あらゆるもの、つまり人だけでなく、もの、出来事と、どんな対象についてもほめることができる「ほめ達!」は、その対象が持つ素晴らしい価値を見つけて伝えてあげられる人です。
そう、「ほめ達!」は価値発見の達人なのです。
「ほめ達!」になると、どんな良いことがあるか――。魅力ある人物になってモテるようになりますし、もちろん、ビジネスでも結果を残せる人材になれます。なぜそうなれるのか? それはこの連載を毎月読んでいただければわかるはず。連載を通じて皆さんに、「ほめ達!」への道を指南します。
シンプルなほめ言葉、「3S」!
ではさっそく、簡単かつ実用的なほめ言葉をご紹介しましょう。その言葉とは、「すごい」「さすが」「素晴らしい」――この3つ。実にシンプルですね。まずはこの言葉を口癖にしてください。ポジティブな言葉は、無意識にポンポンと出てくるよう習慣にすべきです。相手をほめる理由がないから口にできない? いえ、まずは口に出すことです。ほめる理由は口にしてから考えればいいんですよ。
この3つの言葉「3S(スリーエス)」が、相手により伝わりやすくなる方法もお教えします。例えば部下が企画書を提出しに来た状況をイメージしてください。あなたは部下の企画書に目を通しつつ、相手に聞こえるか聞こえないかという絶妙な声量で、「これは、すごい・・・!」という感じに、独り言のように囁くのです。これだけでも相手の心に、ばっちり伝わるはずです。この3Sに女性の方は「素敵」を加えてもいいですね。
ときには、部下の企画書が的外れで、「何を考えているんだ、全然違う!」と言いたくなることもあると思います。でも、そんな言い方をしたら相手の心が折れてしまうかも。そんなときに使うべき言葉は、「そう来るか!」もしくは「そっちか!」。これです。相手はこちらが期待していないものを提出したことに気付くでしょう。でも、傷つくことはないはずです。むしろ、上司にはできない発想の企画ができて、嬉しいとさえ思うかもしれません。
さらにもう1つ、どうしても相手をほめられない、ほめたいけど直してほしいことがあるときは最初に、「惜しい!」と言うんです。例えば自分が求めていた水準の20%しか満たしていない企画書だったとしても、「惜しいなぁ!」と言ってあげてください。相手はきっと、「惜しいのなら、それなりの完成度ではあるらしい」と思うはず。そこで、指摘したいこと、アドバイスしたい言葉を続ければいいのです。そうすれば、相手も聞く耳をもってくれるでしょう。なぜ続きを聞く気になるのか? 先に認める発言をしているので、ネガティブな内容にはならないだろうと相手が予測するからです。しかも、認めてもらっている範囲での指摘ですから、直すのにさほど労力がかからないだろうという期待もする。
叱っても信頼される「ほめ達!」になろう
「ほめ達!」は相手を叱ることを否定しません。怒りの感情が湧くことがあるのも当然だと思います。例えば上司が部下とコミュニケーションをとるとき、相手に目指すべき明確な目標を立ててもらうと仮定します。その目標を部下に達成してもらいたい、成長してもらいたいと本気で思っている上司であれば、部下に対して感情が動くことはあるものですからね。
でも、そのときに大事なのは、自分が相手にとって、尊敬に値する人物であるかどうかです。これは上司と部下に限らず、どんな関係においてもそうです。「あなたに叱られてもむかつくだけだし、ほめられたって嬉しくもない」と思われてはだめですよね。たとえ叱られても、「この人は自分のことを根本で認めてくれている」と信頼を得ていなければ、どんな言葉も相手には届きません。
だからこそ、「ほめ達!」になったほうがいいのです。先ほど「ほめ達!」になればモテると言いました。それは、「ほめ達!」になることを目指す活動が、人間力が高まり魅力が増すことにつながるものだからです。
ほめるのは「他人のため」ではない
皆さんは、ほめることは他人のために行う行為だと思うかもしれません。でもそれは違います。実は、他人をほめるのは自分のためにすることなのです。「ほめるは人のためならず」です。私は、人間同士には絶望的な隔たりがあって、それぞれが孤立した存在であると考えています。そう簡単にわかえりあえるものではないのです。でも、考えが合わないからと言って、相手が間違っているとは断言できません。それは単に、個性の違いなのですから。
と言うことで、「ほめ達!」になって人をほめることは相手のためではないのです。ピンチのときもポジティブに物事を考えられる人物になるため、自分の心を守るため、そして自分自身を高めるための行為なのです。
そうやって今以上に魅力ある人物に成長した皆さんが、他人のいいところをほめる。すると相手も喜んでくれる。あなたも嬉しいし、あなたにほめられるとみんなも嬉しくなる。それが「ほめ達」の理想の姿です。
今の日本は、年間2万人を超える自殺者が続く異常な事態に陥っています。物理的な戦争をしていないとは言え、これはまさに「心の内戦」ともいえる状態です。そんな時代の中で、皆さんには社会を取り巻く闇を照らす、灯火になってほしい。魅力的な人が増えれば、社会は平和でより暮らしやすくなるはずです。
皆さんも「ほめ達!」を通じて、仕事の達人、人生の達人になってください! また来月、お会いしましょう。
ほめる達人、西村貴好の「ほめるは人のためならず」
第1回 ほめる達人とは?
第1回 ほめる達人とは?
著者プロフィール
西村 貴好 Nishimura Takayoshi
一般社団法人日本ほめる達人協会 理事長
経 歴
1968年生まれ。大阪府出身の「泣く子もほめる!」ほめる達人。ホテルを経営する家の3代目として生まれ、経営術を学びつつ育つ。関西大学法学部卒業後、大手不動産に入社して最年少トップセールスを樹立。その後、家業のホテルを継いで経験を積み、2005年に覆面調査会社「C’s」を創業する。短所ではなく長所を指摘することが調査対象の企業成長に効果があると発見し、「ほめる」ことの重要性に気付く。数々の実績を上げる中で、2010年2月に「ほめ達!」検定を実施する、一般社団法人日本ほめる達人協会を設立し、理事長に就任。以降、検定を通じて「ほめ達!」の伝播に尽力している。著書に『繁盛店の「ほめる」仕組み』(同文舘出版)、『ほめる生き方』(マガジンハウス)、『心をひらく「ほめグセ」の魔法』(経済界)、『泣く子もほめる!「ほめ達」の魔法』(経済界)、『人に好かれる話し方41』(三笠書房)などがある。
日本ほめる達人協会オフィシャルサイト
西村貴好オフィシャルブログ
http://ameblo.jp/nishitaka217/
フェイスブック
(2016.10.21)
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