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経営者インタビューEXECUTIVE INTERVIEW

銘板製作を続けて50年 
人の縁とつながりに感謝

 

1円の“縁”を大切に

 
名高 そうだったのですね・・・。それまでも有田社長は、銘板の製作や経営に携わってこられたのでしょうか。
 
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有田 いいえ。主人の病気は治ると信じていたので、仕事のことは何も勉強していなかったんですよ。主人が築いてきたお客様との関係を守りたい一心で、材料の名前を覚えるところから刃物の研ぎ方、見積もりの仕方などを一から覚えていきました。
 
名高 お客さんも、その有田社長の努力を支えてくださったのでしょうね。
 
有田 おっしゃる通りです。あるとき見積もりをお出しすると、わざわざ「これは安すぎる」と教えてくださったお客様がいたんですよ。親身になってくださる方々に恵まれ、主人が亡くなった後も、お客様は1社も離れることなく弊社を支えてくださいました。
 
名高 それはきっと、ご主人が築いてきた大きな信頼と実績があり、そして事業を継いだ有田社長の頑張りを、お客さんがしっかりと見てくださっていたからなのだと思いますよ。
 
有田 ただ、私にも前に進もうという気持ちが止まってしまった瞬間があるんですよ。たまたまコピー機のメンテナンスに来た業者の方に「私はこれから、どうしたらいいのだろう」と本音を打ち明けてしまいました。でも、その方は初対面にもかかわらず「今度はあなたが頑張る番だ」と励ましてくださったんです。不思議なことにその一言で気持ちが晴れ、迷いなく事業を継続することができました。
 
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機械の刃物をルーペで覗く名高さん
名高 それは良い方に巡り会いましたね。
 
有田 ええ。周りの方には主人が亡くなってからの12年が困難の連続に見えたかもしれませんが、私自身はあまり辛いと感じたことがありません。それはなぜかというと、例えばお取引先の方が自社の社員さんに、「自分が知っていることは、全て有田さんに教えてあげなさい」などと言って、私のことをサポートしてくださったから。とても人に恵まれて、前向きに生きることができた12年間だったと思います。
 
名高 1枚の注文からお応えするというのも、有田社長が人との縁を大切にしていることの現れというわけだ。
 
有田 はい、なんといってもお金というのは1円から始まるもの。たとえ利益が出なくても私は1円の“縁”を大切にしたいんです。また、「何があっても納期は守る」、「商品は嫁に出すようにキレイに磨いて出荷する」というのも私のこだわりなんですよ。