機動性高い自転車便会社
街の小口運送インフラに
メッセンジャーが活躍すると街に活気が出る
吉井 それにしても、メッセンジャーさんの運ぶ荷物って、書類が多いのかと思っていたから、かなり重たい荷物も運ぶと聞いて、意外だなと思いました。
柳川 今はインターネットの通信環境がよくなって、大きなデータもメールやオンラインストレージでやり取りできますからね。だから、かつてメッセンジャーの荷物の中心だった書類もすっかり減って多様化し、いろいろな荷物を運ばないと商売が成り立たないようになってきているんです。以前、病院まで届け物を持っていったら、手術室を抜けてきたらしい看護師さんが受け取りに現れて驚いたこともありました。「え、手術中に必要なものだったの?」って。
吉井 わぁ、それは責任重大! バッグの中にある荷物の中身は、時代とともに様変わりしているんですね。
柳川 最近では、単に 「運ぶ」 という言葉では括れないような注文もあります。たとえば、お客様に代わって銀行の窓口で手続きをして、受け取ったものを指定の場所まで届けるとか。こうなると運搬というより「おつかい」に近いですよね。
吉井 代行サービスといった感じですね! ペダルを漕ぐ以外の作業がどんどん増えていったら、大変じゃありませんか?
柳川 自分たちはただの配送業ではなく、お手伝いできることは何でも請け負う代行サービス業だと思っているので、平気ですよ。あるお客様から 「パソコンで事務仕事をやってくれないか」 と依頼されたこともあります(笑)。普段の働きぶりを評価してくださった結果だと思うので、嬉しかったですね。
吉井 運ぶ以外の仕事の依頼があるのは、お客様から信頼されている証拠でしょうね。ところで、さっきから気になっているんですが、こちらのカラフルなグッズは御社で販売しているんですか?
柳川 はい、「A」 という自社ブランドで、ロゴは道路をかたどったデザインになっています。メッセンジャーバッグの他、U字型ロックをオシャレに収納できるU-LOCK HOLDERとか、iPhone専用のホルダーなんかも人気です。メッセンジャー会社がつくっているということで、興味を持ってくださる方が結構いるんですよ。
吉井 まさにプロ仕様だし、見た目もとてもカッコいいです! 話を聞けば聞くほど、メッセンジャーの仕事って様々な方向に広がっているんですね。そのあたりの変化を、柳川社長はどう見てらっしゃるんでしょう?
柳川 メッセンジャーという存在は、道路や通信施設と同じように街のインフラの一部だと思っています。時代に合わせて変化はしますが、インフラとして地域の経済や生活に貢献するという役割自体は変わりません。だから、東日本大震災の当日も仕事を中断せず、停電や大渋滞の中、夕方まで走り切りました。いつも街中をくまなく移動しているので、たとえば自動体外式除細動器、いわゆるAEDの設置場所を頭に入れておくことで、いざという時に備えることもできます。