TOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Race2021クラブマンシリーズに参戦するなど、モーターレースにも参加している無良さん。インタビューでは、「もともと興味のある分野だった」と語ってくれた。
すべての経験が仕事に活きている
僕はもともと乗り物全般が好きで、スケートをやっていなかったらパイロットなどいろいろとなりたい職業があったんです。そうして憧れていたものの一つに、レーサーがありました。小さい頃からモーターレースを見るのが好きだったんですよ。そんな中で、たまたまレーサーの方に知り合う機会がありました。
その方にモーターレースが好きなこと、レーサーになりたかったことを話すと、アマチュアでも参戦できるレースなどを教えてもらいまして。ライセンスを取得し、レースに挑戦することにしました。仕事という感覚よりも、趣味の領域として純粋に楽しんでいますね。
ただ、レースを通じて得た経験はフィギュアスケートにも活きていると感じています。俳優の方々と同じように、より多くの経験をすることで演技に深みが出るんです。練習すればするほど運転技術が身に付きますし、レースを通じてでしか得られない感覚もあります。趣味として楽しみながらも、仕事の糧になっていますね。
レースに出るときは、フィギュアスケートの試合のときより緊張しているかもしれません(笑)。僕は一人で氷上に立って演技することに慣れているので、何台も車が並んで、全員で一斉にスタートする状況に緊張を感じています。
そうしたさまざまなことに興味を持ちつつもフィギュアスケートの道に進んだのは、進路を選ぶいくつもの分岐点でスケート以外のものを選ぶ勇気が湧かなかったからです。僕は両親がフィギュアスケートのコーチをしていたので、2歳のときからスケートを始めました。高校生の頃には、すでに経験年数が10年以上でしたからね。気付いたらフィギュアスケート選手になっていたという感覚です。でも、これだけ長い期間フィギュアスケートに打ち込めているのは、やっぱり根底にフィギュアが好きだという気持ちがあるからなんだろうと思っています。
我々のような一般人が、フィギュアスケートに持つイメージはとても華やかなものだ。しかし氷上でそれを表現するには、陰でさまざまな努力が必要だと想像できる。現役時代から今まで、どのような苦しみや努力があったのだろうか。
追い抜かれるプレッシャーも感じていた
年齢を重ねるほど、さまざまな経験をすることで演技に深みが出てきます。でも、体が動くレベルはどうしても落ちてきてしまうんです。僕の下の世代には羽生結弦君や宇野昌磨君がいます。彼らが僕を追い抜いていく勢いをずっと感じていたので、その中でどうすれば成績を残せるのか、どのようなトレーニングをすれば彼らに食らいついていけるのかと常に考えていました。
ただ練習をするのではなく、しっかりと目標を持って取り組まなければ、下の世代とは勝負になりません。僕の上の世代には高橋大輔君がいました。若い頃は、大ちゃんに追いつくようにという気持ちで取り組んでいたので、羽生君や宇野君が追い抜いていくプレッシャーはすごかったですね。ただ、2人ともすごく良い子たちで、一緒に練習に取り組むこともありましたし、その中で学ぶことも多くとても助かっていましたよ。
僕としてはフィギュアの技術的な進化は、ここ8年ほどで大幅に進んだと思っています。そしてそのスピードは今後ますます増していくんじゃないかな。その中で、世界と戦って表彰台に乗る日本人選手は何人も出てくると思っています。
そういう活躍を見るのが今後の楽しみの一つですね。フィギュアスケートというスポーツを最前線で盛り上げていくのは、現役の選手たちです。その活躍に大いに期待しています。ただ、技術が進化していく分、選手の体にかかる負担も増えていくでしょう。とにかく怪我をしないように! 体に気を付けつつ、ベストを尽くしてくれたら嬉しいです。