インタビュー中、何度も「つくった楽曲が誰かの逃げ場になるように」と話してくれた石井さん。曲づくりの際にはどのようなことを考えているのかもお聞きした。
情景が浮かぶような曲をつくる
曲をつくるときに最初に考えるのは、「こんな歌詞の歌をつくりたい」とか「このメロディをもとにつくりたい」といった気持ちです。でも、その次に「なんでそう思ったんだろう」と考えてみるんですよ。そうすると、「こういうことで落ち込んでいる人が多いよな」などのメッセージ性が浮かんでくることもあります。
時には、徹頭徹尾くだらない曲をつくることもありますよ。そういうときは、もしかしたら僕自身が音楽に逃げ場を求めているのかもしれません(笑)。楽しい気分になるために、自分を助ける曲を考えているのかも。
米米CLUBの楽曲には、そういった楽しくなる気分の曲が多いですね。それはコンサートのときに、来てくださった方に「楽しかったね」「でも何も残らなかったね」といった軽い気持ちで楽しんでほしいから(笑)。米米CLUBはそれくらいがちょうど良いんじゃないかな。みんなが無礼講で楽しめる音楽をつくっていきたいと思っています。
石井竜也としては、歌を聴いていてその情景が浮かんでくるような曲をつくっていきたいです。僕はもともと映像や絵画が好きで、その場面が思い浮かぶ歌詞やメロディを考えるようにしているんですよ。難しくて比喩的な表現をするのではなく、真っ直ぐに意味が伝わるような歌をつくり続けていきたいです。
(インタビュー・文 中野夢菜/写真 Nori)
石井竜也(いしい たつや)
1959年生まれ 茨城県北茨城市出身
1985年に「I・CAN・BE」で米米CLUBのボーカリストとしてデビュー。1989年に「KOME KOME WAR」でMTV VIDEO MUSIC AWARDを受賞したほか、1992年には「君がいるだけで」で日本レコード大賞を受賞するなど、さまざまな実績を残す。1997年に米米CLUBを解散した後は、ソロ活動をスタート(2006年米米CLUB再始動)。映画監督として『河童』、『ACRI』といった作品も発表している。
(取材:2020年12月)