◆京都の香老舗 松栄堂が手がける
日本の香文化の情報発信拠点
松栄堂の昔の店舗などの様子がうかがえるステンドグラス
人間の五感の中でも、嗅覚は特に記憶や感情と密接に結びつきやすいと言われています。自然や日々の暮らしの中にはさまざまな香りがあふれ、目的やシーンにあわせて、香りを使いわけることも少なくありません。日本の香の歴史は飛鳥時代、仏教の伝来と共に始まったと言われています。その後、貴族生活の中で使われた「薫物」や、香木の香りを繊細に鑑賞する「聞香」などが生まれ、香りの文化が形成されてきました。
京都で創業して300余年、宗教用の薫香をはじめ、香木や練香、匂い袋など“香百般”を手がけてきた「香老舗 松栄堂」。長らく香文化を担ってきた松栄堂が、日本の香りの魅力をより多くの人に伝えるべく、昨年2018年7月、日本の香り文化の情報発信拠点「薫習館」をオープンしました。
薫習館のコンセプトは、「知る・学ぶ・楽しむ香りの世界へ」。館内では香りを体験できるユニークな展示のほか、イベントも盛りだくさんです。普段、何気なく嗅いでいる香りについて、知れば知るほど奥深い世界が見えてくるはず。今夏、1周年を迎えた薫習館で、香りの魅力に触れてみませんか。
◆地域にも親しまれる憩いの場で
香りの世界に出合い、体験する
お香の煙が広がっていく様子を表現した京和傘シャンデリア
1959年に建設され、地域に愛されてきた建物をリニューアルして生まれた薫習館。人々の憩う場所として、さまざまな工夫が凝らされています。
誰もが自由に腰をおろせるよう、烏丸通側には長いベンチを設置。館内に一歩入れば、エントランスには京和傘 日吉屋による和のシャンデリアや、姫孟宗竹と杉苔が美しい庭が目に入り、情緒たっぷりの空間に魅せられることでしょう。また、講演会やイベントなど、用途も多彩なKARANIホールの天井には京唐紙があしらわれ、京都らしさが感じられる設えとなっています。
落ち着いた和の趣を感じる庭を眺めて、ほっと一息
松栄堂松寿文庫所蔵の資料の展示などを行う松寿文庫展示室
特に見どころとなっているのは、香りを楽しみながら体験できる「Koh-labo 香りのさんぽ」。白檀や沈香といった香木を身近に感じられる展示があるほか、映像やタブレット、ミニチュア模型などからお香の歴史や昔の製造工程についても学べるスペースです。設備の見た目もユニークな「香りの柱」や「かおりBOX」、企画展示コーナーでは、さまざまな香りを実際に体験することも。
香老舗だからこそのアプローチで香りとの出合いを演出する「Koh-labo 香りのさんぽ」。まさに散歩をするように、気軽に香りの世界を散策してはいかがでしょう。
常設する「Koh-labo 香りのさんぽ」
江戸時代の香の製造工程をミニチュアで
シリコンボトルでさまざまな香りを体感
◆多彩なイベントやワークショップ
未知なる香りに触れるチャンス
手元で香木の香りを鑑賞する聞香の体験も定期的に開催
薫習館では2019年8月29日まで、開館1周年記念としてさまざまなイベントを開催。現在、企画展「松栄堂のものづくり −お線香職人の仕事−」が開催されているほか、期間中には「匂い香づくりワークショップ」や「親子で楽しむ お線香づくりワークショップ」、「親子で楽しむ 火おこし体験」といったワークショップも開かれ、賑わいを見せました。
このほかにも、薫習館では松栄堂が厳選した香木を聞香スタイルで鑑賞するミニサロン「ひととき」を定期的に開催しているので、ホームページで日程を確認のうえ、ぜひ一度、足を運んでみてはいかがでしょうか。
また、薫習館は松栄堂京都本店と連絡通路でつながっていて自由に行き来が可能です。店頭では、お香や香立、匂い袋など、香りにまつわるアイテムがバラエティ豊かにそろっているので、薫習館で香りの世界に興味を持った人は、自宅でも気軽に取り入れてみてください。
日本人が古くから慣れ親しんできたさまざまな香りの文化。未来へとつなぐため、これからも情報を発信し続ける薫習館からますます目が離せません。
松栄堂 薫習館
http://www.kunjyukan.jp/
〒604-0857 京都市中京区烏丸通二条上ル東側
TEL 075-212-5590
営業 10:00~17:00
定休日 不定休