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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

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インタビュー中、「世間的な常識や価値観も大事だけど、自分の責任、自分の物差しで物事を判断したいと思っている」という羽田さんの言葉が耳に残った。「私の人生は、自分がやりたいと思って選んできた道。社会や他人のせいにはできないという思いがある」と言うのだ。しかし、その基準となる「自分の物差し」を持つのは、なかなか難しいことではないだろうか。
 
 

30代後半から気持ちの変化が

 
 自分で物事を判断する基準がきちんとできたなぁと感じたのは、30代半ばくらいですね。その頃、女性の生き方を評価する「負け組」、「勝ち組」という言葉が流行っていたんですけど、35歳の私は独身だったこともあって、その分類では「負け組」に入っていたと思うんですね。しかも、若さへの執着があるいっぽうで、次々にデビューしてくる若手女優さんたちに、今まで自分が演じていたような役が割り当てられていって、「自分はもう、そこには戻れないんだ」という焦りもありました。
 
 そんな時に、『私のみつけた京都あるき』という本を出版する話をいただいたんです。それで、原稿を書くために、どうして私は京都が好きなんだろうと突き詰めて考えてみたんですね。そうしたら、気付いたことがありました。世界には歴史の古い魅力的な街がたくさんありますけど、そうした古都の魅力や美は、積み重ねた歴史の重みが街全体の中に息づいていることにあると。つまり、魅力は時間なんです。悠久の時間が閉じ込められている場に、人々の心を捉える何かがある――。そして、それは人間にも同じことが言えるんだって確信しました。
 
 それまでは、「年を重ねるにつれ、女優の価値はなくなってしまうんだろうか・・・」という恐怖があった。でも、若さに対する世間の価値観を、私が変えることはできない。その事実をどう受け止めればいいのかを考えた時に、「自分が京都になればいい」と思ったんです。重ねてきた時間にこそ価値が出る生き方をしていけば、自分は何歳になっても輝いていられるはず――。そう思ったんですね。
 
 幸福ってなんだろうって考える瞬間があったとすると、そう考えている時点ですでに、幸せではないんだと思います。30代前半までの私は、満ち足りていない気持ちがあるからこそ、そう考えてしまうことがあった。でも本当は、幸福は探してみてもどこにもなくて、自分でつくるものなんですよね。自分の生き方に自分が満足しているかどうかが全てで、何事も最終的には、自分との戦いなんだって考える。そうやって生きてみると、以前よりも毎日を充実して過ごせるようになりました。
 
 
女優に憧れて20代でデビュー。自分を信じ、様々な苦労を重ねる中で現在の境地に至った羽田さん。「今は自分の判断で選択して、したいことをしているから後悔することが少ない」という。来月2日に放映されるドラマ、『東京ウエストサイド物語』で演じるキャラクターは、羽田さん本人のパーソナリティーに重なる部分もあるそうだ。笑いあり涙ありで、心温まるストーリーの同作品について、紹介してもらった。
 
 

おもしろくて笑える、家族の物語

 
 『東京ウエストサイド物語』は八王子市を舞台にした、高山家という4人家族のお話で、私は高山晴江という母親役を演じています。早見あかりさんが演じる、娘の峰子は就職活動中なんですけど、あまりうまくいっていない。いっぽう、晴江は娘が苦労している間に、唄や踊りなどの習い事をしている。怪しんだ娘が調べてみると、なんと晴江は芸者になる修業をしていたことがわかる。そこには深い理由があるんですが、芸者になろうとする母親の話を軸に、家族の中で表面化していなかった、それぞれの心の綾が見えてきて――というストーリーです。
 
 と言っても暗い話ではなくて、初めて脚本を読んだ時は、とてもおもしろくて、笑っちゃいました。奇想天外だけどメッセージ性もある。人間は、それぞれの役割を演じている部分ってありますよね。例えば晴江は母であり、妻であることを。でも時には、「本当の自分はどこにいるんだろう。そして、本当にやりたいことって何だろう?」って考えてしまう。母や妻の役割を演じるのではなく、「自分の気持ちに素直に従って、やりたいようにやってみるのは悪いことなのだろうか?」そう考えた晴江は、50歳という年齢を考えず、若い頃からやりたかったことにチャレンジし始める。そうしたくなる気持ちって、わかりますよね。
 
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