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日本は世界有数の災害発生国
チリ大地震は「対岸の火事」ではない

 
 前回の原稿を書いた直後の2月27日、南米チリ沿岸でマグニチュード8.8の大地震が発生した。その影響で日本に押し寄せた津波で、三陸沿岸のホタテやコンブ、ノリなどの養殖施設に被害が出た。宮城、岩手両県で漁業被害額(速報値) は計20億円を突破した。再出荷まで数年かかる海産物も少なくなく、その後の農水省の発表では、被害が確認された青森・岩手・宮城・福島・神奈川・三重・徳島・高知の8県の被害額は59億円に上った。
 地元では、28日朝の大津波警報発令まで津波の規模の予測がつかなかったことから、時間的に養殖棚を移動させるのは無理で、対応の取りようがなかったそうだ。
 チリの沖合で発生した津波が日本に到達することは決して珍しいことではない。天正14年(なんと安土桃山時代の1586年)にも、貞享4年(1687年)にも、享保15年(1730年) と天保8年(1837年) にも、明治元年と明治10年、大正11年にも見られたのだという。こうなると、チリの地震を 「対岸の火事」 として眺めているわけにはいかない。
 「平成21年版防災白書」 を見ると、日本は世界でも有数の災害発生国であることがわかる。
 例えば、全世界に占める日本の災害発生の割合は、マグニチュード6以上の地震回数が20.8%(1999年から2008年の合計)、活火山数が7.0%(過去およそ1万年以内に噴火した火山等)、災害死者数が0.4%(1978年から2007年の合計)、災害被害額は13.4%(1978年から2007年の合計)となっているのだ。日本の国土面積が世界の0.25%しかないことから考えると、日本の災害発生率は非常に高いことがわかる。日本は、災害に対する対応策を他国よりも積極的に取り組む必要があると改めて思う。
 大規模災害が発生すると、企業に与える影響は大きい。1995年の阪神・淡路大震災では、商工分野における直接被害は6300億円にも上った。製品出荷額は2003年に底となり、その後回復のきざしを見せたが、それまでは、震災の2年前の1993年を下回る水準でしか推移しなかった。そして、従業員4人以上29人以下の事業所の製品出荷額は、未だに1993年を下回る水準に留まっている。兵庫県の事業所も、1993年比で2007年には42.3%も減少している。震災からの産業復興がいかに困難であるかを示す数字である。
 政府の地震調査委員会は、今後30年以内に東海地震が発生する確率は87%、東南海、南海地震は60~70%の確率で発生すると予測している。中央防災会議による、東海、東南海、南海地震が同時発生した場合の被害想定によると、死者は2万4700人、震度7の揺れと10メートルを超える津波で約96万棟の住宅が全壊し、経済被害は810兆円に上るという。
 これらのデータを受け、中央防災会議で平成17、18年に策定された 「地震防災戦略」 には、企業のBCPへの取り組みを促進させる目標が掲げられた。それによると、今後10年間で、大企業のほぼ全て、中堅企業の過半にBCPの策定を完了させるよう目指すという。しかし、中小企業に関する具体的な目標は明らかにされていない。内閣府、経済産業省、中小企業庁など国や各地方自治体、NPO法人事業継続推進機構や東京商工会議所などから中小企業向けのガイドラインが出されているものの、中小企業へのBCP導入は遅々として進んでいないのだ。
 
 

大阪の中小製造業の特徴と実態が浮き彫りに

 
 中小企業のBCPへの取り組みの実態はどうなっているのだろう。そう思っているところへ実にタイミング良く、大阪府立産業開発研究所(4月より大阪産業経済リサーチセンターに再編) から 「大阪府内の中小製造業の防災と事業継続に関する調査報告書」 が発表になった。昨2009年の8~9月にかけ、大阪府内の製造業に属する、従業員数が50人以上299人以下の企業を対象に調査したものだ(調査票の配布先2007社中、有効回答数は576社=有効回答率28.7%)。
 阪神・淡路大震災を経験した大阪府の中小企業が、災害の発生についてどのように認識し、防災や災害発生時の事業継続についてどのように取り組んでいるか、策定済みの企業の取り組みを紹介するなど、きめ細かくユニークな報告書となっている。
 調査で明らかになったことを次ページに列記してみる。
 
 
 

BCP 事業継続計画 古俣愼吾

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