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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

 
 
現役選手として練習に励むだけでなく、さまざまな活動に邁進している杉原さん。なぜそこまで頑張れるのかお聞きすると、「若い体操選手たちに、オリンピック以外にも夢を持って良いと知ってほしい」と応えてくれた。それぞれの夢に合う形を提供したいのだという。
 

誰もやっていないことに挑戦する

 
アスリートにとって、オリンピックなどの世界大会は大きな目標になりますし、私自身それを目標に進んできました。でも、全員が同じ目標を持っているわけではないですよね。オリンピック以外の夢を持って歩んでいる人もいると思うんです。そんな子たちが、高校生や大学生で体操をやめてしまうのはもったいない。だからフィギュアスケートのようにプロに転向できるような道があれば良いと思っています。私自身がエンタメの道を切り拓いて、ロールモデルとなれるよう、現在挑戦中です。
 
あとは、私は“まだ誰もやっていないこと”に挑戦するのが好きなんです(笑)。私の名前をつけた技をつくったのにも、そういった思いがありました。体操は、ルールブックに載っていない技を披露して成功し、その技が認められると、新技として名前をつけられます。男子選手だと、白井健三さんが多くの新技をつくっていますよね。
 
技に自分の名前がつくのは、やっぱりかっこいい(笑)。それに歴史に名が残ることですから、ずっと憧れていました。そんなときに、かつてお世話になったコーチから「足持ち2回ターンをやってみたら?」と言われまして。ルールブックを調べてみたら、まだその技はなかったんですよ。絶対にこれを世界大会の場で成功させて自分の名前をつけようと思いましたね(笑)。
 
男子選手の場合は、世界大会であればどの大会でも新技は認められます。でも、女子選手はオリンピックか世界選手権でしか認められないんですよ。だから、私が最初に「足持ち2回ターン」を披露したのは別の世界大会でしたが、世界選手権のときにようやく認められ「SUGIHARA」と名付けることができました。技が決まった瞬間は、演技中にもかかわらず笑ってしまっていましたね。「よっしゃー!」という気持ちでした(笑)。本当に嬉しかったです。
 
東京オリンピックに出場するまでは、そういった自分の目標を第一に考え、自分のやりたい演技を突き詰めたいという思いがありました。ただ、一度競技から離れてからは応援してくれる方々や、まだ体操の魅力を知らない人にどう楽しんでもらえるかを第一に考えるようになったんです。今は、人に喜んでもらうことにフォーカスして活動しています。
 
どんな仕事でも、一人でできることには限りがありますよね。アスリートも、さまざまな人に支えられてできるものです。そういった方々への感謝を忘れずに活動を続けていきたいと思っています。会社を経営する中で、体操以外の業界の方とも多くかかわるようになりました。そうすると、今まで自分にはなかった考えをお聞きするようになって大きな学びとなっています。それが仕事の楽しみの一つですね。
 
体操でも、それ以外でも大事なのは継続だと実感しています。何においても、「ここが限界」だと自分で決めてしまったら、そこで終わってしまいますよね。たとえ小さな一歩でも踏み出すこと、そしてそれを続けることが大切です。一ヶ月後には、今までできなかった技ができるようになっているかもしれないし、大会で良い成績につながるかもしれない。仕事においても、どんな小さなことでも種まきをしておくことでいつか新しい仕事につながるかもしれません。今後もその気持ちを忘れずに、挑戦を続けていきたいです。
 
 
(インタビュー・文 中野夢菜/写真 Nori/ヘアメイク 武本萌/スタイリスト 部坂尚吾(江東衣裳))
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杉原愛子(すぎはら あいこ)
1999年生まれ 大阪府出身
 
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4歳の頃から体操を始め、2015年には世界体操競技選手権に出場する体操競技日本代表に選出される。2016年、16歳のときにはリオデジャネイロオリンピックに出場。団体4位入賞を果たす。翌年2017年にはモントリオールで開催された世界選手権個人総合決勝の場で新技「足持ち2回ターン」を披露し「スギハラ」と命名された。2021年、東京オリンピックに出場した後、一度第一線を退く。指導者やリポーターなどさまざまな仕事を経て2023年、現役に復帰した。現在は選手として活動するほか、株式会社TRyASの代表として体操の普及活動に努めている。

株式会社TRyAS
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(取材:2024年12月)