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ビジネス 佐藤勝人の「儲けてみっぺ」 vol.15 逆張りの戦略、差別化と成熟 佐藤勝人の「儲けてみっぺ」 経営コンサルタント/サトーカメラ代表取締役専務

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こんにちは。佐藤勝人です。先月下旬の「アジア流通視察セミナー」、大いに収穫がありました。帰国後すぐの「とちぎ勝人塾」には元金融・行革大臣の渡辺喜美さんが来てくれて、中小企業の未来について久々に2人で語り合った。中国へ長期出張にも行ってきたし、忙しいけど充実しています。やっぱり仕事って楽しいよね。皆さんもそうでしょ? そんなわけで「儲けてみっぺ」、今月もスタートです。
 
 

中小企業は逆張りのチャンス

 
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宇都宮本部での「勝人塾」、アソシエイト表彰式の様子
先月頭、トヨタが総合職社員を在宅勤務制にすると発表した。と思ったら、ひと月も経たずに、三菱東京UFJ銀行も在宅勤務を取り入れるという報道が流れてきた。対象はトヨタが約2万5000人、三菱が3万人。三菱はさっそくこの7月から導入し、トヨタも来月8月に開始予定だそうだ。
 
地方の人が車を買うのは大半が通勤用なのに、トヨタは車が売れなくなってもいいの? とツッコミつつ(笑)、いよいよこの動きが本格化してきましたね。昨年9月の回に話したように、会社側も最初は在宅勤務を奨励するところから始め、徐々に仕事の内容ごとの年俸契約に、つまり社内フリーランスみたいな雇用形態にシフトさせるつもりだろう。「正社員を減らしますよ。終身雇用は辞めますよ」というメッセージが裏に透けて見える。識者の多くは「ワークライフバランスが実現される」「労働生産性が上がる」と手放しの褒めようだが、両社合わせて5万5000人にのぼる当事者たちはこのメッセージをどう感じているだろう。
 
と、ここまでは前回も指摘できた。今回私が新たに気付いたのは、「中小企業は逆張りができるじゃん!」ということだ。だって、日本人は会社が好きなのよ(笑)。毎日決まった時間に会社に行くのも好きなの。スターバックスでノートパソコン開いて仕事したって、初めは気分いいかもしらんけど、意外に楽しくないのよ? 毎日1人、家で事務仕事するの、意外に寂しいよ? それよりはテレビドラマにもなった『下町ロケット』みたいに、会社でみんなと一体になって働いたほうがずっと気持ちがいいし、仕事した感も味わえる。日本人はそのほうがDNAに合ってるんじゃないのかなぁ。
 
だから、大企業が在宅勤務を導入すればするほど、中小企業は正社員化と終身雇用を打ち出せばいい。それで「今日は終わったら飲み会だ」みたいなノリが増えれば社内の風通しも良くなるし、終身雇用に魅力を感じるタイプで優秀な人材が来てくれたら、願ったり叶ったりだ。前回話した通り、日本では中小企業からイノベーションが起きるんだし、考えれば考えるほど、中小企業はチャンスだよ。
 
 

「1」が「136」になって、どうする?

 
話題性の点でこの件にも触れておこう。国内直営店1店舗のハンバーガーチェーン「ウェンディーズ」が、サントリーグループの子会社で136店舗を展開する「ファーストキッチン」を買収したというニュースだ。「猫が虎に勝った」みたいな安手のドラマにする前に、この件に関する私の見立てはこうだ。
 
これがもしラーメンなら、本当にラーメンが好きな人はもう、全国チェーンのラーメンなんか食べないでしょう。390円の店より700円とか800円とかで出す店に行くでしょう。それで「トンコツ系は美味いなあ」、「いやいや醤油もいいぞ」、「味噌を忘れてもらっちゃ困るな」なんてワイワイやってる。味のタイプもだけどご当地にこだわりたい人たちもいて、市場が成熟している。昔は食堂のしょっぱい醤油ラーメンしかなかったけど、日本のラーメン文化はここまで来た。
 
でもハンバーガーはやっぱりまだ、マクドナルドかモスバーガーかロッテリア。要は大手チェーンで買うものという認識なんだな。ウェンディーズは世界に冠たるチェーン店だ。ファーストキッチンも、ハンバーガー専門ではなくなったけど大手チェーンだ。つまり、「文化が成熟するにつれ個店が好まれるようになる」という食産業の流れからいえば、はっきり言って未来はない。サントリーはそれも計算ずくなんだろう。記事によれば、ファーストキッチンの2014年の純利益は7600万円。グループからしたら枝葉の枝葉だ。特別な創業秘話があるわけじゃなし、買い手が現れたら、そりゃ喜んで売るよ。「1が136を飲みこんだ」というドラマの中身は、申し訳ないがその程度の話だ。
 
ウェンディーズはファーストキッチンを買収してどの立ち位置を狙うのかな。先にコラボを試した店舗は調子が良さそうだけど、低価格帯はマクドナルドやロッテリアが押さえているし、少し上の価格帯にはモスバーガーがいる。それに、ハンバーガーはもともと、肉を高級にする以外に違いを出しにくい商品だ。ラーメンは味のタイプでもご当地でも差別化が図れるが、ハンバーガーではっきり差別化に成功したのはテリヤキバーガーぐらい。それだって、モスが始めたらあっさりマックに真似されて、今はどっちが元祖か知ってる人のほうが珍しい。ウェンディーズはどういう戦略を取るのか楽しみだ。
 
 

大手の専門店進出に思う

 
外食チェーンではすかいらーくの話も聞いた。「すかいらーく、とんかつ店展開 好調な専門業態増やす」という日経新聞の記事だ。
 
昔は田舎に行くと、広い駐車場の個人店があってね。でっかい看板に「とんかつ・蕎麦・うどん・天ぷら」なんて書いて、全部やっていた。とんかつや天ぷらは揚げたて、蕎麦やうどんは茹でたてであれば大体はおいしいから、東京でちょっと勉強してきたオヤジたちが店を出して月に150万円とか200万円とか、丸儲けしてたんだよ。ファミレスはその程度の儲けだとやってもしょうがないから入ってこなかったけど、それが今回、業態を細分化して小幅な利益を狙うビジネスモデルで入ってこようとしているわけだ。
 
でも、どうだろう。昔ならともかく、今の消費者がファミレス的な規格品の味に満足するかな。スーパーの惣菜売り場のお客を取って終わりじゃないかな。
 
どの商品でも言えることだが、粗悪品が業界から淘汰され、悪徳業者もいなくなれば、大手チェーンはお役目終了でいいんだと思う。その先は成熟した消費者に向けて個人店同士が味を競い、中小企業がイノベーションを競い、消費者と一緒に新たな市場を生み出していくのが本来の姿なんじゃないかな。
 
来月も成熟というテーマで話せることがありそうだ。楽しみにしていてください。
 
 
 
 
佐藤勝人の 儲けてみっぺ
vol.15 逆張りの戦略、差別化と成熟

 著者プロフィール  

佐藤 勝人 Katsuhito Sato

サトーカメラ株式会社・代表取締役専務/佐藤商貿(上海)有限公司・総経理/日本販売促進研究所・経営コンサルタント/作新学院大学・客員教授

 経 歴  

1964年栃木県宇都宮市生まれ。1988年、兄弟とともに家業のカメラ店をカメラ専門チェーン店に業態転換させ、商圏をあえて栃木県内に絞ることにより、大手に負けない経営の差別化を図った。以来、「想い出をキレイに一生残すために」というコンセプトを追求し続けて県内に18店舗を展開。同時におちこぼれ社員たちを再生させる手腕にも評価が高まり、全国から経営者や幹部リーダーたちが同社を視察に訪れている。2015年からはキャノン中国とコンサルティング契約を結び、現場の人材育成の指導にあたる。主な著書に『売れない時代はチラシで売れ』『エキサイティングに売れ』(以上同文館出版)『日本でいちばん楽しそうな社員たち』(アスコム)『一点集中で中小店は必ず勝てる』(商業界)など。最新刊『断トツに勝つ人の地域一番化戦略』(商業界)が好評発売中。

 オフィシャルサイト 

http://satokatsuhito.com/

 オフィシャルフェイスブック 

https://www.facebook.com/katsuhito.sato.3?fref=ts

 サトーカメラオフィシャルサイト 

http://satocame.com/

 
 
(2016.7.13)
 
 
 
 

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