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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

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須藤氏の最近の取り組みと言えば、8月24日に開催したアマチュア柔術トーナメントの「一騎討」がある。戦いの舞台はなんと寺院の境内。ブラジリアン柔術が主流となった柔術の世界で、本家である日本の柔術をベースにした戦いを世界へ発信することを試みた大会だ。この活動を通じて須藤氏は何を狙っているのか。
 
 

ローカル性でグローバルに勝負!

 
 UFCなどに代表される総合格闘技って、すでにグローバルスタンダードになっているから、どの大会も似たり寄ったりなんです。戦うのはみんな、金網で囲まれているオクタゴンの中。見慣れちゃっているから、正直なところ、あまりおもしろくないし、暴力性とかが前面に出てしまうとなんか美しくない。だからぼくはあえて、日本の武道の洗練された様式美を下敷きに、観ておもしろいトーナメントにしたいと思ったんです。それで、金網どころかリングロープすら取り払い、闘技場から落ちたら負けにしようと考えました。ドラゴンボールの天下一武道会みたいな感じですね(笑)。
 
 UFCみたいに退路のない金網の中で戦わせるのではなく、本人の意思で闘技場に出向いて戦っているという見え方のほうが、武士道の精神を表現できると思ったんです。覚悟を持って自ら戦いの場に立つ人間の精神を届けられたら、人気が出るんじゃないかとね。
 
 なぜ武士道精神のような、ある意味、日本特有のローカリティを前面に押し出す手法を取ったかというとYou Tubeなどのグローバルなネットメディアが普及したことで、生のローカリティをグローバルなネット上に持ち込めば逆に付加価値が生まれるということに気付いたからです。たとえばダンスパフォーマンスのコンセプトを考えた時に、ハリウッド映画に出てくるような典型的日本人をイメージし、それを表現することを目指しました。日本人目線だとあんな変な日本人いるわけがないってわかるんだけど(笑)。同じように「一騎討」でも、袴、伝統音楽など、様々な「和」のテイストを取り入れて、ベタなローカリティを逆手にとって世界にアピールしようと考えたわけです。
 
 
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柔術のアマチュアトーナメント「一騎討」は「いずれ世界的にヒットする」と自信を持って語る須藤氏。その根拠には須藤氏独特の成功への思考法があった。
 
 

理想の自分を強く意識する

 
 大事なのはアイディアを相対化してマッピングすることです。「一騎討」では、現在の武道や格闘技界全体を思い浮かべ、自分はその中のどの位置で、どんな方向性でイベントをやろうとしているのか、イメージの地図上に自分を配置しました。その地図を見ると、自分のやろうとすることがうまくいくかどうか判断できるんです。こうした相対化はどんな仕事をするうえでも重要ですね。
  
 それに、人間は必ず「自分はこういう人間」と自己を定義するフレームを持っています。仮にそのフレームの場所が、その人の置かれた現状にあるとしましょう。特に目標もない人はその現状にフレームを置き続けると思います。居心地がいいですからね。いっぽう、自分の理想を今より高いところに据えている人は、現状のフレームを理想とする高みに移さないとならない。でも、理想に向けて頑張っているのに、いつの間にか挫折して元の状態に戻ってしまう人もいる。その人は、フレームを居心地のいい領域に置いたままで上にいこうとするからうまくいかないんです。
 

 それよりもまず、理想とするフレームを先に高みにあげて「本来の自分はあそこにいるんだ」と意識すればいい。すると、現状はかなり低い位置にいるわけだから、すごく居心地が悪くなる(笑)。あそこに居て当たり前、あの理想こそが本来の自分――。その意識に強い臨場感を覚えると、スーパーマンになれます。やっていることが苦ではなくなり、すごく頑張れる。しかもそれは努力ではない。行為そのものが楽しくなっていますからね。

 
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