要な問題だ。永遠に悩ましいテーマだ。悩ましいテーマなんだが・・・、もうちょっと大らかに考えていいんじゃない? と感じる話があった。ローソンが同一商品で地域別価格を導入するという発表に、一部から「全国フランチャイズで売る商品で、地域ごとに価格を変えるのはいかがなものか」と非難されたという、あの話だ。
いや、だって、それは普通でしょう。価格は違うほうが自然でしょう。全国チェーンだから同一価格じゃなきゃ、って思いこんできたことがむしろおかしかったと思うよ。人件費もショバ代も地域ごとに相場は違うんだ。もっと言えば消費税だって地域差があっていいはずなんだ。例えば道州制にして各県に税率の決定権を持たせたら、「消費税が安いから栃木県に移ってきました」なんて人も出てきて、自治体同士で競争が生まれるよ。なんでも統一規格にそろえないとやましい気になってしまうのは「統一病」だ。マジメすぎだっての!
90年代の前半には、私たち商業者の間では「九州アイランド」っていう言葉があってね。要は九州の物価が一番高かった。それこそ家電メーカーも、新製品はまず九州に投下して、だいぶ儲けていたものだ。理由としては、まだネットが普及してなくて東京や大阪との情報格差があったことが1つ。そしてもう1つ、九州はベスト電器の地場だからだ。
ベスト電器は企業の伝統としてきちっとした商売をする。つまり、ちゃんと利益を取れる価格で売る。店の雰囲気にもそれは表れているよね。反対に「安売り上等!」なのがヤマダ電機、コジマ、ケーズデンキだ。3社に共通するのは少々下品なこと・・・じゃなくて(笑)、北関東が地場であることだ。
じゃあ、なぜヤマダやコジマは安売りをするのか。まず、東京に近いからお客が東京の情報をよく知っている。栃木・茨城・群馬の人たちに商品を売ろうと思ったら東京と同水準かそれ以下の価格にしないと売れなかった。だって、「東京のほうが安いじゃん」とすぐ言われるし、同じ値段なら「東京で買った」っていう箔がつくからお客は東京に買いに出てしまう。東京は人が多くて客の絶対数が多いから安くできるだけなんだけど、お客はそんな事情は知ったこっちゃない。そうやって考えてみると、人件費やショバ代が安かった北関東に安売り上等の土壌が育つのは、一種の地政学的必然なんだな。
それに、日本はもともと藩ごとに土地柄が異なる民族だ。県は明治政府がむりやりつくった制度で、その前の、藩が違えば生活文化も民俗風習もまったく別物だった時代の感覚のほうが歴史も長いぶん、我々には自然だ。だから今でも、地方に行って地元で長く続いている飲食店なんかに入るとおもしろいよ。なぜその土地ではこの味なのかっていう必然があるからね。味噌や醤油だって、その土地で生き残るために、その土地で支持される味にちゃんと洗練されている。価格も同じだ。この土地でこれを売るんならこの価格だぞ、という基準がお客さんの肌感覚にちゃんと残っている。それをどこかの頭でっかちが「全国チェーンだから価格を統一せよ」なんて言うのは、人の中に息づく土地ごとの歴史をわかろうとしない、無粋な話ですよ。
「統一」に絶対の価値を置くのは産業革命から始まった大量生産・大量消費時代の名残なんです。所詮その程度のことなんです。明治、大正、昭和、平成と時代は一巡りして、今や、幕藩体制時代の差を楽しむ感覚のほうが最先端なんじゃないかな。このことも私の中では先月から話してきた「成熟」というテーマに繋がるんだけど、いかがでしょうか。
さぁ、みんなで、時代の感覚をとらえて、攻めて、攻めて、儲けてみっぺ!
vol.16 安売り競争の終りと地域別価格に何を見るか
著者プロフィール
佐藤 勝人 Katsuhito Sato
サトーカメラ代表取締役副社長/日本販売促進研究所.商業経営コンサルタント/想道美留(上海)有限公司チーフコンサルタント/作新学院大学客員教授/宇都宮メディア.アーツ専門学校特別講師/商業経営者育成「勝人塾」塾長
経 歴
栃木県宇都宮市生まれ。1988年、23歳で家業のカメラ店を地域密着型のカメラ写真専門店に業態転換し社員ゼロから兄弟でスタート。「想い出をキレイに一生残すために」という企業理念のもと、栃木県エリアに絞り込み専門分野に集中特化することで独自の経営スタイルを確立しながら自身4度目となるビジネスモデルの変革に挑戦中。栃木県民のカメラ・レンズ年間消費量を全国平均の3倍以上に押し上げ圧倒的1位を獲得(総務省調べ)。2015年キヤノン中国と業務提携しサトーカメラ宇都宮本店をモデルにしたアジア№1の上海ショールームを開設。中国のカメラ業界のコンサルティングにも携わっている。また商業経営コンサルタントとしても全国15ヶ所で経営者育成塾「勝人塾」を主宰。実務家歴39年目にして商業経営コンサルタント歴22年目と二足の草鞋を履き続ける実践的育成法で唯一無二の指導者となる。年商1000万?1兆円企業と支援先は広がり、規模・業態・業種・業界を問わず、あらゆる企業から評価を得ている。最新刊に「地域密着店がリアル×ネットで全国繁盛店になる方法」(同文館出版)がある。Youtube公式チャンネル「サトーカメラch」「佐藤勝人」でも情報発信中。
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