身近な物に“盛る”
自分だけの世界で独自の進化を遂げた
粘土作品をつくることの魅力は、とにかく自由なところ。僕はもともと美術大学出身ではあるのですが、専攻は版画科だったんです。だから、粘土などの立体作品はすべて独学で学びました。今思えば、それが良かったのかもしれませんね。既存のノウハウや手順に縛られなかったからこそ、自由に作品をつくることができました。
あとは、自分だけの世界に入れるのも大きな魅力です。俳優やお笑いの仕事では、「こういうシーンをつくる」という目的のもと、共演者の方々やスタッフとの共同作業になりますよね。みんなで意見を交換したり、監督や演出家の方の判断で芝居内容を変えたりもします。でも、粘土作品をつくるときだけは、自分しかいない世界に入れるんです。ありがたいことに、担当編集の方々は、僕の作品を褒めることも怒ることもしませんから(笑)。すべて自由につくらせてくれたおかげで、僕の作品は独自の進化を遂げられたのだと思います。
作品をつくるペースは、大体月に1個です。僕は締め切りがないと作品を完成させられないので、これも雑誌の連載があったことに感謝しなければいけませんね。そうして19年もの間につくり続けてきた多くの作品を、現在行っている「ギリ展」という個展ですべて展示しています。全国各地を回っているので、ご当地作品などもつくっているんですよ。
作品は全部でおよそ170点。並べてみると、自分でもその数に驚きました。僕は自分の好きなものを自由につくってきたので、自分の作品を便宜上「不条理粘土アート」と呼んではいるものの、何か特定の表現手法に属しているわけではありません。でも、あれだけ多くの作品が並ぶと、まるで「不条理粘土アート」というジャンルがあるのだと錯覚してしまいますよ(笑)。実際にコンテストを開いた際には、皆さん同じ系統の作品をつくってきてくれました。これは、19年間続けてきたからこその結果ですね。