一人の男の情熱が育んだ
銘酒「イチローズモルト」
◆ 職人の感覚と秩父の自然が
ウイスキーの味を育てる
ウイスキーの蒸留所と聞けば、多くの人がポットスティルを思い浮かべるでしょう。ウイスキー造りのアイコンともいうべきポットスティルの形は蒸留所ごとに様々ですが、実はこの形の違いが味の個性を決定づけます。肥土氏がエンジニアと打合せを重ね、できあがったのは小ぶりでストレート型のヘッドを持つポットスティル。これぞ、ヘビーでリッチな味わいを生み出す形状なのだそうです。蒸留の回数は2回。しかも、ミドル・カットと呼ばれる2回目に蒸留された液体の中留部分のみを樽熟成に回します。留出し続ける液体から、ミドル・カットを見極めるのは職人の感覚です。この作業が許されているのは、秩父蒸溜所では肥土氏をはじめ、限られたスタッフのみ。それだけ難しい技術だと言えます。
蒸留した無色透明の原酒は、樽で熟成することでようやくウイスキーとなります。樽が違えば、香りも色も違った仕上がりに。秩父蒸溜所の貯蔵庫にも、バーボンやシェリー樽のほか、ミズナラの新樽など多数の樽が眠っています。
特に、イチローズモルト定番の 「ミズナラ ウッド リザーブ」 をはじめ、秩父蒸溜所においてミズナラの樽は欠かせない存在。高価なうえ手入れも大変ですが、ミズナラ樽で仕込んだウイスキーの優雅なフレーバーは、一度味わえばやみつき必至です。
貯蔵庫内は、人工的な温度調整を一切しません。肥土氏はその理由を 「私は、秩父らしい、秩父の影響を受けたウイスキーを造りたい。秩父は寒暖の差が激しく、樽の呼吸が深くて美味しく仕上がるんです」 と語ってくれました。秩父の豊かな自然が、美味しいウイスキーをじっくりと育んでくれるのです。
◆ ウイスキー造りにかけた
肥土伊知郎氏の夢
もちろん、熟成中もテイスティングやメンテナンスが必要です。熟成度合いを見て、樽を移し替えたり、もう少し寝かせたり・・・という判断も肥土氏の仕事。秩父蒸溜所稼動時に仕込み、2011年秋に限定販売されたシングルモルト 「イチローズモルト 秩父 THE FIRST」 の場合も、テイスティングに1ヶ月を要したと言います。確かなセンスと情熱のもとで仕込みから熟成、瓶詰めまで、丹精込めて造られたウイスキーだからこそ、世界中の人々を虜にするのでしょう。
肥土氏が率いる秩父蒸溜所の挑戦は、まだ始まったばかりです。現在、モルトは製麦業者であるモルトスターに依頼していますが、蒸溜所内でフロアモルティングという製麦作業を行うための設備や、キルンと呼ばれる麦芽の乾燥棟の稼働を目指し準備を進めています。また、スタッフがミズナラ樽を製作する職人に習い、樽作りも修業中。さらには、地元の農家に依頼し、大麦の栽培も始めています。ヨーロッパの品種は土地に合わなかったため、日本の品種で試験的にウイスキーを仕込んだところ、かなりの手応えがあったのだとか。早ければ3年後には、完全秩父産のイチローズモルトが誕生するかもしれません。そうなれば、再びウイスキー界に革命を起こすことになるでしょう。
「夢は、秩父蒸溜所で造った30年もののウイスキーを飲むこと」。ベンチャーウイスキーの今後の活躍から、目が離せません。肥土伊知郎氏の夢が詰まった秩父産ウイスキー「イチローズモルト」を、ぜひ一度ご賞味あれ。
株式会社ベンチャーウイスキー
秩父蒸溜所 TEL 0494-62-4601
埼玉県秩父市みどりが丘49
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