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鹿島アントラーズのC.R.O、中田浩二さんに日々の仕事ぶりやアントラーズのクラブ経営手法について語っていただくシリーズの連載4回目、今回は主に、スタジアムの集客アップに向けた取り組みをうかがいました。
 
 

8月~9月初旬は国外で仕事

 
――前回の取材から2ヶ月ほど経ちました。8月中は仕事でブラジルにいたんですよね。
 
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ええ。リオデジャネイロ五輪に参加するサッカーU23日本代表の試合解説の仕事で20日間ほど滞在していました。日本は予選グループで敗退してしまったため、残りの期間は他の競技を観戦していましたね。テニスの錦織圭選手が銅メダルを獲得した3位決定戦や、ウサイン・ボルト選手が金メダルに輝いた陸上男子100m決勝を観戦しました。
 
――9月初旬はワールドカップアジア最終予選の仕事でタイにも行っていたそうですし、最近は日本にいることのほうが少なかったのでは?
 
そうなんですよ。タイから戻って久しぶりに息子と会えたんですけど、「こいつ誰?」みたいな反応されちゃって。何とかしなくちゃと思っています(笑)。
 
 

分配金よりも自助努力が大事

 
――家族の待つ家に帰れないのは、なかなかつらいですね(笑)。そういえば、Jリーグがイギリスの動画配信の大手企業との間で、有料放映権を10年間総額2100億円で結びました。この件についてはどうお考えですか。クラブに入る分配金も増えるかもしれないですよね。
 
確かに増えるかもしれませんね。でも分配金を単純に増やせばいいのかと考えると、そうではないと思うんですよ。クラブも分配金をあてにしているだけではダメで、きちんと自助努力をしなければならない。いずれにしても、Jリーグが増収分を何に投資をするかによって、今後のリーグ全体の動きも変わってきますよね。アントラーズとしては、これまでの事業戦略に則って地道な努力を続けていくことが大事だと思います。
 
 

10月でクラブ創立25周年!

 
――クラブは今月で25周年を迎えたそうですね。ロゴや記念誌をつくったとか。
 
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記念ロゴ。クラブに関わる全ての人と「ともに、
同じ夢を分かち合う」というメッセージを込めた
ええ。ロゴ作成には僕も参加しました。記念誌はクラブの存在をアピールする意味もありますけど、25年間の歴史を振り返ることで、これからの事業に向けて新たな発見ができるかもしれない、という期待もあります。と言っても、劇的に何かを変えることは難しいので、やっぱりチームが勝ち続けてくれることが第一なんですけどね。
 
――連載1回目からお話しなさっているように、観戦に来てくれる方々を増やすには、やっぱり強いクラブであることが最も大切ということですよね。
 
そうですね。ものすごくクラブを愛してくれていて、勝てなくても応援し続けてくれるサポーターがたくさんいるクラブになることも、1つの理想ではあるんですけど。ただ、理想はやっぱり理想ですから。
 
第1回目でお話ししたように、ホームタウンの鹿行地域は人口が多くないので、近隣の人だけでスタジアムを満席にするのは難しいんです。ホームゲームには、遠方からたくさんお金をかけて来てくれている人ばかりですからね。そういうことを考えると、選手たちもつまらない試合はできない。観戦するサポーターの皆さんはチームが勝って、その喜びを共有することが一番の楽しみだと思いますし。ですから、アントラーズは常に勝ち続けることがクラブを発展させるために絶対に必要なことなんです。
 
――さらにそれと並行して、戦略的に集客を図るアイデアを打ち出し続けると。
 
そうです。ですから集客アップに向けた試みは当然、継続的に行っています。
 
 
リピーターを増やすための取り組み
 
――では、具体的な集客アップの取り組みについて教えてください。
 
例えば、今年6月で、ホームの試合観戦に訪れた総来場者数が700万人を超えたんですね。700万人到達に向けてカウントダウンをしていた時期は、Mission Seven Million(ミッション セブン ミリオン)と銘打ってリフティングにチャレンジするイベントを実施したり、グッズショップで70%OFFセールや700円均一セールを行ったりするなど集客につながるイベントを展開しました。僕とチームOBの新井場徹氏のトークショーも実施しています。これは記念的要素が強いイベント展開なので、毎試合こうした活動はできません。でも、アイデアを出してこうした活動を地道に実施していると、1回あたりの集客数は増えるものなんですよ。
 
――7月28日から9月16日までスタジアムのコンコースを会場にした「スタジアムビアガーデン」を開催していたそうですね。これも地道な活動の1つだと思います。
 
なかなかの盛況でしたね。実施期間中は地元の音楽家の方や、お笑い芸人を呼んで何度かイベントも行いました。スポンサーさんや市役所、警察、県庁の方々が来てくれることもあったので、僕も何度か顔を出して一緒に飲みましたよ。サポーターの方もいて、会話をすることもけっこうありましたね。これもファンサービスになりますし、僕自身もいろいろな方と触れ合えて楽しい時間を過ごせました。
 
――集客において難しいのは、リピーターをいかに増やすかでしょうね。
 
それが大きな課題です。まずはライト層に来てもらうにはどうすればいいかを考えて、来てもらえたとして、どうすれば楽しんでくれるのかも考えなければならない。そうなると試合に勝つだけでなく、スタジアムを訪れることそのものを楽しんでもらえるような企画を立てる必要が出てくる。例えばコンコースで選手と交流できるイベントであったり、特色のある飲食店を出店してみたり。こういうことができるようになったのも、スタジアムの指定管理者になっているからなんですよね。
 
――指定管理者になることのメリットの大きさがあらためてわかりました。次回も集客に向けたアイデアについてお話をうかがいます。
 
中田浩二が語る、常勝軍団の育て方
vol.4 地道な活動を積み重ね、集客力をアップ
(取材:2016年9月)
 
 

 著者プロフィール  

中田 浩二 Nakata Koji

株式会社鹿島アントラーズFC C.R.O

 経 歴  

1979年7月生まれ。滋賀県大津市出身。1998年、帝京高校から鹿島アントラーズに加入。数々のタイトル獲得に貢献した。2005年にフランスのマルセイユに移籍。2006年からはスイスのバーゼルで活躍し、2008年に鹿島に復帰する。2014年に現役を引退。日本代表では1999年の FIFAワールドユース選手権で準優勝、黄金世代の1人として注目を浴びる。2000年シドニーオリンピックU23代表、2002年日韓ワールドカップ、2006年ドイツワールドカップでも代表選手として大会に臨んだ。J1リーグ通算 266試合33得点、国際Aマッチ57試合2得点。現在は鹿島のC.R.Oとして多方面で活躍している。著書に『中田浩二の「個の力」を賢く見抜く観戦術―サッカーが11倍楽しくなる!』(ワニブックスPLUS新書)がある。

 鹿島アントラーズオフィシャルサイト 

http://www.so-net.ne.jp/antlers/

 ツイッター 

https://twitter.com/nakata_cro?lang=ja

 
 
(2016.10.14)
 
 
 
 

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