東北をロケする。
「被災地」をロケする。
いまの仕事に絡んでちょっと震災について触れてしまう。
デリケートな話だ。でも、不思議な流れ、ちょっと感動的な流れ、ってあるんだよね。
僕の生まれた街は宮城の気仙沼だ。マグロ船の基地、サンマやフカヒレで有名な巨大な漁港。津波に呑まれ流れ出た重油に引火して火の海、ニュースではその映像が禍々しく目に飛び込んできて、「地獄」とネットで書かれた漁業の街だ。
地震のとき、僕は六本木のミッドタウンにいて、友達がもっているワンセグでTVニュースを観たら津波がクルマを翻弄する映像、そこは僕の実家の前だった。僕の膝は震え、友達の手は震えていた。
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僕は地震のちょっと前から「日本のおいしい食卓へ。近くて便利、セブン-イレブン」をキーワードにブランドコミュニケーションの仕事を始めていた。
忌野清志郎さんが歌うCMはもちろん、全国1万7千店あまりのスタッフが観てこころをひとつにする長尺コンセプト映像も、半年に一度、制作している。
美しい日本を撮る。日本の街を、フツーに暮らす人々を、柔らかな自然を、原風景を、セブン-イレブンを撮影していた。すでに8本を制作していた。
ちなみにあくまでも個人的な感想なんだけど、震災直後、被災を素材にしたCMなどの応援広告が生まれた、
なんとなく僕にはすっきりしなかった。企業が広告するからには、莫大な金額の制作費やメディア費を必要とするわけで、それであるならもっとダイレクトな応援があるのではないか、と思えてしかたがなかった。
さらに僕自身も広告の賞をたくさんいただいてきたから「コツ」みたいのがわかるのだけれど、
そうした社会性のあるテーマは広告賞を「獲りやすい」しね。結局は広告する側の「得」に震災が使われてる気がしたんだけど、どうなんだろうな、よくわからない。
後に、そうした広告に触れて、被災地の人々があたたかな涙を流した、という話も聞いた。
そうした広告は、良いのかそうでないか、正直、僕にはわからない。たぶん、そうした行為が、好きかどうかなんだろうね。
セブン-イレブンという企業もたくさんの被災地支援をしているのだけど、それを表に喧伝するのは「美しい」としない企業だった。とても実質的で、クライアントではあるけど僕の好みだ(笑)。
震災後、3年を経過して、復興熱も平熱になりつつあるいまだからこそ、東北を撮りたかった。気仙沼を撮りたかった。
全国を撮影してきたこのチームが、太平洋側の東北を撮らないのは、もはや不自然でもあるタイミングだしね。
仮設住宅のような非日常も、残念ながら日常になってしまっているこの頃。
全国の撮影地と同じように気負わずひとつの撮影地として接する。
被災地を描きたいのではない。そこに生きる逞しい笑顔を撮りたかったのだ。
そしてこの夏、とうとう撮影隊が東北へ。
そしてロケ史上最悪の天気だった。
(つづく)
●東北を撮ったセブン-イレブン「コンセプト映像」は以下で観られます。
セブン-イレブンHP
僕のフェイスブック
(今回のキーワード)
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そこにしかない
「笑顔」がきっとある。
執筆者プロフィール
永澤仁 Hitoshi Nagasawa
クリエイティブディレクター/run!run!! planning!!! 海の家 店主
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経 歴
セブン-イレブン(忌野清志郎さんが歌うブランドの根幹を担う「近くて便利」コミュニーケーション)、バイク王(雨上がり決死隊バージョン)、キリン氷結(発売から6年間)、シチズン(広告&商品開発)など数々のクリエイティブを責任者として手がけ、そのすべてをジャンプアップさせた実績を持つ。競合プレゼンでは独創的なスタイルで3年半無敗を記録。受賞歴は国内外100以上。強い、正しい、面白い! 国も地域も企業も商品もお店も人も、めざすゆたかな高みへ。
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(2014.11.26)