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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

 
 
  日頃のメンタルトレーニングで成果を残してきたという中村さん。常に心身のコントロールを心がけていたとはいえ、やはり思うように調子が出ない時もあっただろう。そんな時はどう対処していたのか聞いてみたところ、一風変わった独自の調整方法を教えてくれた。
 
 

信念と精神力で乗り越えた故障時

 
バッティングが上手くいかない時は、ゴルフに行っていました(笑)。だいたいいつも、週末にかけて1週間の疲れが出てきて、調子が崩れ始めてくるんです。なので移動日か休みの月曜にゴルフの予約を入れて、18ホール歩きながら気分をリフレッシュ。でもそれは気分転換のためだけではなくて、実は何気なくドライバーを振ると、自分のバッティングの調子がわかるんですよ。18ホール目をプレーする頃には、「この感じで振れば、ボールが真っ直ぐ飛ぶんだ」と気付けるようになる。そうやって感覚を掴んでから火曜日にバットを振ると、これがまたよく飛んで、ホームランが打てるんです(笑)。だから火曜日に調子が良いと、決まって周りの人たちからは「ノリ、ゴルフ行ったやろ」なんて言われていましたね。そんなやり方で調整する人は周りでは僕ぐらい(笑)。でも自分にとっては気分転換もできてボールが飛ぶ感覚も掴める、一石二鳥の良い方法でした。
 
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そうやって少しバッティングの調子が悪い時はゴルフで整えていましたが、故障した時ばかりはどうしようもないので、本当に辛かったですね。僕は23年間で手首を5回、膝を1回手術しているんです。特に手首はバッティングに直接影響が出るところなので、なんとか自分をだましながらバットを振っていたものの、あれは相当痛かった。それから一度、腰を骨折したこともあります。朝起きても10分くらいは起き上がれないし、トイレに行くのも這いずって行かないといけないほど。それくらい生活に支障が出ていたのに、なぜかひとたびユニフォームを着るとアドレナリンが出て、球場では立っていられたんですよ(笑)。監督も周りの選手も、誰も僕が骨折してることなんか気付かないくらいの振る舞いができていました。でも練習が終わって家に帰ると、支えがなければ立てなくて。それを見た妻は「そんな状態で野球してるなんて、あなたは何なん!?」とびっくりしてましたね(笑)。それだけの痛みの中でもプレーできたのは、やっぱり野球が好きだから。それにプレー一つひとつを見届けてくれるファンがいたからです。そんなファンの前でしょうもない姿は見せられないし、そもそもプロとして「グラウンド上ではカッコ悪い姿は見せない」と決めていたので、その一心で痛みや自分自身と闘ってきました。
 
 
そうして数々の試練を並々ならぬ努力と精神力で乗り越えてきた中村さんが、プレーに対する考えを変えた時期があるという。その転換期についても聞いてみた。
 
 

プロとしてのマインドが変わった転換期

 
僕のプレーに対するマインドが変わり始めたのは、2000年頃。それまでは球団の一軍に定着するために、とにかく自分自身良い成績を残さなければ、と必死でした。毎回、ホームランを狙ってはフルスイングしていましたね。でも2000年にシドニーオリンピックに日本代表として出た時に、今までより一層「チームで勝たなあかん!」という意識が働いたんです。日本の国旗を背負っているのはもちろん、シドニーは初めてプロ選手が参加した大会でもあったので、試合の展開を読んで「こういう戦況の時はこうプレーするんや」というのをアマチュア選手たちに見せる必要もあった。結果は悔しいことに4位に終わったものの、そこからだんだんと全体の展開を見るようになったし、チームで勝つためにはどうすればいいのかわかるようになりましたね。そうした心がけが功を奏したのか、その年には本塁打王と打点王の2冠を獲得。そして2001年には近鉄バファローズ12年ぶりのパ・リーグ優勝を果たしました。
 
それからは思うような結果を残せず、いくつかの球団を経て、2007年に中日ドラゴンズに入団。そこでは2年間にわたって“本当の野球とは何か”を学ばせていただきました。特に期待値の高い選手を確保するための育成枠で入った時は、メンバーを納得させるバッティングや守備をするために、それまで以上に必死で練習しましたね。ドラゴンズは強いチームなだけに、誰かがちょっとミスをしただけで負けてしまうこともある。その分気を引き締めてプレーするよう心がけていたんです。それだけの気概で試合に臨んでいたからこそ、同じ年にドラゴンズが日本一になり、僕自身日本シリーズMVPを獲ることができたんだと思います。その後も球団を渡り歩く中で、常にチームのために自分がどうすべきかを、より考えるようになりました。
 
 
 
 
 

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