岩崎さんの言葉からは、とても仕事を楽しんでいる様子が伝わってくる。インタビューでは、どの仕事でも毎回新鮮な気持ちで楽しんでいると語ってくれた。それは、何年も携わっている舞台でも同じなのだという。
そのときにできるベストを尽くす
ミュージカル作品の『アニー』には9年間出演させていただいていました。「それだけ同じミュージカルに出ていると飽きない?」と聞かれることもありましたね。でも、まったく飽きることはないんです。観に来てくださるお客様は、初めてその作品を観る方がほとんどですよね。だから私も、同じ気持ちで取り組むようにしていたんです。
それに、同じセリフを言っていても、同じ演技はできません。必ずどこか少し変わってくるんですよね。それは歌も同じです。同じに歌うことはできないので、どのお仕事でも毎回新鮮な気持ちで楽しんでいます。
稽古中はつらいことも多いですよ。でも、舞台などで初日を迎えると「今日まで頑張って来て良かったな」「千秋楽まで頑張ろう」という気持ちになれます。今この瞬間、同じ時は繰り返せません。だからこそ、お芝居・歌問わず“表現”をさせていただく機会を大切にしているんです。
そのために一番気を遣っているのは体調管理です。風邪をひいたり、鼻声になったりしないように意識しています。それはどのお仕事に携わっている方でも同じかもしれませんね。風邪をひきそうだなと思ったら葛根湯を飲むとか(笑)。そういった基本的なことが仕事に取り組むうえで大切なんだと思います。
大切なのは、そのときにできるベストを尽くすことです。お仕事の中には、事前にたくさん準備をする時間が用意されているものもあれば、突然お話をいただいて、すぐに取り組まなければいけないものもあります。どちらの場合でも、できる限りのことをする。長年そう意識して仕事に取り組んでいます。
歌手活動を始めてからの40年で、歌に対する取り組みに変化があったか聞くと、「好む楽曲や目指す方向は変わって来た」と話してくれた岩崎さん。それには、趣味で勉強しているフランス語の影響もあるという。
好きなことは仕事
以前から趣味で、スクールに通ってフランス語会話を勉強しています。過去には、フランス語で『タッチ』を歌ったこともありますよ。私はフランス語の響きがすごく好きでして。歌ったときもまるでお喋りしているような響きなんです。最近は、日本語の歌もそれくらい力を抜いて、自然体で歌えたら良いなと考えています。カフェでお喋りするような感覚ですかね。
そうして新しいチャレンジもしていきたいと思っていますし、これまでに出合ったオリジナル曲も変わらず大切にしていきたいです。どの曲も思い入れがあり、特に『タッチ』に出合えたことは私の中で大きな出来事でしたね。発表してから36年が経っているにもかかわらず、今でも「カラオケで歌っているよ」と言っていただくことが多いんですよ。
趣味のフランス語が仕事に活かされているように、オフの時間の経験も、すべて糧となっていますね。例えば映画を観ていても、頭の片隅では仕事のことを意識していて、自分の引き出しに入れている感覚があります。電車に乗っているときも、気付いたら周囲の人を観察しているんですよ。常にオンの状態なんでしょうね。
私は好きなことを仕事にできているので、とても運が良かったと思っています。「好きなことは何?」と聞かれたら、迷わず仕事だと答えますよ。歌うこと、お芝居をすること、ナレーションをすること、どれも楽しくて仕方ありません。