こんにちは、上原浩治です。
誕生日にもらったケーキ。レッドソックス
やから “赤い靴下” って、しゃれてるわ~。
いよいよ待ちに待ったシーズンが到来! 今年はボストン・レッドソックスでシーズンの幕開けを迎えることができました。新シーズンの最初にいきなりイチローさんと対戦があったり、気持ちとしてもいつになく盛り上がっています。キャンプ地だったフロリダの風も肌に合ってたし、徐々にボルテージを上げて、ガツンとやっていこうと思います。
あ、今月3日の誕生日にはブログやTwitterなどでたくさんのファンからメッセージをいただきました。みんな、ありがとう。
それと、ダルビッシュのことはぜひ触れておきたい。開幕から魅せてくれましたね。完全試合、惜しかったな~。テレビ中継してほしかった(笑)。今年のダルはとんでもないことしそうな気がする。要注目です。
心が乱れていた昨シーズン
それにしても、昨年は心が乱れていたなと、振り返って思いますね。乱れていた原因はトレード要員に挙げられてしまったこと。さすがにあれはきつかった。球団から 「お前、いらんからな」 と言われているようなものですからね。
会社員をされている方でいえば、会社から 「お前はもううちの会社にいらんから、転職先が決まったらさっさと出て行ってくれ」 と言われるのと同じ。で、次の所属先が見つかるまで、その集団にいなきゃならないんですけど、そんな状態でバリバリ仕事に打ち込める人はいないでしょう? それが今年はないということだけでも、やりやすさは雲泥の差です。
そもそもレッドソックスに入団を決めたのは、「僕を必要としてくれている」 と感じることができたから。何か決め手になった言葉があるわけではないんです。態度や雰囲気、言葉の端々から感じられる 「私たちにはコウジが必要なんだ、力になってくれ」 という気概のようなものが、僕の肌の上に積み重なって、いち野球人として動かされたんだと思います。もう38歳になる選手をとろうっていう気持ちも嬉しいし、入ってみたら投手陣の中で最年長。頑張るよ。
新天地ボストンでの挑戦
気持ちが通じていたせいか、レッドソックスに来てからというもの、やりにくい雰囲気はまったくありませんでした。アメリカでのプレー歴もある程度できてきていることもあって、周囲も僕のことはそれなりに知ってくれている。僕ももちろん相手のことを知っているケースが大半なので、気さくに声を掛けやすい状況で入団できました。
一球団目のオリオールズのときはアメリカに来て1年目でしたから、右も左もわからない。レンジャーズ時代は、自分が必要とされているかどうかわからない中での暗中模索。でも、5年目は、しっかりとレッドソックスというチームに腰を据えて野球に打ち込むことができる。この違いは僕にとってとてつもなく大きいんです。
周囲からすると、同じ日本人の選手がチームにいて話しやすいんじゃないかと思う方がいるかもしれませんね。もちろん日本語が通じるし、世界一という同じ目標に挑戦しているわけですから、共感がわかないことはありません。レンジャーズには高校からの同級生でもある建山やダルビッシュがいました。そしてレッドソックスには田澤純一くんがいる。
とはいえ、日本人だからという意味で慣れ合おうという人は誰一人としていません。やっぱり僕らは一人ひとりが自分のスタイルを持つ選手どうしですから、日本人で慣れ合うということはまずありえない。これはレッドソックスだからどうこうというんじゃない、結果がすべての世界では当たり前のことだと思うんですよ。慣れ合って得られるものなんて何一つないんだから。
真剣な野球人の集まる世界
田澤くんは、日本野球を経験せずにアメリカ挑戦を決めたので、その胆力はすごいと思います。実際に球も速いし、ツーシーム、カーブ、スライダー、フォーク、チェンジアップ・・・変化球もいいし、周囲に流されない自分の軸を持っている。一度一緒に食事に行ったことがあるけど、性格もいいとわかって、ますます頑張ってほしいという気持ちにさせてくれる選手です。
でも、僕が彼に懇切丁寧に何かを教えたりするということはありません。田澤くんだからということではなく、誰に対してもそうです。相手から求められてきて、自分がわかることならば伝えることはあるかもしれませんが、まずは自分のことを一生懸命やって、そこで感じるものがあれば好きなように感じてもらえればいいという考え方。学生時代から、人よりも多く練習しているのを見せて、態度でわかってもらうということを繰り返していますからね。もしかしたら、ビジネスパーソンの皆さんが部下や後輩を育てようとする際、同じように口ではなく態度で見せていく人も多いのではないでしょうか。そういう方のやり方に通じるものがあると、自分自身でも思っています。
裏を返せば、適当なコミュニケーションでごまかしたくはないということです。後輩と飯を食いに行くことなんて誰にだってできる。でも、それで飯を食わせて仲良くしているから慕われると考えるのは大間違いだと思うんですよ。そんなやり方で得られる好意なんて、結局たかが知れている。嫌われるくらいでもいい。言うならばキツク言う。わからないやつはわからないでいい。わかるやつだけがわかればいいんです。
と、いつになくクールでドライなことを話してしまっていますが、人のことをどうこう言っている場合ではありませんね。まずは自分がきちんと結果を残していかないと、何言っても説得力がないわけですからね(笑)。
今年は腰を据えて野球に打ち込めると書きましたが、やることは変わりません。一球一球、全力で魂を込めて。そして、怪我をせずシーズンを終えること。しっかりやっていきますので、応援よろしくお願いしますね!
執筆者プロフィール
上原浩治 Koji Uehara
ボルチモア・オリオールズ投手
経 歴
大阪府出身(出生は鹿児島県)。東海大学付属仰星高校から大阪体育大学に進学し、大学3年時に日本代表に選出。1997年に出場したインターコンチネンタルカップ決勝では、当時国際大会151連勝中だったキューバから先発勝利をあげ、注目された。ドラフトで読売ジャイアンツに1位指名(逆指名)を受け、1999年に入団。ルーキーイヤーに20勝投手となり、最多勝利、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の4冠を獲得し、新人王と沢村賞も受賞。翌2000年は肉離れのため登録抹消となるなど、ケガに苦しむシーズンを送るも、2002年に再び17勝をあげ、優秀選手賞を受賞。2004年にはアテネオリンピック野球日本代表に選出され、銅メダル獲得に貢献。2006年のワールド・ベースボール・クラシックでも日本代表のエースとしてチームを優勝に導いた。2009年にボルチモア・オリオールズに入団。ベテラン投手の一人としてチームを牽引している。