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アルジェリアでの事件のこと

 
 先日、海外でのプラント実績では国内でも有数のコネクションと規模を誇る日揮が、アルジェリアでテロ組織の襲撃にあい、同地に赴任していた日本人駐在員を含む従業員の尊い命が奪われるという、いたたまれない事件が起きました。
 以前オーストラリアに赴任していた知人が、現在は日揮の経営陣の一員として会社を切り盛りしており、テレビのニュースで彼の記者会見の様子を見ました。その姿は、かなりやつれており、今回の事件の深刻さと、社内への影響の大きさがうかがい知れました。
 これまでイスラム圏では、日本は “資源も何もない小国なのに欧米を相手に戦いを挑んだ” 英雄国として人気がありました。しかし近年では 「欧米随従の政策を取っていたのでテロのターゲットになった」 とか、「“目には目を、歯には歯を” 的な報復を実行する能力も軍事力もないので、テロ組織から舐められている」 等の意見があるようです。が、どんなに議論しても、犠牲になられた方は戻っては来ません。
 同じ海外で生活し、就労している日本人として、心から犠牲になられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。
 
 

治安の重要性

 
 海外でビジネスを行うには、主力となる商材やビジネスアイデアが最重要なのは言うまでもありませんが、安全に、かつ安心して滞りなくビジネスに打ち込める生活環境も重要な要素です。
 海外生活では時として、我々日本人が思い描くよりも困難で予想し得ない出来事に遭遇する場合も数多くあります。家族と共に異国の任地で生活することになるケースでは、仕事をしている間、家族が無事に生活できているかどうかなどと思い煩ってしまい、本来集中しなくてはいけない業務に支障を来す可能性もあります。かといって、家族を日本に置いて単身赴任する方法を選択すると、今度は右も左もわからない異国の地で、一人で戦わなくてはならず、また違った意味での負担を抱えることになります。
 
 最近は日本も都市部などを中心に治安の悪化が懸念されていますが、それでも外国から見れば、こんな安全な国はありません。毎回とは言いませんが、財布を落として、お金を抜き取られずに落とし主の元にそのまま戻ってくる国は、私が知る限り、世界中どこを探しても見当たりません。
 犯罪発生率という面から、あえて日本よりも治安が良いと言える国は、モナコくらいなものです。もっとも、モナコは街のいたる所に監視カメラが設置されており、犯罪を未然に防ぐ名目で住民が四六時中監視されているので、治安の意味合いが少々異なるかもしれません。
 
 余談ですが、私は以前にモナコを訪れた際、トイレに入ろうとして大きなバックパックが邪魔で、トイレの入口に置いて中に入ったことがありました。用を足してトイレから出るとびっくり。数人の警察官が私のバックパックの周りに立ち、無線で何やら話しているではありませんか。
 「これは私のバックだけど、何か問題があるのか?」 と聞くと、「何でこんなところに置いたんだ! 身分証明書を見せろ。どこに泊まっているんだ」 などなど、詰問の嵐を受けました。当時私は学生だったので、学生証と、パスポートを提示したところ、日本人であったため、お咎めなしで無罪放免になりました。これが国際的な信用がない他の国籍だったらと考えると、ぞっとします。
 
 

オーストラリアの治安状況

 
 日本よりも治安の良い国は世界中を探してもまず見当たりません。ただオーストラリアも、世界でも比較的上位に来る治安の良い国です。この国は、アメリカなどと異なり、日本と同様に銃が規制され、一般人は銃器を保持することはできません。またオーストラリアは、夜中に女性が一人でタクシーに乗ったとしても何ら問題の起きない数少ない国です。もちろん、比較的治安がしっかりしているオーストラリアでも、凶悪犯罪や、治安が悪い場所は存在しますが、ただこれは日本も含めた他の国でも同様なことで、どの国にもあまり近寄らないほうが無難な場所は存在します。それはあくまでも一部であって、全体的には、安全管理に疎い日本人でも、問題なく過ごせる国だと言えます。
 
 オーストラリアの治安が良い理由として、国策として、国のイメージを損なわないように努力している点も挙げられます。日本人がオーストラリアに持つイメージは、青い空、綺麗な砂浜、雄大な大自然・・・という感じだと思いますが、これは他の国の人も同様なイメージをオーストラリアに持っています。オーストラリアは資源大国の看板の他にも、観光立国としても立っており、世界各国から訪れる観光客が落とすお金はこの国の重要な税収入源になっています。そのため、国のイメージを損なう凶悪犯罪、特に観光客に対しての犯罪に神経を尖らせているのです。
 
 ビジネスの内容によっては、治安の悪い国に行かなくてはいけない場合もあります。客観的に見て治安が良いと、やはり社会が安定しています。安定した社会には既存の競合他社が存在する可能性が高く、新規参入者がその市場に割って入るのは容易ではない場合もあります。いっぽうで、一攫千金を狙って未開の国に乗り出すことは、商売として間違ってはいませんが、海外経験のない人間がいきなり未開の国に行くのは、小舟で大海原に乗り出すようなものです。
 オーストラリアの治安の良さは世界有数。加えて、大手が進出しにくい市場特性、英語圏であること、日本と時差があまりないことなど、ここまで好条件が揃った国は滅多にありません。
 これらが、初めて海外進出する国として、私が日本の経営者たちにオーストラリアを第一にお薦めする理由なのです。
 
 
 
 
  南半球でビジネスを考える ~オーストラリア在住・日本人経営コンサルタント奮闘記~
vol.23 国の治安からビジネスを考える

 執筆者プロフィール  

永井政光 Masamitsu Nagai

NM AUSTRALIA PTY TLD代表 / 経営コンサルタント

 経 歴 

高校卒業と同時に渡米、その後オランダに滞在し、現在はオーストラリア在住。永住権を取得し、2002年にNM AUSTRALIA PTY TLDとして独立。海外進出企業への支援、経営及び人材コンサルティングを中心に活動中。定期的に日本にも訪れ、各地で中小企業向けの海外進出セミナーなどを行っている。

 オフィシャルホームページ  

http://www.nmaust.com/

 ブログ  

http://ameblo.jp/nm-australia/

 
 
 
 
 

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