皆さまこんにゃちわ。大川です。
今回で第6回を迎えたこの連載。前回はすこしマジメなことを書き過ぎました。
マジメなことを書き過ぎた罪悪感で少し痩せて、いくつかベーグルを食べたら元に戻ることができました。
ベーグルといえば本来の発音はベイゴォでして、渡米していくら「べーぐるべーぐる」言っても通じるものではありません。人生も同じこと。自らの性格や努力の歴史とは裏腹に、世間はめまぐるしく、きょうもまわり続けてます。この連載を通じ、昨今の上昇気流とガッチリ噛み合うしたたかさを身につけて、他所の国で30人くらい子孫を残す勢いで今月も生き抜いてまいりましょう。
それでは今月も、ひとつめの質問から。
こんにちは。
27歳の草食ITリーマンです。
この夏帰省したとき、地元のセブンイレブンにいたカバ顔の女性店員さんに一目惚れをしてしまいました。
普段東京では女性の多い職場に働いていることもあって、いつも皆さまからあれこれよくしてもらっているのですが、自分はカバ顔の女性にしか魅力を感じないので、いままでは浮いたハナシのひとつもありませんでした。
そんな自分の目の前に舞い降りた、僕の天使。
愛くるしい瞳、短いまつげ、太い手首、大器晩成を思わせる二の腕の厚み。
カバ、カバラー、カバエスト。
まさに彼女こそが僕の理想であり、頭からまるごとパクっとされたらどんなに幸せだろうと考えると夜も眠れません。
そこで質問です。
僕はこのまま、美人だらけのIT系で働いてていいんでしょうか。それとも今すぐ彼女に会いに行き、素直に気持ちを伝えたほうがいいんでしょうか。でも、カバ顔だから好きって失礼にあたりませんかね。
ご回答、よろしくお願いします。
(IT系勤務 27歳)
豪放な質問、ありがとうございます。
経営に関する質問を引き受けるのがこのコーナーの主旨なんですが、個人的に過呼吸を起こす程度にこうした話題が好物なので、しっかりとお答えいたします。
まず、あなたが置かれている状況を整理してみましょう。
一般的に、美人はみんなの憧れです。美人1人に対して、「いいよねー」っていう男性がたくさんいるのが美人です。つまり美人1に対して男性100くらいが100美人だとしたら、ファンが1万人いるアイドルは1万美人だと数値化することができるでしょう。
またこの数値は、その女性をリアルでもメディアでも「認知している」男性が数値の元になり、箱に閉じ込められた絶世の美人は潜在的に100万美人だとしてもスコアとしては0美人となってしまいます。
この数値、女性側から見たらあれこれ努力をしたり環境を変えたりすることで自分で上げていくことができるんですが、皮肉なことに男性側から見たら美女ランクが上がるにつれて競争も激しくなるもんですから、たまったもんではありません。
そういったメカニズムは、研修生のうちから将来花開く推しメンを見つけ出し、総選挙でトップクラスに登るまでCDを買い続け、写真週刊誌にお持ち帰りを激写された際の
「けっ!」
という末端ファンの断末魔に見出すことができるようになっています。
で、今回のケース。
あなたが出会った天使はどうかというと、1カバです。
美女とかどうとかではなく、1カバです。
美女がある程度の普遍性を持って様々な方に愛されるように、カバ顔も希少な好事家の皆さまに訴えかける独自のフェロモンを発しています。
ところがカバ顔は美女とくらべて普遍性において劣るため、テレビや雑誌への露出が極端に少なく、出会えるとすると非常に限られた環境で「出くわす」くらいしかないのが実情です。
マーケティングに例えるなら、美女はレッドオーシャン、カバはブルーオーシャン。
つまり大海を機嫌よく泳いでるカバを見つけたあなたは、またとないチャンスを掴んだ漂流者。この機会を逃せば、次のカバはありません。
いいですか、次のカバはありません。
一刻も早く、眠たい東京ライフを飛び出して、カバ顔の天使に想いを伝えに走ってください。それがあなたにとってもカバ子にとっても絶好調の未来であり、遠くない未来に草食とカバ子の素敵なサヴァンナライフが毎晩訪れることでしょう。
では次の質問。
こんにちは。
都内で飲食店を経営する者です。
バイトの募集をかけても人が集まりません。
アベノミクス以降、急に採用がしにくくなって、けっこう時給を上げているのにも関わらず、応募そのものがありません。
このまま時給を上げ続けていくのも無理がありますし、なにか良い方法はないでしょうか。
(飲食店経営 46歳)
はい。最近よく聞きますね。本当によく聞きます。
とはいえ、実は飲食系でも人がたくさん来ているところはありまして、同じ会社の中でもコールドストーンと銀だこでは求人力に大きな違いがあります。
つまり、仕事とはいえ、我慢するのがイヤなんです。楽しそうで、人に話せて、自分がそこの一員になっていること自体が誇らしい。そんな職場であることが、今後の事業デザインにとって重要な段階に来ている証なんでしょう。
昨今の好景気の直前まで人材の需給バランスが保たれていたのは単なる長めの幸運で、ここから先は、職場としての魅力が給料以外にない場所は成立すること自体が難しくなっていく。人が楽しく、自発的に働けるような職場が残り、お金のもらえる強制労働のような業態が徐々に少なくなっていく。
これはある意味、好景気における自然淘汰のような流れであり、人々にとって職場が我慢する場所じゃなくなるのはすばらしい進化だとも思います。
そしてここまで書いて気づきましたが、これ、普通に経営の回答ですね。
気づくと逆に恥ずかしい。
つづけます。
エンドユーザーや従業員に対する情報の統制が困難になったいま、新しい経営は規律や合理性よりも「好き」から広がっていくような気がします。
それと並行して、様々な労働が機械化されていく未来では、とり憑かれたように打ち込める自分の本質と出会うのは勤勉さよりもずっと大事な能力になり、そうした熱意のない職場は未来の従業員から賛同を得ることも難しい世の中になるでしょう。
ITの発達によって変わり者の損益分岐点が下がったいま、皆様に於かれましては「やって楽しく、思い出して楽しい」人生を過ごしていただけるよう、自分だけのカバ子を見つけていただければ幸いです。
それではまた来月。
*ご相談募集*
大川弘一氏が読者のご相談に答えます。
ご相談は「まぐまぐ!」配信の
メルマガ《頻繁》にお申し込みいただきつつ、下記アドレスまでお寄せください。
経営者のためのPoker入門
vol.6 なぜ美人ばかりがモテるのか
執筆者プロフィール
大川弘一 Koichi Okawa
経営コンサルタント/ポーカープレイヤー
経 歴
1970年8月生まれ。慶應義塾大学商学部中退後、酒販コンサルチェーンを経て独立。1997年にメルマガ配信事業の株式会社まぐまぐを設立し、現在までにユーザー数は1300万人超を数える。1999年には子会社でナスダックに上場。2013年に代表職を退き、経営コンサルタント業と並行して、ポーカープレイヤーとして世界各地を巡っている。
フェイスブック
https://www.facebook.com/daiokawa
(2014.9.10)