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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

 
 
東京オリンピックが終わった後、一度競技の第一線から退いた杉原さん。もともと自身の目標として「指導者になりたい」という思いがあったのだという。
 

体操をよりメジャースポーツに

 
高校生の頃から、いつかは指導者として体操に関わりたいという思いがありました。一度競技を離れて審判の仕事をしてみたり、中学生の指導に携わったりする中で、指導だけでなく体操の普及そのものに関わりたいと思うようになったんです。それは、競技を離れて視野が広がり、あらためて体操の魅力を再確認できたからです。
 
体操は、オリンピックで体操は「日本のお家芸」と言われることも多く、メジャースポーツの一つとして認識されているかと思います。実際、道行く人に「体操を知っていますか?」と聞くとみなさん「知っている」と答えるでしょう。でも、「観戦したことはありますか?」と聞くと、おそらく99%の方が「ない」と答えるんです。野球やサッカーのように、気軽に観戦できるスポーツにすることが私の目標の一つなんですよ。
 
例えば、フィギュアスケートは競技として楽しむほか、アイスショーがありますよね。現役を引退した選手はプロスケーターとなり、アイスショーなどに登場します。体操にも、そういったショーがあればより多くの方が観に来てくれると思っています。体操×エンタメと聞くと、最初に思い浮かぶのがシルクドソレイユや中国雑技団でしょうか。そういったショーを継続して提供できるようにしていきたいですね。
 
現在、私は株式会社TRyASの代表として体操の普及を目的にさまざまなイベントを開催しています。今後はファンミーティングも予定していますよ。そういったイベントに数多く参加して、体操が好きな仲間を増やしていきたいんです。好きなアーティストさんのライブに行ったり、オーディション番組を見たりしていると「こういう演出を体操でもできたら良いな」と取り入れられるものをついつい探していますね。
 
 
現在、選手・指導者・経営者として3つの軸を持って活動している杉原さん。選手一本ではなく、さまざまな活動に関わったことで多くのことを学び、仕事の楽しさも得られているという。
 

指導者の目線で自分を見られるようになった

 
私が現役復帰を果たしたのは、体操が大好きだと再確認し、より多くの方に体操の楽しさや素晴らしさを知ってもらいたいと思ったからです。体操をメジャースポーツにするには、たくさんの方に注目してもらわなくてはいけません。何が一番注目を浴びる機会なのか考えると、やっぱりオリンピックなんですよね。だから、もう一度オリンピック出場を目指そうという気持ちで現役復帰しました。
 
競技を離れている間、中学生の子たちを指導する中で「東京オリンピック以前より今のほうが基本の仕上がりが良い」という確信も持てていました。中学生時代は、体操の基本を学ぶ一番大事な期間です。子どもたちに教える中で、自分自身も基本を振り返るようになり、一緒に体を動かしてお手本を見せている中で、自分の体操の質が上がった感覚がありました。何より、指導者の目線で自分を見られるようになったのは私にとって大きな財産となっています。
 
体操の楽しさは、通常の生活では習得できないような動きができるようになったときに大きな達成感を味わえること。また、競技では着地をしたときの一歩動くか止めるのかでメダルの色が変わります。観ている方には、ぜひ注目してもらいたいポイントですね。その着地をコントロールするために、どれだけ自分の肉体を操れるのかが重要なんです。イメージ通りにできたときの達成感は、ほかのスポーツにはなかなかない魅力だと思っています。
 
ただ、私も人間なのでずっと楽しいという気持ちを維持できているわけではありません。練習は大変ですしね。そんなときは、会社の仕事をしてリフレッシュしています。逆に仕事が詰まっているときは、練習で体を動かしてリフレッシュする。選手一本ではなく、さまざまな活動をしているからこそ、楽しみながら続けられているのかもしれません。