どんな時でも変わらない「味方」の存在が私を強くしてくれた
水は当たり前にあるものではない
水ケーションというのは森や水泳を通じて“水“とCommunication(通じ合う)しながらEducation(教育)する、という二つの言葉を組み合わせた造語で、「水に感謝」というコンセプトのもと、五感を駆使した体験型の授業を展開しています。日本で生きていると水は当たり前にあるものですよね。でもそれは、「ありがたいこと」と感じてもらえたらという思いがベースにあります。
水ケーションは小学生の高学年から中学生ぐらいが対象で、まずは森の専門家である小野なぎさ先生に豊かな水をつくりだす森について紹介してもらいます。その次に、私が水の時間を担当します。「なぜ水ケーションなのか?」「水はどんな時に必要なのか?」「世界にはどんなプールがあるのか?」などを伝え、考える時間を取ってから、プールで水と触れ合い、思い切り遊びます。水の中で遊ぶことの楽しさ、怖さも同時に伝えています。時に学校を飛び出して、森や川、湖で活動することもあり、実際に自然の中に入ると、また違ったアプローチができています。
活動をしてみて意外なことがわかりました。それは緑豊かな地域の子どもたちが、周りにある自然の素晴らしさに気付いていないケースが多いということです。都会よりも自然が豊かで周囲にきれいな水がたくさんあるので、それが当たり前に感じてしまうのかもしれないですね。だから、自分が素晴らしい環境で生活しているんだと感じてほしいと、地元の行政、教育関係者から依頼をいただくこともあります。そんなわけで、この活動が郷土愛を育むことにも貢献できているんだなと気付かされたのは、嬉しい発見でした。
私自身も現役時代は、正直、水のありがたみということを感じたことはなかったです。ある時、登山を経験して、頂上付近の山小屋を運営する方々からヘリコプターを使ってふもとから水を運んだり、雨水を貯めたり、水を確保するのにものすごい労力を費やしているお話を聞いた時に衝撃を受けたんです。大量の水を使って泳ぐ競技ができるのは、とても贅沢なことなんだなと感じました。「水泳は豊かさの象徴」「飲み水がなければ一番初めになくなるスポーツ」なんだということを強く実感したんです。下山後、いずれ水の大切さを伝える活動がしたいと思うようになりました。