ステージに出たら絶対にウケる
予想を下回るオチをテーマに
僕は、学生時代にアマチュアバンドを組んでそのままプロになったので、ずっと自己流で音楽を学んできました。その中で、本当に実力のある人たちに出会う機会も多かったです。あるとき、音大を出ているバンドが楽屋でミーティングをしているのを聞いたことがあります。その内容が、「エンディングのコーラス、今はGの音だけど本番ではEにしよう。じゃあ、よろしく」くらいで終わるんですよ。
「この打ち合わせだけで本番できるのか?」と思いました。でも、観ているとその通りにできているんです。実力の差に驚きましたね。僕には絶対にできないし、この先どうしようと思いましたよ。今さら音大にも入れないし。でも、ステージに立って僕らの歌がウケたときに、「ああ、関係ないんだ」と思いました。
ウケたほうが勝つんだ、経歴なんて関係ないんだと気付きました。大事なのはお客さんの反応だけなんですよね。プロとして活動を始めて10年ほど経ったときに、ようやく「ウケたもん勝ちだな」と実感できたんです。
そういう活動を続けていたら、NHK教育テレビの『ハッチポッチステーション』から声がかかりました。今でもこの番組を覚えてくれている人は多いですよ。テレビ番組に出演すると、プロデューサーさんから「ずっと見ていました!」とよく声をかけてもらいます。
ハッチポッチステーションが子どもたちにウケたのは、僕の特技も関係していたと思っています。僕には、「おもしろいことの記憶」と「味の記憶」があるんですよ。おもしろいと感じたこと、おいしいと思ったものはすべて覚えているんです。小学3年生のときに〇〇君がこういうことを言っておもしろかった、というように。だから、ハッチポッチステーションでは小学生のときの僕がおもしろいと感じたものをよく採用していました。そうすると、子どもたちから人気が出たんですよ。
ハッチポッチステーションでの僕のテーマは、「予想を下回るオチ」です。オチでかっこいいことを言おうとするのが一番野暮ですよね。月並みなオチでは見ている方が「これなら自分にもできる」と感じてしまいます。でも、予想を下回ると深読みしてもらえるんです。
笑いは結構普遍的なものなんじゃないかと思います。特に子どもたちに関しては、原点に近ければ近いほどウケると感じましたね。あまりこねくり回す必要はないんです。また、普段冗談があまり好きじゃなかったり、わからなかったりする人でも、あまりにレベルが低いと思わず笑ってしまうようでした。もちろん、そのオチのレベルが低いとわかってやっていなきゃダメですよ! 本当にバカではダメ。計算のうえで、予想を下回るオチにするんです。だから、僕は5個くらいオチが思いついたら、いつも一番レベルが低いものを選んでいました。