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ノウハウ 木村尚義の「実践! ラテラルシンキング塾」 第7回 ラテラルシンキングを日常に応用するコツ その2「抽象化」 木村尚義の「実践! ラテラルシンキング塾」 創客営業研究所代表・企業研修コンサルタント

ノウハウ

第7回 ラテラルシンキングを日常に応用するコツ その2「抽象化」

 
 
こんにちは。木村尚義です。ロジカルシンキングと対になるラテラルシンキング。前回はラテラルシンキングを使えるようになるための3つのコツの1つ目を紹介しました。今回は2つ目、「抽象化」です。
 
まずは恒例の謎かけです。
 
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どうすれば水を早く氷にできるのか!?(切実)
問題その7【水を最も早く簡単に氷にする方法】
水を最も早く簡単に氷にする方法を考えてください。気温16℃の時100ccの水が摂氏0℃になったら凍るものとします。
 
 

抽象化すればAKB48と笑点は同じ?

 
AKB48は、ご存じの通りアイドルグループですね。でも、従来のアイドルとはちょっと違う仕組みを採用しています。
 
アイドルといえば、事務所は莫大なお金をかけてプロモーションをします。ところが、アイドルには問題が。とりわけ女性アイドルは年齢が大事。アイドルが母親くらいの年齢だと・・・。他にも、メンバーが移籍したり、結婚したりしてしまうかもしれません。せっかくお金をかけてプロモートしたのに、これからという時に解散してしまえば、事務所にとっては大問題です。いったい、どうすればいいでしょう?
 
この解決策はテレビ番組の『笑点』にありました。日本で知らない人はいないであろう長寿番組の『笑点』です。では、『笑点』が長寿番組でいられるのにはどんな秘密があるのでしょうか?
 
秘密は「メンバーが抜けたら別のメンバーが抜擢される」ということです。これなら解散せずとも継続できます。この仕組みをアイドルグループに当てはめればどうでしょう。メンバーが抜けることを“卒業”と命名すれば、後ろ向きのイメージも払拭できます。
 
懸念は落語家と違って、経験のないメンバーをいきなり第一線には抜擢できないこと。そこで、ステージに立てるまで研究生としてレッスンします。これがAKB48の仕組みです。メンバーの固定制をやめて昇格と卒業を繰り返すことで 、笑点のように長寿になれるかもしれません。
 
 

たとえ話は抽象化スキルの1つ

 
抽象化とは、物事の本質を取り出して別の物事に当てはめるスキルです。本質というと難しそうに感じますけれど、両方の「共通点」だと考えてください。
 
「この人はたとえ話がうまいなぁ!」と思ったらその人は間違いなく抽象化の達人です。物事の共通点をよくとらえて、聞き手が知っている別の事柄に置き換えられるからです。
 
笑点名物の大喜利の謎解きも抽象化を使っています。謎解きは対象同士が遠ければ遠いほど抽象化の度合いも高く、意外な共通点、オチに興味を惹かれます。
 
例えば、こんな謎解き、いかがでしょう。
ベンチャービジネスとかけて、梅干しと解く。
その心は・・・
どちらもスッパイが付きものです。
・・・お後がよろしいようで。
 
 

抽象化をビジネスに使う

 
抽象化は空撮画像を読み解くことにもよく似ています。最近はグーグルマップなどで手軽に空撮画像を鑑賞できるようになってきました。空撮画像に見慣れてくると空港や漁港に繁華街、住宅地と田畑などなど。それぞれの違いがパッと見ただけでわかるようになってきます。ここではビジネス視点、「もしも、あなたがマンションデベロッパーだったら」という妄想で空撮を見てみましょう。
 
以前に大きな儲けにつながった地形と、よく似た地形が見えてきました。とりわけ湾岸はベイエリアなどと呼ばれて人気です。大型ショッピングモールとタワーマンションをつくれば高値で売れそうです。
 
そこで疑問に思います。では、なぜ、いままで他のマンションデベロッパーは手を付けていないのか?
 
地形をよく見れば、市街地とベイエリアが川で分断されているではありませんか。近くには橋もありません。だから、他のデベロッパーは手を出していないのですね。
 
でも、ラテラルシンキングの心得のあるあなたでしたら、絶好の好機だと気が付きます。橋さえあれば、儲けられる商業地と同じ地形なのですから。
 
そこで、あらかじめショッピングモールとマンション用地を安く手に入れます。その後、橋をつくればいいのです。一帯の不動産価値はぐっと上がるでしょう。他のデベロッパーが悔しがる顔が目に浮かぶようです。
 
 

鎌倉山が高級別荘地になった理由は抽象化

 
現実は、そんなうまくいきっこない? そんなことはありません。実例があります。鎌倉山が高級住宅地になった由来を紹介しましょう。昭和初期に菅原通済(すがわら つうさい)という実業家が使った抽象化です。
 
通済は、ドイツの貿易商クルト・マイスナーから鎌倉は景観がよいという話を耳にします。マイスナーは世界のあちこちを旅しているでしょうから、鎌倉はグローバルに通用する景勝地だというお墨付きをもらったことに。そこで通済はこの地を鎌倉山と名付け別荘地として売り出しました。
 
ただし、1つだけ問題が。交通の便が悪いのです。もし、道路さえ整備できればにぎわうでしょう。そこで、道路会社を株主にして、お金持ちに優先分譲しようと考えました。しかも、500坪以上の購入が条件。それでもお金を持っている人は持っているものです。強気の価格にもかかわらず、政財界の重鎮が競って土地を買い求めました。その結果、道路も整備され、鎌倉山といえば現在でも高級別荘地の代名詞となったのです。
 
 
【水を最も早く簡単に氷にする方法】答え
水に「‵」を付けましょう。水と氷の共通点は「水」で、違いは「‵」だけですよね。
 
次回は「意外と簡単!? 逆転の発想を身に付ける方法」です。
 
 
木村尚義の「実践! ラテラルシンキング塾」
第7回 ラテラルシンキングを日常に応用するコツ その2「抽象化」
 

 執筆者プロフィール  

木村尚義(Kimura Naoyoshi)

創客営業研究所代表・企業研修コンサルタント

 経 歴  

日本一ラテラルシンキング(水平思考)関連書を執筆している著者。1962年生まれ。流通経済大学卒業後、ソフトハウスを経てOA機器販社に入社。不採算店舗の再建を任され、逆転の発想を駆使して売り上げを5倍に改善する。その後、IT教育会社に転職、研修講師としてのスキルを磨く。自身が30年以上研究している、既成概念にとらわれずにアイデアを発想する思考法を企業に提供し好評を得ている。また、銀行、商社、通信会社、保険会社、自治体などに「発想法研修」を提供している。遊ぶだけで頭がよくなる強制発想ゲーム「フラッシュ@ブレイン」の考案者。著書に、『ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門』(あさ出版)、『ひらめく人の思考術 物語で身につくラテラル・シンキング』(早川書房)など多数。

 オフィシャルホームページ 

   http://www.soeiken.net/
 
 
(2016.11.30)
 
 
 
 

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