みんな多様性多様性と言うけれど
多様性だ、ダイバーシティだ、ってみんな言いますが、私に言わせれば、それが実現できてるところなんてほとんどありませんよ。だって、考えてみてください。多様性を実現するためには、いろいろな従業員を受け入れられるだけの度量が経営者の側にも必要だ。性格、考え方、育った背景・・・人はそれぞれ全部違う。でも、今の世の中の人材採用やマーケティング論は「排除の論理」ばかりだ。異分子は排除しろ、尖ったやつは来てくれなくていい、従業員は自分にとって都合の良い従順な人間で固めたい。うるさい客はいらない、客を選ぶ権利だって企業側にある。――それが今の経営のトレンドだろう。
でも、そうやって選別していった先に何が残るのだろうか? 言っとくけど、我々のような中小企業こそ、そうやって排除される側の人間をどう扱うかが重要なわけですよ。だって、エリートはみんな大手に行っちゃうから。私たちは残りのデコボコ――それこそ世間で言うポンコツ人間を寄せ集めて、個々を尊重しながら育成していくしかないんですよ。逆にそこが中小企業最大の強みだと思うんです。
そう思うから、サトーカメラは人材採用でも選り好みしません。基本の読み書きができ、人と話ができ、普通の社会人としてのモラルを備えていれば迎え入れて育てます。また、そのほうが結果的にもいいんです。なぜって、お客さんの側も同じで、大手のビジネススタイルに飽きた人たちがたくさんやってくるから。マイナー好きだとか、買うまでに延々迷う人だとか、オタクだとか、茶髪や金髪にピアスにタトゥーだって、それは来ますよ。それらを全部含めて県民であり地域であり、お客さんですからね。いっぽうで会社役員さんや、一般的に言う上品なお客さんももちろん来ますよ。そういう地域住民の、老若男女、千差万別の人たちの、それこそ“多様”な価値観に応えて個々の「想い出をキレイに一生残すために」を実現するためには、企業側の都合で金太郎飴みたいな従業員ばっかりそろえていては、絶対に地域対応ができないんですよ。今日この会場に来てくださっている皆さんの会社はどうですか?
――と、大体こういう話をしました。
いや、実際そうだと思うよ。指導先の社長からも打ち明けられたことがあって、社長いわく、「うちは体育会系の人間しか採用しない」んだって。彼らは単純だから、「やれーっ! いけーっ!」と気合いを入れれば一致団結して頑張ってくれる。だから扱いもラクなんだそうだ。でも、全員が同じようなタイプばかりになっちゃって、事業としては限界が来てるんですよ。特に、見識の広い柔軟なタイプの経営幹部が育たない。かといって、サトーカメラみたいに今さらいろんなタイプの人材を迎え入れるのは怖くてできない。現場だって自分たちが扱いやすいタイプじゃないと使う自信がない・・・。その社長は深刻にそう打ち明けてくれた。
わかる、わかるよ社長。でも、そこはやっぱり、思い切って自分が自分の殻を破らないとしょうがない。じゃあどういうふうに考えれば殻を破れるかだけど・・・。
「謙虚」なんていうのは隠れ蓑
でもさ、直接話していると、私にはわかっちゃうのよ。彼の本性が。彼の生い立ちもあって「天下を取ってやる! 世間を見返してやる!」というものすごい反骨精神を胸に秘めていることが。だから言ってあげました。「お前みたいな、なんの力もない20代の若者が、その生意気をやめてどうする! 牙を抜かれてどうする! お前は今、女房に飼いならされかけているんだぞ。それでいいのか!」ってね。
私が思うに、「謙虚」というのは、本当に財力も権力も能力もある人間が使う言葉だと思うよ。力のない君みたいな若者が生意気じゃなくなったらどうする? 生意気でいいじゃないか。ただし、そこで大事なのが勉強だ。とことん生意気でいたければ、人の3倍も5倍も10倍も、勉強も仕事もすればいいんだよ。
その結果、世間を見渡したら、自分が知ってることなんてほんの小指の先ぐらいのもので、世の中には知らないことの方が圧倒的に多いことにも気付かされるはずだ。若いうちから「謙虚」を目指すなんていうのは、自分より強い人間に一発打たれたぐらいでハイ終り、そこから勉強もしなければ仕事もしない、ヘタレ野郎のすることなんだよ。そんなことを覚える必要はない、それよりも反骨心を燃やせってんだ。若い時こそ生意気になるくらい勉強して働けってんだ。若い時は生意気な奴ほど出世し成長し成功するものだよ。
いい人ぶるな! 生意気でいけ! もっと勉強しろ!
とはいえ・・・実は私自身も、40代までは自意識過剰になる瞬間が多々ありました。人の話を知ったかぶりしそうになったときもありました。そのたびに、「ヤバい、俺今思い上がっちゃってる。ちゃんと聞こう」と思って知らないことはその場で尋ね返し、質問し、その場で学ぶようにしてきました。そうしてきて本当に良かったと思います。
だってさ、話の内容がわからないから意見もせず大人しく聞いている姿は、傍からは「謙虚」に見えるんだよ。そのうちに、人によっては「謙虚」の意味を履き違えて、「自分にはわからないが、どうせ大した話じゃないだろう」と人の話を都合よく判断してその場をやり過ごすことを覚えてしまう。そうやって勘違いした「謙虚」のポーズが癖になれば、相手からは生意気だと思われて損することもないし、何か自分の知らないことに出くわしても、人に聞いて恥をかいたりしなくて済む。――でもそれは「謙虚」ではないよね。むしろ「傲慢」だ。
私が若者に向かって「謙虚になれ」という言葉をかけるのが大嫌いな理由はそこなんだ。いい人ぶるな! そのためにもっと勉強しろ! もっと仕事しろ! 声を大にして言いたいね。「若者こそ生意気たれ!」ってね。
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vol.12 若いうちの謙虚さは、なぜダメなのか
著者プロフィール
佐藤 勝人 Katsuhito Sato
サトーカメラ代表取締役副社長/日本販売促進研究所.商業経営コンサルタント/想道美留(上海)有限公司チーフコンサルタント/作新学院大学客員教授/宇都宮メディア.アーツ専門学校特別講師/商業経営者育成「勝人塾」塾長
経 歴
栃木県宇都宮市生まれ。1988年、23歳で家業のカメラ店を地域密着型のカメラ写真専門店に業態転換し社員ゼロから兄弟でスタート。「想い出をキレイに一生残すために」という企業理念のもと、栃木県エリアに絞り込み専門分野に集中特化することで独自の経営スタイルを確立しながら自身4度目となるビジネスモデルの変革に挑戦中。栃木県民のカメラ・レンズ年間消費量を全国平均の3倍以上に押し上げ圧倒的1位を獲得(総務省調べ)。2015年キヤノン中国と業務提携しサトーカメラ宇都宮本店をモデルにしたアジア№1の上海ショールームを開設。中国のカメラ業界のコンサルティングにも携わっている。また商業経営コンサルタントとしても全国15ヶ所で経営者育成塾「勝人塾」を主宰。実務家歴39年目にして商業経営コンサルタント歴22年目と二足の草鞋を履き続ける実践的育成法で唯一無二の指導者となる。年商1000万〜1兆円企業と支援先は広がり、規模・業態・業種・業界を問わず、あらゆる企業から評価を得ている。最新刊に「地域密着店がリアル×ネットで全国繁盛店になる方法」(同文館出版)がある。Youtube公式チャンネル「サトーカメラch」「佐藤勝人」でも情報発信中。
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