B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

トピックスTOPICS

繁盛請負人・佐藤勝人の時事国々リポート vol.33 変わるアメリカ、変わらない日本

ビジネス 繁盛請負人・佐藤勝人の時事国々リポート vol.33 変わるアメリカ、変わらない日本 繁盛請負人・佐藤勝人の時事国々リポート 商業経営コンサルタント/サトーカメラ代表取締役副社長

ビジネス
こんにちは、佐藤勝人です。今回は6月下旬にニューヨークに行ったときの話をしようと思います。というのも、変わるアメリカと変わらない日本の差をあまりに感じたから。21日には選挙もあるというのに、いつまでたっても政治は官僚主義のままで、経営者の意識も官僚的な性悪説に依拠している。これで本当にいいんですか、と言いたいよ。
 
 

「自分はアメリカ的な視点になろう」と決めた
6月下旬の東海岸商業視察セミナー

 
glay-s1top.jpg
Dean & DeLuca店内。人も什器もカッコいい
今回の視察セミナーで私は、自分はアメリカ的な考えが好きなんだなあと、つくづく思った。どういうところがって、弱い人たちのこともちゃんと考えるところが。アメリカの人たちのほうがよっぽど“人間”を見ているよ。日本よりも。
 
日本は基本的に平等だと思われている。思っているのは他でもない、日本人自身だ。だから、今現在弱い立場で苦しんでいる人が目の前にいても、できないお前が悪い、努力が足りない、好きなことをやれ、這い上がれ、なんてことを誰にでも平気で言う。「社会が平等なんだから個人で差が出るのは本人の努力が足りないせい」という論理をみんなで信じている。
 
そして経営者たちは、この短絡的な論理が社会通念になっている限り、「できない人を育てる」とか「弱い人たちのことも考える」という、力のある人が当然感じるはずの責務を免責される。そして責務を逃れることで出たに過ぎない利益を金融機関や株主に見せて褒められて、70になったら雇われ社長を引退して一丁あがりだ。民族が同じで、誰でも日本語が話せて、受けてきた教育もほぼ共通という前提だからこうなる。実態はもはや違うのに。
 
これがアメリカだと、国に移住したばかりの人もいるし、そういう人は英語を話せないし、教育だってバラバラだ。つまり、本人の能力と関係なく弱い立場になる人が一定数いる、という前提がみんなに共有されている。事実として社会は不平等なものだとわかっている。
 
するとどうなるか。強い人たちが弱い人たちのこともちゃんと考えるようになるんだよね。
 
 

Amazon GOへの市民の目線と
Amazonのフォロー対応

 
今回特にそれを感じたことが2つあった。一つはAmazonGOへのニューヨーカーの反応だ。
 
AmazonGOは日本では無人店の先駆けとして、ITを駆使した新時代の店舗として好意的にとらえられている。でも、Amazonの母国であるアメリカでは、あまりいい雰囲気ではとらえられていない。現地でガイドさんと話していてその理由がわかった。一般の市民たちは「そこまでして労働者階級から働く場所を奪って、どうするんだ?」と思っているんだよ。
 
AmazonGOが最近になって追加で現金でも支払いができるようになったけど、Amazonがあれをやった理由も似た文脈で理解できる。ご存じのとおりアメリカはカード社会だ。買い物の9割はクレジットカードで支払いをする。一方で、カード利用歴がなかったり、そもそもクレジットカードをつくれなかったりする貧困層の人たちがいる。
 
そういうときアメリカは、その人たちを無視するのではなく、その人たちも市民ですよね、という立場をとる。またその人たちの側からも、「俺たちだって市民だぞ!」という主張が上がる。だからAmazonは当初キャッシュレス店舗だったAmazonGOに現金決済のシステムを入れたんだ。これが「強い人が弱い人のことも考える」というアメリカらしさを感じたことの一つだ。
 
 

現場で働く人たちが
めちゃカッコよくなっていた!

 
もう一つは、スーパーの店員のような普通の現場で働く人たちがめちゃカッコよくなっていたことだ。何年か前までは、労働集約型ビジネスの現場は張り合いのなさそうな顔で突っ立っているだけの給料泥棒みたいな従業員がたくさんいた。でも、今は違う。
 
特に印象的だったのがDean & DeLuca(ディーン・アンド・デルーカ)だ。日本にも展開している食品スーパーで、発祥の地のニューヨークで新しいタイプの店を出したと聞いたから見に行った。そしたら・・・考えたよねぇ、惣菜専門の店なんだけど、惣菜コーナーの壁をガラス張りにして、厨房を外の客が丸見えで見られるようにしていた。中のスタッフはみんな清潔なユニフォームをピシッと着て、テキパキと調理をこなしている。バイキングのセルフスタイルが当たり前の時代にあえて客の注文を聞くコーナーを設けてスタッフを配置している。やってることは言われた品をコミュニケーションを交わしながら容器に盛り付けて渡すだけなんだけど、その手際がなんともいえず洗練されていて、めちゃカッコいい。
 
なんだろう、なにが彼らを変えたんだろう、としばらく考えて気付いた。テクノロジーを活かして仕組み的に考える“科学する姿勢”が、日本の企業とはやっぱり違うんだよね。
 
日本では労働集約型ビジネスの現場管理に科学を取り入れるときは「見張り」を目的にする。性悪説に立った、企業が労働者を監視するための視線の使い方だ。それに対してアメリカは、労働者が現場で働く場を設け、しかもテンションを上げて働けるようにするために科学を使う。つまり、視線は視線でも、機械(=監視カメラ)の冷たい視線ではなく、人間(=オーディエンス)のホットな視線を使う。
 
ガラス張りにすることでお客さんはスタッフの動きをエンターテインメントとして鑑賞できる。それがカッコよければSNSで動画が拡散されてファンが付くことだってある。SNSだから当然彼ら自身もそれを見ている。グーグルマップやフェイスブックページで直に評価されれば素直に嬉しい。もっと頑張ろうという気になる。その結果、今まで厨房の奥で「どうせ俺らは労働者だ、誰も俺らのことなんか気にかけちゃいない」と思っていた人たちが、働く喜びを感じるようになった。彼らの労働の価値をテクノロジーが表に引っ張り出したんだよ。だからあんなにカッコよく変われたんだ。
 
 

人間を喜ばせられるのは人間
トップがそれをわかっているか

 
私が思うに、Dean & DeLucaの経営陣はあれを意図してやったはずだ。人間のお客さんを喜ばせられるのは人間のスタッフだということをちゃんとわかっているんだ。私がよくたとえに出すじゃないか。キャバクラでタブレットを渡されてバーチャルキャストと遊んだって楽しくないんだよ(笑)。リアルな、隣に座ったら体温も伝わってくる人間の女の子がちゃんと迎えてくれないと。野球だってそうだよ。生身の選手が汗を飛ばしてプレーをするから球場まで見に行くのであって、あれがロボットだったら誰も見に行かないよ。
 
アメリカが偉いのは、企業経営者のような強い立場の人たちが人間の労働の価値をリスペクトして、人間が働く場所をちゃんと創出しているところだと思う。また市民の側も、野球でいえばカッコイイ主役はあくまでも選手であって、球団オーナーが主役なわけじゃないとハッキリさせているところが偉い。昔日本の某球団のオーナーが「選手ごときが」という発言をしたけれど、あんなに人間の価値をさげすんだ言葉はないと思う。アメリカであれを言ったらどんな経営者も社会的制裁で終わりですよ。
 
6月17日のブログで書いた通り、日本は何でもかんでも無人化に進んでいるからこそ、私は性善説にもとづき、テクノロジーを使って、労働集約型ビジネスを極めていくつもりだ。人を喜ばせることができるのは人。その環境をつくるのがトップの責任だ。力がない人を自己責任論で切り捨てる社会に未来はない。アメリカの変化を肌で感じて、あらためてそう思います。
 
7月17日~8月31日までの勝人塾
■7月25日 第37回おおさか勝人塾
事務局/経営コンサルティングアソシエーション
https://www.facebook.com/events/2365746673637203/
 
■7月26日 第16回とうほく勝人塾
事務局/やまはる
https://www.facebook.com/events/2438141022890299/
 
■8月7日 第73回とちぎ勝人塾
事務局/日本販売促進研究所
https://www.facebook.com/events/901791873497617/
 
■8月21日 第1回おかざき勝人塾
事務局/岡崎商工会議所
 
■8月23日 日経トップリーダー「社長力アップ講座」
事務局/日経BP
https://www.nikkeibp.co.jp/seminar/atcl/vs/nv_190823/
 
■8月26日 第31回わかやま勝人塾
事務局/藤原農機
https://www.facebook.com/events/468337037319707/
 
第12回「ニコニコチャンネル ニッポン勝人塾」(7/22 15:00 – 16:00)の告知
 
 
 
■講演依頼・セミナー依頼
個別支援等々佐藤勝人への問合せは
https://jspl.co.jp/contact/
 
繁盛請負人・佐藤勝人の時事国々リポート
vol.33 変わるアメリカ、変わらない日本

 著者プロフィール  

佐藤 勝人 Katsuhito Sato

サトーカメラ株式会社・代表取締役副社長/日本販売促進研究所・商業経営コンサルタント/想道美留(上海)有限公司・チーフコンサルタント/作新学院大学・客員教授/宇都宮メディアアーツ専門学校・特別講師

 経 歴  

1964年栃木県宇都宮市生まれ。1988年、兄弟とともに家業のカメラ店をカメラ専門チェーン店に業態転換させ、商圏をあえて栃木県内に絞ることにより、大手に負けない経営の差別化を図った。以来、「想い出をキレイに一生残すために」というコンセプトを追求し続けて県内に18店舗を展開。同時におちこぼれ社員たちを再生させる手腕にも評価が高まり、全国から経営者や幹部リーダーたちが同社を視察に訪れている。2015年からはキャノン中国とコンサルティング契約を結び、現場の人材育成の指導にあたる。主な著書に『売れない時代はチラシで売れ』『エキサイティングに売れ』(以上同文館出版)『日本でいちばん楽しそうな社員たち』(アスコム)『一点集中で中小店は必ず勝てる』(商業界)『断トツに勝つ人の地域一番化戦略』(商業界)など。新刊の『モノが売れない時代の「繁盛」のつくり方』(同文舘出版)が好評発売中。

 オフィシャルサイト 

http://satokatsuhito.com/

 オフィシャルフェイスブック 

https://www.facebook.com/katsuhito.sato.3?fref=ts

 サトーカメラオフィシャルサイト 

http://satocame.com/

 
 
(2019.07.17)
 

関連記事

最新トピックス記事

カテゴリ

バックナンバー

コラムニスト一覧

最新記事

話題の記事