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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

 
 
2018年に競技を引退した無良さん。どのような思いがあって引退を決意したのかお聞きすると、「次の道に進むタイミングだと思えた」と語ってくれた。
 

立ち止まるわけではない

 
引退については、自分の中で「やりきった」と思えたことが一番のきっかけです。「ここまで来れて良かった」「次の道に進もう」と思うことができたんですよ。僕はもともと2018年の平昌オリンピックを目指していました。結果として出場こそできなかったものの、そこに至るまでに積み重ねたさまざまな経験に満足できたんです。
 
オリンピックは競技の種類を問わず、さまざまなアスリートの目標になっていますよね。だから、オリンピックイヤーに引退する選手は多いんですよ。僕もその一人です。両親に引退しようと思うと伝えたときは、「ここまで来れて良かったね」「お疲れ様」と言ってくれました。年々体の動きが全盛期から遠のいて苦しんでいるのも知ってくれていましたしね。
 
ただ、プロスケーターとして今後も活動は続けていきます。僕の競技人生は終わったけど、立ち止まるわけではありません。父には「今後も精進してください」と言われました。フィギュア界で世代交代が行われ、時代がどんどん変わっていく中で、競技から離れた別の場所でスケートに携わっていきたいと思っています。
 
僕はアイスショーなどを通じて、観てくださる方にもっとフィギュアスケートに興味を持ってもらいたいと思っているんです。フィギュアはメジャースポーツと呼ばれ、多くの方に知ってもらっています。でも、競技人口はとても少ないんですよ。だから、観て楽しむだけでなく、実際にやってみようという気持ちになってもらえたら嬉しいですね。
 
ジャンプなどの精度によって点数がつけられるので、どうしても競技性に目がいきがちなスポーツですが、音楽などの芸術的な部分も大切なのがフィギュアです。新体操などもきっと同じですよね。芸術的な部分、アスリート的な部分のバランスを考えながらどうやって点数を獲得するのかと考えるのが、フィギュアの魅力の一つです。とにかく技術面に研鑽をかけている選手もいれば、表現の深さを強みとしている選手もいます。見ている方も、そういった面に注目して選手たちの個性を楽しんでほしいですね。
 
あとは、一度会場に足を運んでもらいたいと思っています。テレビだとカメラが選手を追って動くので、なかなか臨場感を得られません。実際に観に来てくださった方は、みなさん「こんなに速く滑っているとは思わなかった」とおっしゃいますよ。生で観るとそれまで持っていた印象とガラっと変わったものを感じると思います。ぜひ、会場の緊張感も一緒に楽しんでください。
 
 
(インタビュー・文 中野夢菜/写真 Nori/ヘアメイク 川喜田祥子/スタイリスト 部坂尚吾(江東衣裳))
衣装協力
LA SCALA
スーツ:24万7500円~(オーダー価格、納期5週間)
SEVEN FOLD(伊勢丹新宿店 03-3352-1111)
タイ:3万800円
JOSEPH CHEANEY(渡辺産業プレスルーム 03-5466-3446)
シューズ:参考商品
 
 
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無良崇人 (むら たかひと)
1991年生まれ 千葉県出身
 
フィギュアスケートのコーチをしていた両親の影響で、2歳の頃からスケートを始める。ISUジュニアグランプリで4度表彰台に乗るなど、学生の頃から活躍を続け、2014年には四大陸選手権で優勝を飾った。2018年に競技を引退後は洋菓子のヒロタFSCに所属し、アイスショーを中心にプロスケーターとして活動。「浅田真央サンクスツアー」にも参加した。そのほかフィギュアスケートの解説やモーターレースへの参加など、垣根のない活躍を続けている。
 
Twitter
https://twitter.com/takahito3211
 
 
(取材:2022年3月)