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◆ 6月は株主総会の季節

 
 3月期決算企業の定時株主総会が数多く開かれる6月。例年、開催が集中するのが「6月最終営業日の前営業日」であり、東京証券取引所の発表によると、今年は6月27日に上場企業の42%が株主総会を開催予定だ。
 
 NISAの導入等により、日本国内でも投資に関する関心が高まっている。株主がインターネットを通して議決権を行使することができるよう配慮する企業も増え、株主総会をインターネット中継する企業も出てきた。これまでは、仕事がある・遠方に住んでいる等の事情で株主総会に参加しづらかった個人投資家も、株主総会での議決権を行使しやすくなれば、単に投資して経済的利益を受けるだけではなく、「企業の株主」としての意識が高まる。
 
 つまり現在は、株主総会のあり方、運営の仕方が旧来の姿から変わろうとする転換点のようなのだ。
 
 

◆社外取締役の選任に向けて

 
 今年の株主総会では「社外取締役の設置」についての議案を取り上げる企業が増えると予想される。これには「海外投資家からの資金調達を円滑にするため」「法制度・上場規定などがその方向へ改正されつつあるため」という2つの理由がある。そしてこの2つは、決して別個の問題ではない。
 
 現在、日本の株式市場には、海外投資家からの資金流入が増加している。東証が平成25年6月20日に発表した「平成24年度株式分布状況調査の調査結果について」で、外国法人等の株式保有比率が前年度に比べて1.7ポイント上昇し、過去最高となったことが明らかにされている。つまり、日本企業は海外投資家の注目を集める経営方針を打ち出さなければ、生き残れないということになる。
 
 そのために日本企業が取り組みたい課題が、社外取締役の設置なのだ。海外の上場企業は、経営の監督者にあたる人間の独立性を高く保つことが求められているのに対し、日本では内部昇進者を中心に取締役会が構成されることが多い。経営の透明性が低いと見られがちであった日本の企業も、海外投資家が資金投入をためらうことのないよう、社外取締役を設置し、経営の透明性を高めることが求められる。
 
 東京証券取引所も、上場企業に社外取締役の導入を促す方針を明確にしている。平成26年1月6日に導入した「JPX日経インデックス400」の構成銘柄の選定において「複数の独立社外取締役を選任、国際会計基準(IFRS)の適用、決算情報英文資料のTDnet(英文資料配信サービス)を通じた開示」を満たす銘柄が優遇されることとした。さらに東証は平成26年2月5日、「独立性の高い社外取締役の確保に係る有価証券上場規程の一部改正について」を発表し、「上場会社は、取締役である独立役員を少なくとも1 名以上確保するよう努めなければならない」と規定を改正することとなった。
 
 

◆会社法改正の動向

 
 社外取締役の選任については、今後の会社法の改正で法的に義務付けられる可能性もある。法相の諮問機関である「法制審議会」の会社法制部会は、企業統治を強化するための社外取締役設置の必要性について、検討を重ねてきた。背景としては、2011年のオリンパスによる損失隠し事件や、大王製紙会長の特別背任事件などの不祥事、さらには昨年の、大手証券会社が複数関わり、日本の市場の信頼性が損なわれたとされる増資インサイダー問題などがある。
 
 しかし、平成25年11月29日に会社法改正案が閣議決定された時点では、社外取締役選任の義務化は見送られた。経済界の反発に配慮した結果である。ただし、同改正案の附則において「法施行の2年後に、義務付けをあらためて検討すること」が盛り込まれた。さらに、社外取締役を設置しない場合には「社外取締役を置くことが相当でない理由」を、各事業年度の事情に基づいて事業報告書に記載させること、株主総会に社外取締役を含まない選任議案を提出する際にも、同様にその理由を説明させることなどが盛り込まれている。
 
 この法案は、閣議決定の時点で国会会期末が迫り成立には至らなかったため、平成26年の通常国会に再提出されている。また、平成26年4月10日、民主党が「政府案では企業統治を強化する目的に照らして不十分」として、社外取締役の設置を義務付ける民主党案を提出している。
 
 
 

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