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スポーツ 上原浩治のTrust Pitch! vol.11 波乱のシーズンが終了 上原浩治のTrust Pitch! ボストン・レッドソックス投手

スポーツ
 
こんにちは、上原浩治です。
 
 ようやくシーズンを終了。いやあ、今年はいろいろあった(笑)。トレードが持ち上がったと思ったら怪我に見舞われて。一年間の点数をつけるとしたら、マイナーにいた時期を含めてトータルではマイナス点。ただし、メジャーにいるときは防御率1点台だったし、いい状態をキープできていたので100点以上をあげたいと思います(笑)。総括すると 「よく持ちこたえた一年だった」 ということになりますかね。
 
 

負けに不思議の負けなし

 
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「上原浩治トレーディングカード」 キターッ!
 アメリカでは、怪我をしたからとか、調子が悪いからといって泣き言を言っている暇なんてない。野球は、あくまで個人スポーツだと僕は思っていますし、実際、メジャーにせよマイナーにせよ、個人事業主の集まりのようなものだから。その中で、ちょっとした協力関係でより良い結果を求めるために、チームプレーが生まれてくるだけです。
 そう考えると、今年のサンフランシスコ・ジャイアンツはすごかった。メンバー一人ひとりが状態を上げてきていたので、個の強さが集団でもいかんなく発揮されていたと思います。野村克也さんがよく言う言葉に 「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」 というものがありますが、ワールドシリーズを見ていて、デトロイト・タイガースだって弱かったわけじゃないのですが、まさにその言葉が当てはまると実感しました。ジャイアンツには勢いもあったしね。
 
 

シリーズ男と逆シリーズ男

 
 実は、どのチームにも必ず “シリーズ男” と “逆シリーズ男” という存在がいるんです。シリーズ男というのは、そのシリーズで一番活躍を続けている選手のこと。ジャイアンツでいえばワールドシリーズでMVPになった三塁手のパブロ・サンドバルなんかがその典型。調子がいいからとても怖いし、どんどんチームを勢いづけていく。僕が今季怪我をしたのは、サンドバルに投げたときでしたからね。
 逆シリーズ男というのは、反対にチームの足を引っ張ってしまう選手。「飲みに行こうぜ」 なんて気軽に誘ってきますから、ホイホイついていったら、自分の調子も崩れてしまいます。ジャイアンツにも逆シリーズ男がいたような気がします。名前はあえて出さないですけども(笑)。ピッチャーとしては、いかに早く逆シリーズ男を見つけ出して、そこをきっちり抑えてチームの勢いをそぐかということが重要になってくるんです。同時にシリーズ男に好き勝手やらせない。チーム全体がノっちゃいますからね。
 我らがテキサス・レンジャーズのチームとしての総括は、序盤こそまずまずの雰囲気だったけども、8月後半くらいから息切れをしてしまいましたね。打線が沈黙しがちで、10点以上とれる試合が激減した。投打がかみ合わなくなったら、勝てる試合も勝てなくなりますよね。
 いっぽう、古巣のオリオールズは今年よく頑張りましたよ。試合に出た選手たちがうまくかみあって、結果を出していた。さらに、ドラフトでとった若い選手に脂がのってきて、戦力が充実していた印象があります。
 
 

18歳と37歳、それぞれの挑戦

 
 ちなみに、日本の話題もアメリカに聞こえてきていますよ。古巣の巨人が日本一に輝いたそうですね。巨人の皆さん、おめでとうございます! 
 ドラフトでも高卒のルーキーの一部が、日本球界を経由せずに渡米しようと話題になっているとか。メジャーへの挑戦意欲は大いに素晴らしいと思います。ただ、厳しさが日本とはまるで違うということは覚悟しておいてほしい。食事、言葉、海外での生活習慣の違いに苦しめられますから。球団が庇護してくれるわけでもないので、プロ未経験の18歳の若者ならば、正直、両親や家族の誰かがついてくるくらいでなければ、相当厳しいと思います。
 僕も日本で10年の経験があったから、なんとかやってこられた。もちろん、難題を乗り越えてメジャーに上がり、活躍することができれば大したもんですけどね。できるだけそうなってほしいですから、もしアメリカで会うことがあったら、なんぼでも相談には乗ってあげたいですね。
 
 もっとも、僕もまた次の目標に向けて挑戦の連続になるでしょう。僕は今期で2年契約が終わったため、FA (フリーエージェント) の状態。次に所属するチームがどこになるかは、このコラムを書いている今はわかりません。
 チームが決まらなければ目標を持ちようがないですが、とにかく頑張るしかない。「できない」 なんて自分で言いたくないですからね。ビジネスマンの皆さんも同じでしょう? できないのは自分のせい。だから、自分の行動に責任を持って前に進むしかない。
 
 ということで、お互い頑張りましょう! 

 執筆者プロフィール 

上原浩治 Koji Uehara

ボルチモア・オリオールズ投手

 経 歴 

大阪府出身(出生は鹿児島県)。東海大学付属仰星高校から大阪体育大学に進学し、大学3年時に日本代表に選出。1997年に出場したインターコンチネンタルカップ決勝では、当時国際大会151連勝中だったキューバから先発勝利をあげ、注目された。ドラフトで読売ジャイアンツに1位指名(逆指名)を受け、1999年に入団。ルーキーイヤーに20勝投手となり、最多勝利、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の4冠を獲得し、新人王と沢村賞も受賞。翌2000年は肉離れのため登録抹消となるなど、ケガに苦しむシーズンを送るも、2002年に再び17勝をあげ、優秀選手賞を受賞。2004年にはアテネオリンピック野球日本代表に選出され、銅メダル獲得に貢献。2006年のワールド・ベースボール・クラシックでも日本代表のエースとしてチームを優勝に導いた。2009年にボルチモア・オリオールズに入団。ベテラン投手の一人としてチームを牽引している。

 
 
 
 

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