2017年の正月からの変化
そうしたら、今年は全体的にどの店も良かったんだよね。特に元旦に行った大田原浅香店は良かった。天井からでかい黒板を何枚も吊り下げて、ニューヨークのアパレルショップを彷彿させる大迫力のチョークアート! 写真出るかな。これ、私は指示も何もしてなくて、アソシエイトが自発的につくったんだよ。しかもDIY。メチャいいでしょ。
でもさ、去年までは全然こうじゃなかった(笑)。どの店も「わかってねえなぁ」と感じることばかり目に付いて、ブチ切れてた。それが全体的に変わったから、「なんでだ? この一年で何があった?」と思い返したら、私たち幹部連中が情報共有の仕方を変えてたんだよね。
サトーカメラでは役員からアソシエイトまで全員が見られる社内用のフェイスブックグループがいくつかあって、私も国内外視察中に目に付いた内装とか商品の陳列とかを「売り場」のグループに写真や動画であげて共有しています。ただ、以前はその共有の仕方が、特に店長に向けては「ああしろ、こうしろ」と指示型になっていたんだよね。去年の正月にそれに気付いて、2017年は意識して共有の仕方を変えた。指示型を止めるようにした。それで1年経ったら現場が成長していた。社内フェイスブックをザーッとさかのぼって見て、初めてそのことを思い出した。
自分で考えられる人間に育てる
私思うんだけど、よくコミュニケーションが大事だ、コミュニケーションを増やせ、って言うじゃない。でも、コミュニケーションって意思の疎通なんだよね。だから相手もある程度のレベルじゃないと疎通なんてできない。そのレベルに達するには、つまり成長するためには、自分の頭で考える癖が身に着かないといけない。
先日の店長会議の時だ。いろんな議論をしたなかで、「わからないことはすぐ聞く」という話が出た。それで思ったんだが、確かに今はネット検索もあるから調べたり聞いたりは便利ですぐできるけど、便利すぎて、自分の頭で考えるより先にすぐ調べちゃってないか?
何かを調べるとか人に聞くとか、それらは本来、自分で考える素になる情報なり材料なりを得るための行動であって、自分で考えもせずにいきなりどこかから答えを見つけてくることとは違うはずだ。
そう思ってふりかえると、去年の正月までは店長やアソシエイトに対して私も、「わからないことはすぐ聞け、こうしろ、ああしろ」というふうに指導してしまっていたんじゃないか。それじゃいけないと頭ではわかっているが、できないのを見るとついイライラするから、そうなってしまっていたんじゃないか。
だから結局、相手が成長するとかしないとかも、教育する側の成長次第なんだと思う。社員が成長しないのは自分が成長していないから。社員の出来不出来は自分の出来不出来。よく言うじゃないか、社員が起こした不祥事に対して、社長が「全て私の不徳の致すところです」って。あれですよ。
指導する側も評価されている
怖いよね~。誰かを教育したり指導したりするのってホント怖い。そういえば年末に行った指導先でも、ある人が言ったたった一言で、そのことを思い知らされたんだった。
その人とは知り合って6年ぐらいで、今は勝人塾の事務局もしてくださっている。その指導先はその人以外もこの3~4年でみんなすごく成長していて、年末に私が「会社も皆さんも成長してますね」と感想を言ったら、その人は「佐藤さんもメチャ成長してるよ」とおっしゃった。
私は咄嗟に、「怖え~」と思った。それから「そうだよな」と納得した。考えてみたらコンサルタントだって、指導先から常に評価されているんだ。特に私は自分の方針で年間契約は余り結ばないようにしているから、「この先生ダメだ」と思われたらあっさり切られてしまう。だから常に勉強、勉強。どこに行っても、誰からも学ぶことだ。
スチューレオナルドのルール再び
「常に勉強。誰からも学べ」――私のような商業者がこの教えを実践できる一番の相手は、やっぱりお客さんです。そしてお客さんに学ぶ姿勢を教えられたのが、第7回でも紹介したアメリカの地域密着型スーパーマーケット「STEW LEONARD's(スチューレオナルド)」です。
スチューの店を初めて訪れたのは、確か2003年。行って「1:お客様はいつも正しい」「2:お客様が間違っていると感じたら1に戻れ」という2つのルールを知った時は衝撃だった。それから、大手チェーンストアのように「排除の論理」に立つか、スチューが実践する「真の地域密着型小売店」の道に進むかで散々迷った末に、2006年から後者に賭けた。この道に進んで本当に良かった。当時を振り返るたびにそう思う。
あの時最後に決断させたのは何だったんだろう。「地域密着とは?」ということをもういっぺん真剣に考えたのはもちろんだけど、「クレームとは何か?」ということに気付けたのも大きかったと思う。
売り場に行くでしょう。そうしたら、お客さんがスタッフと楽しそうにやってるのよ(笑)。でも私にはメールでも電話でもメチャうるさいことを言ってくる。このギャップがずっと理解できなかったんだが、スチューの教えで気付いた。
叱咤してくれるのはサトカメのファンだからなんだよね。本気で改善してもらいたいから私に言うんだ。売り場でその時々のスタッフに向けて怒りをぶつけるお客さんは自分の感情を吐き出したいだけ。ワーッと怒って終わりか、あるいは飲食店の一見客のように、おいしくないと思ったら黙って離れていく。そうじゃないのは本当のファンだからなんだ。サトカメへの愛があるから、現場スタッフを気遣いつつ、私たち経営陣にはキツイお叱りをくださる。それを受けて経営陣は問題解決に取り組むわけで、お叱りをクレームととらえるのは違う。
B-plus読者にも地域密着型の事業をされている方は多いでしょう。2018年の年頭に際し、ご自身がどう変わったか、従業員がどう変わったかを振り返っておくと良いと思います。そうやって自分たちの成長を意識しておけば、この1年で進化させるべきことも見えてくるでしょう。今年はB-plusさんが事務局になってくれて東京でも「勝人塾」が再開したし、ぜひ一緒にいい年にしたいと思います。あらためて皆さんに。今年もよろしくお願いします。
-1月24日~2月20日までの勝人塾-
経営者の悩みを即解決! 少人数制・公開コンサルティング形式の経営者のための勉強会「勝人塾」。2018年1~2月は下記日程で行います。当日参加、大歓迎!
1月26日とうほく勝人塾IN八戸
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vol.15 1年の変化を棚おろしして考えた
著者プロフィール
佐藤 勝人 Katsuhito Sato
サトーカメラ代表取締役副社長/日本販売促進研究所.商業経営コンサルタント/想道美留(上海)有限公司チーフコンサルタント/作新学院大学客員教授/宇都宮メディア.アーツ専門学校特別講師/商業経営者育成「勝人塾」塾長
経 歴
栃木県宇都宮市生まれ。1988年、23歳で家業のカメラ店を地域密着型のカメラ写真専門店に業態転換し社員ゼロから兄弟でスタート。「想い出をキレイに一生残すために」という企業理念のもと、栃木県エリアに絞り込み専門分野に集中特化することで独自の経営スタイルを確立しながら自身4度目となるビジネスモデルの変革に挑戦中。栃木県民のカメラ・レンズ年間消費量を全国平均の3倍以上に押し上げ圧倒的1位を獲得(総務省調べ)。2015年キヤノン中国と業務提携しサトーカメラ宇都宮本店をモデルにしたアジア№1の上海ショールームを開設。中国のカメラ業界のコンサルティングにも携わっている。また商業経営コンサルタントとしても全国15ヶ所で経営者育成塾「勝人塾」を主宰。実務家歴39年目にして商業経営コンサルタント歴22年目と二足の草鞋を履き続ける実践的育成法で唯一無二の指導者となる。年商1000万〜1兆円企業と支援先は広がり、規模・業態・業種・業界を問わず、あらゆる企業から評価を得ている。最新刊に「地域密着店がリアル×ネットで全国繁盛店になる方法」(同文館出版)がある。Youtube公式チャンネル「サトーカメラch」「佐藤勝人」でも情報発信中。
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