受け取り時に法人税が課される
法人では金融商品のように使われることが多いですが、あくまでも生命保険であるため、一部の種類を除き、死亡したときには死亡保険金が支払われることとなります。法人が契約者となっている以上、基本的には死亡保険金を受け取るのも法人となります。しかし、保険金を受け取る際には注意が必要です。
まず、法人が生命保険を保障として考える場合とは、一体どういったときでしょうか? 法人で借入をしている場合は、その返済のために加入しているケース。経営者に万一のことがあり、その後の売り上げを維持するのが難しい場合は、事業継続のために加入しているケースも考えられるでしょう。どちらにしても経営者の思いが込められているため、死亡保険金を受け取るときには、経営者がどんな思いで契約していたのかを汲み取る必要があります。
死亡保険金なんて一度受け取ったら終わりだと思うかもしれません。しかし、契約者=法人、被保険者=経営者(社長)、死亡保険金受取人=法人として保険料を全額損金で計上している場合は、その保険金は収益として全額を益金計上しなければなりません。よって、そこには法人税が課されてしまうこととなります。仮定として、事業が黒字も赤字も出ていない利益ゼロの会社に、死亡保険金5000万円が支払われるとしたら、約1500万円の法人税が課され、結局手元に残るのは3500万円しかないということとなってしまいます(法人税を30%として計算)。
こうした事態を防ぐために、法人から役員の遺族に死亡退職金として支払うことで損金を計上し、法人税を軽減する方法があります。しかし、事業の継続をメインの目的として生命保険に加入している場合は、他にも有効な方法を検討しなければなりません。
年金支払特約のメリット
事業規模がそれほど大きくない会社にとっては、社長に万一のことがあったときに経営が傾くという話は珍しくなく、一括で保険金を受け取って手取りを減らしてしまうよりも、分割で毎年一定額を受け取ることで毎期の固定収入があるほうが、会社を建て直すにあたって非常に心強い味方となるでしょう。そうした意味でも、保険金の受け取り方には、一時金としてだけではなく、会社に応じてベストな受け取り方があるということを忘れてはいけません。
この年金支払特約、先ほどは10年の例を示しましたが、保険会社によっては3年、長ければ30年以上で設定することもできます。今では保険加入の際に自動で付加をすることが基本です。ただし、以前はそこまで浸透していた特約ではないので、昔の契約には付加されていないケースもあるかもしれません。生命保険に加入している経営者の皆様には一度、保険証券を見直してみることをおすすめします。そして、会社の状況に応じた年金支払期間を定め、万一のときのために社長の思い・メッセージを残しておきましょう!
vol.3 生命保険金の受け取り方、年金支払特約の重要性
(2018.1.31)
著者プロフィール
八木 照浩 Yagi Akihiro
Ever Side 八木照浩保険代理店FP事務所 代表
経 歴
慶應義塾大学経済学部で国際金融論を専攻。卒業後は国内の生命保険会社で企業保険や個人保険の営業、法人リスクコンサルティングを行う。総合保険代理店に転職し、複数の生命保険会社の商品を手掛け、ノウハウを蓄積する。その後、培った知識と経験を活かすため独立を決意。生命保険に特化した総合保険代理店FP事務所Ever Sideを開業した。日本FP協会東京支部会員。保有資格は1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®(日本FP協会)、トータル・ライフ・コンサルタント(生保協会認定FP)、相続アドバイザー、コンプライアンス・オフィサー。
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