ライフスタイルLIFESTYLE
祇園、嵐山、清水…いずれも有名な京都の地名ですが、「一乗寺(いちじょうじ)」を知っているとなるとなかなかの京都通かもしれません。一乗寺は京都市左京区に位置するエリア。宮本武蔵と吉岡一門による「一乗寺下り松の決闘」の地であり、紅葉の名所も多い街です。近くに大学があるため学生も多く、京都屈指のラーメン街であることもよく知られています。歴史深い社寺仏閣・名跡を有しつつ、生活の息づかいを感じる街であり、ラーメン・カフェ・アート・老舗といった個性的な店も入り混じっている一乗寺。新しくもあり古くもあるリアルな京都文化が体感できる街といえます。今回はそんな一乗寺に店を構える和菓子屋「一乗寺中谷」をご紹介しましょう。
「一乗寺中谷」では3代にわたって一乗寺の歴史や文化に由来する和菓子をつくりつづけてきました。とりわけ「でっち羊かん」は江戸時代、一乗寺村の若い衆が弁当代わりに食したことから発祥したと伝わる郷土銘菓。老舗の和菓子屋といえば「頑固に伝統を守っていく」というイメージがあるかもしれませんが、中谷では「伝統を守りつつ時代にあうお菓子づくり」をコンセプトに掲げ、アイデアたっぷりのお菓子を生み出しています。それが世間を魅了した「中谷の和洋菓子」。誕生のきっかけは3代目とパティシエである現若女将の出会い。この若旦那と若女将が夫婦二人三脚で、お取り寄せで数ヶ月待ちになるほどの人気スイーツを生み出しました。
育んできた伝統に若旦那夫妻の新たな発想をプラスしてパティシエの若女将が形にしていく和洋菓子。抹茶や白あんを使った「絹ごし緑茶ティラミス」、でっち羊かんやとうふ羊かん、豆乳プリンなどを入れた「中谷パフェ」、最近の新商品では白味噌やヨーグルトを使いあっさりめの味わいに仕上げた「白味噌と木の実のケーキ」など多彩なラインナップが揃っています。技術力や感性はもちろん、つくり手の人柄やお菓子製造にかける意欲、新しい試みに対する2代目と女将の深い理解…そういった人々の心が「一乗寺中谷」のお菓子を支えているように思います。
また、若旦那夫妻が忙しい合間をぬって更新するブログには、お店の近況や新製品情報、日常生活での家族の出来事などがつづられています。つくり手のありのままの言葉は、店に親しみを感じさせ、商品の魅力をさらに高めているようです。
店のショーケースに和菓子、洋菓子、和洋菓子が並ぶという「ミスマッチ」さも、実際見てみれば何とも「不思議な一体感」。さまざまな文化が混在しつつも溶け込みあう一乗寺を象徴するような店なのかもしれません。
1月 御幸町 関東屋 をPick Up