絵本の話やこれまでの経験についてうかがってきて、萩原さんは他人から受け取った言葉に励まされ、成長を続けてきたという印象を得た。そしてそこで培ってきたものを後進に伝えるため、自身が主催する水泳大会、萩原智子杯を山梨、福島、愛知などで定期的に開催している。
水泳の普及を通じて社会貢献も
萩原智子杯では、「スポーツには社会問題を解決する力がある」ということを、子どもだけでなく指導者や保護者の方々にも知ってもらえるような活動もしています。例えば昨年の山梨大会では、「人と環境に優しいフードロス削減」に向けてアクションしました。NPO法人フードバンク山梨さんと連携し、会場にフードドライブ特設ブースを設置し、大会に出場する子どもたちとその保護者の方々から、家庭にある未利用の食品を持ち寄ってもらったんです。預かった食品は、フードバンク山梨を通じて県内の食品を必要とする世帯に届けました。
水泳に興味を持ってもらうこと、上達してもらうことだけでなく、大会への参加を通じて、社会問題を知ってもらうきっかけになればいいなと思っています。これからもたくさんの団体や企業さんの協力をいただきながら、大会を通じて水泳の普及だけでなく、困ったときはお互い様の精神を育み、地域の方々に貢献する活動を広げていきたいです。
水泳は子どもからお年寄りまで、幅広い年齢の方が生涯を通じて楽しめるスポーツです。泳ぐ時は一人だから独力で状況を打開することも必要なので精神面も成長させてくれますし、仮に水難に遭った際には自分の命を守るためにも役立ちます。そして、水泳を通じたたくさんの人との出会いもあり、さまざまな面で自分に成長の機会を与えてくれる素晴らしいものです。今後は、その魅力を広く伝えるスキルをもっと高めていきたいです!
(インタビュー・文 佐藤学/写真 Nori/スタイリスト 森永ゆか/ヘアメイク 渡部亜由美)
トップス・パンツ/Quilisia
カーディガン/L'acqua
サンダル/grandegrande
萩原智子(はぎわら ともこ)
1980年生まれ 山梨県出身
小学生から水泳を始め、中学、高校と輝かしい実績を残し、2000年シドニー五輪では200m 背泳ぎ4 位入賞。2002年日本選手権で史上初の 4 冠を達成した。2004年に現役引退する。スポーツキャスターなどを務めた後、2009年現役復帰。翌年、30 歳で日本代表に返り咲いた。ロンドン五輪前年である 2011年に、子宮内膜症・卵巣のう腫(チョコレートのう胞)と診断され、手術後は懸命なリハビリを経てレースに復帰した。ロンドン五輪代表選考会では決勝に残るが、12年ぶりのオリンピック出場はかなわず引退を表明。現在はスポーツアドバイザーとして、各スポーツ団体の役員を務めながら、メディア出演や講演活動等も行っている。水の大切さと感謝の想いを伝える「水ケーション」活動や自身の名を冠した水泳大会「萩原智子杯」の開催に注力するほか、2024年7月には文芸社から絵本、『ペンギンゆうゆ よるのすいえいたいかい』 を出版するなど幅広い分野で活躍中。
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(取材:2024年5月)