プロフィール 岩手県出身。調理師学校を卒業後、料理人として活動するもリサイクルに興味を持ち、リサイクル業界に転身。2005年、(株)ダイサクの自転車回収を請け負って放置・廃棄自転車回収を開始し、2008年に(株)ダイサク草加として法人化。翌2009年6月には(株)ダイサクからの完全独立を果たし、(株)KCTに社名変更。代表取締役に就任し、現在に至る。
持続可能な循環型社会へのシフトが叫ばれる一方、そのコアとなる発想はいまだ「節約」に軸が置かれたままで、節約のステージの先で注目されるべき循環=リサイクルの発想は、社会の全域に浸透しているとは言いがたい。放置・廃棄自転車の回収事業を展開する株式会社KCT・吉田渉社長は、素材と素材の活かし合いを意識する元料理人らしい感性を活かし、人と人との協調関係を通じてリサイクルを実現しようとしている。
放置・廃棄自転車を無料で回収
石野 埼玉県越谷市にある放置・廃棄自転車回収センターにお邪魔しています。トラックに大量の自転車が積み上げられて、目を見張りますね。運営される株式会社KCTさんではこんなにも大量の放置自転車の回収を、無料で行っていると伺いましたが、本当ですか?
吉田 本当ですよ(笑)。私たちにご連絡いただければ、お店やアパート・マンション、駅前商業施設、大学、病院等に放置された自転車・バイクを全て無料で回収させていただきます。
放置・廃棄自転車というのは、どこかが故障して乗れなくなって放置されているのですが、修理をすればまだまだ充分乗れるのです。特に日本製の自転車は品質が良くて、アジアやアフリカの国々で引く手数多なんですね。私たちは回収した自転車を、バイヤーさんを通して、サプライヤーとして発展途上国へ販売しています。つまり、廃棄自転車を有効活用するリサイクル・ビジネスを行っているわけです。
石野 こんなに大量の自転車を回収するのは大変な労力でしょうね。修理は自社で行っているのですか?
吉田 バイクについては専門の整備士を配置していますが、自転車はバイヤーさんが人件費の安い輸出国で一括修理しています。
廃棄自転車輸出ビジネスはスキーム化されていて、私たち回収業者は引き渡すだけの作業で、後は税関手続きも含めて、すべてバイヤーさんの領分なのです。バイヤーさんは当社のような回収業者から100台単位で廃棄自転車を購入し、コンテナに詰めて海上輸送しています。一番長い40フィートのコンテンナボックスは600台積載できるそうです。私も見ましたが、なんとも雄大な光景ですよ(笑)。
石野 壮観でしょうね。回収作業は埼玉県内だけで行うのですか?