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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

 
バレリーナ時代の経験が、今の自分の土台をつくっていると語る草刈さん。今回プロデュースする『PURGATORIO』では、どういった経験を積んでいくのだろうか。
 
 

あえて窮地に立つことも必要

 
バレリーナとして現役で活動している間に、私は三度ほど公演のプロデュースを手がけました。一度目は2005年の「愛・地球博」と名付けられた万博での公演。2006年はテレビ局と企業に主催していただいて、パリのシャンゼリゼ劇場、上海、香港、台湾と日本7都市で行われたツアー、そして引退公演のツアー。引退公演も、11都市14公演という規模でさせていただきました。
 
プロデュースするというのは、「なぜ、公演をするのか?」「なぜこの作品なのか?」「何をお客様に観ていただきたいのか、伝えたいのか?」というような、根本的なことが明確にならないと上手く進んでいきません。はじめのうちは、イメージがあっても、言葉で上手く伝えられるほどの自分の考えが明確ではありませんでした。
 
でも、色々な作業に取り組んでいるうちに、そういうことが全て明らかになってきたのです。振付師やダンサーに交渉するメールを書いたり、主催して下さる方々との話し合いを重ねたりしているうちに、様々な方向からものが考えられるようになってきたのかもしれません。
 
やはり、あえて自分を追い込むことは必要かな、と思います。「今までと同じではダメ」というような、窮地に立たされる気持ちになるところでしか発揮できないものってあると思うんです。
 
今回は、久しぶりに窮地に立たされていると感じています。一番大変なのは「芝居をすること」。今回選んだ戯曲は普遍性がありとても面白い作品ですが、戯曲の面白さを演劇という形に立ち上げるためには、高い表現力が要求されます。これでも毎回の仕事のなかで、様々な挑戦をしてきました。その都度、「大変だ!」と身を削る思いをしてきました。でも、その大変さは、深く知れば知るほど良いと思っています。その分、演じることへの切実さが増してくると思うからです。
 
私は、「すごい!」と思えるものを見ると、リフレッシュされたような気分になるのです。「自分も頑張ろう!」という気持ちになる。芝居でも踊りでも「ハッとさせられる瞬間」に期待をします。それこそが、プレイしている本人の想いだからです。今回私はどのくらいのことができるのか? お客様にハッとする瞬間を味わってもらえる芝居ができるように、頑張ります。全力を尽すのみですね。
 
<インタビュー・文 中野夢菜/写真 Nori/ヘアメイク 高城裕子/スタイリスト 宋明美>
ワンピース
ディウカ/ドレスアンレーヴ
 
 
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草刈民代(くさかり たみよ)
1965年生まれ 東京都出身
 
1981年から牧阿佐美バレヱ団に参加。1984年に正団員となり、同年のうちに『恋の棘』の主役に抜擢される。牧阿佐美バレヱ団の主要バレリーナとして活躍し、文部大臣奨励賞や村松賞、橘秋子賞など数多くの賞を受賞した。1996年には、映画『Shall we ダンス?』で映画初出演でありながら、初主演を果たす。2009年、自身でプロデュースした公演『エスプリ~ローラン・プティの世界~』をもって、バレリーナとしての現役を引退。以降、本格的に女優として活動を開始し、テレビドラマや映画、舞台などで活躍を続けている。舞台『PURGATORIO-あなたと私のいる部屋-』が東京芸術劇場シアターウエストで10月4日(金)~14日(祝・月)まで上演される。
 
 
Instagram
https://www.instagram.com/tamiyo_kusakari_official/
PURGATORIO 公式ホームページ
https://www.purgatorio-stage.com
 
 
 
(取材:2019年7月)