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「人生100年時代」。これまでに得た経験やスキルを活かし、新たな仕事に挑戦するシニア世代に注目が集まっています。そのようなシニアのセカンドキャリアを支援する企業や団体の取り組みを紹介するとともに、シニア人材を活かすためのヒントや情報を探る連載の第4回。
 
今回は、生涯現役社会の実現に向けた高齢者雇用の支援を行う、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の雇用・推進研究部長の矢田玲湖氏と、高齢者助成部次長の長澤達士氏にお話をうかがいました。
 
 

高齢者雇用問題の専門家による相談・助言

 
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10月に開催される高年齢者雇用開発フォーラム
――貴法人は高齢者および障がい者の雇用支援や、職業能力の開発・向上支援などを目的とした、厚生労働省所管の独立行政法人とうかがっています。中でも高齢者雇用に関連した事業については、どのような業務を行っているのでしょうか。
 
矢田 高齢者雇用に取り組む事業主を対象にした相談・援助をはじめ、高齢者雇用に関する調査・研究、イベント・セミナーの開催や啓発活動などを行っています。特に事業主への相談・援助業務では、高齢者雇用問題に精通した専門家を「65歳超雇用推進プランナー」および「高年齢者雇用アドバイザー」として委嘱し、各企業の状況に応じた、専門的かつ技術的な支援を提供しています。プランナーおよびアドバイザーは全国に500人超おり、社会保険労務士や経営コンサルタント、中小企業診断士としても活動している方々です。
 
現在、法律で65歳までの雇用確保措置が義務付けられているものの、高齢者が働きやすい環境にするためには、人事管理制度の見直しや職場改善など、さまざまな条件整備に取り組む必要があります。そこで、社内制度の整備を考えている事業主に対して、アドバイザーが相談を受けたり、制度の見直しについて助言しています。また、65歳を超えても働くことができる企業を増やすため、プランナーが65歳を超えた継続雇用延長や、定年引上げに関する制度の導入をプランニングして事業主に提案するサービスを昨年度から実施しております。
 
「どの企業に、どのような提案をするか」といった大まかな計画は当機構が示し、実際にその企業が抱える課題を分析したり、そのために必要な制度や改善点を提案したりする具体的な内容については、地域の実情に精通しているプランナーやアドバイザーの専門性を活かすようにしているんです。
 
 

制度改善や条件整備に対する助成金の活用

 
――アドバイザーやプランナーは企業に対して、実際にどのような提案をなさっているのでしょうか。
 
矢田 まず、アドバイザーやプランナーが企業を訪問し、高齢者雇用についての現状や課題を詳細に聞き取ります。そして、聞き取った内容をもとに制度改善案を専用の提案シートにまとめ、お渡ししています。高齢者雇用に関する課題は、業種や企業規模などによってかなり異なりますし、当然ながら経営者の考え方や経営方針も千差万別です。また、高齢者の能力や働き方も多様ですから、単に定年を引き上げたり、継続雇用年齢を引き上げれば良いというわけにもいきません。
 
そこで、アドバイザーやプランナーは、その企業の社風や実像などを踏まえ、すでに制度改善に取り組んでいる企業の先進事例、同業他社の取組み状況といった企業が知りたい情報や、その企業の将来的な構成年齢別の人員フロー図などを資料にまとめ、その企業が抱えている問題を“見える化”して、最も適した提案をしていくわけです。また、定年を迎えた高齢者だけでなく、現役世代の方々に向け、定年後の働き方を早めに見据えたキャリア開発の整備なども、今後重要になっていくと思います。企業からの要望に応じて、そのような中高年従業員向けの研修なども行っています。
 
――企業が社内制度を整備するための支援として、助成金の給付も行っているそうですね。
 
長澤 はい。雇用制度を整えていくためには多くの時間や費用もかかります。大企業なら自社で対応できても、経営的に余裕のない中小企業では難しい場合も多々ありますよね。そこで当機構では、高齢者雇用の制度改善に関する助成金を給付しています。
 
当機構が給付する助成金には、65歳以上への定年引上げや継続雇用制度の導入などを実施した場合に受給できる「65歳超継続雇用促進コース」、高齢者の雇用管理制度を整備する際に一定の措置を行った場合に受給できる「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース」、そして、有期契約労働者から無期雇用労働者への転換を実施した場合に受給できる「高年齢者無期雇用転換コース」の3つのコースがあり、企業が制度改善や条件整備を行う際に、それぞれの状況に応じてご活用いただいています。
 
 

生涯現役社会の実現に向けた周知・啓発

 
――プランナーやアドバイザーからの助言・提案や、助成金の給付などの支援を受けるためにも、企業はそうした情報を得ておく必要があると思います。そのような支援活動の周知および認知度向上のための取り組みや、高齢者雇用に関する啓発活動についてもお聞かせください。
 
矢田 主に労働局やハローワークなどと連携し、パンフレットなどで告知したり、事業主向けの説明会などを行ったりしています。さらに、各自治体にある商工会議所や事業主団体にも助成金のご案内や周知の協力を依頼するなどして、広報活動を展開しています。
 
啓発活動としては、高齢者雇用を進めるために企業が行った創意工夫の事例を広く募集する「高年齢者雇用開発コンテスト」を毎年行っています。また、厚生労働省が定める高年齢者雇用促進月間である毎年10月には、「高年齢者雇用開発フォーラム」を開催しており、今年度は東京都千代田区のイイノホールにて2019年10月3日に開催します。このフォーラムでは「高年齢者雇用開発コンテスト」の優秀事例を表彰し、受賞企業の事例発表等を行っています。高齢者雇用に関して独自の制度を設けるなど、先進的に取り組んでいる企業も数多くあるんです。そうした企業の取り組みに対して表彰し、コンテスト受賞企業の事例を発表することで、他企業が制度の導入や改善をするためのヒントを得ていただくことを目的としています。併せて、記念講演やトークセッションなども行い、周知や啓発に努めています。
 
ほかにも、今年度は「高齢者を戦力化するための工夫」をテーマに、基調講演やパネルディスカッション、事例発表を中心としたシンポジウムを北海道、東京都、富山県、大阪府、香川県、福岡県の全国6ヶ所で開催する予定です。
 
――それでは最後に、生涯現役社会の実現に向けた今後の展望をお聞かせください。
 
矢田 今後も、企業への制度改善提案と周知・啓発に力を入れていきます。また、将来的な法整備の状況も見据え、未だ制度を整えていない企業に向けた働きかけや提案も強化していきたいです。
 
先ほども申し上げたように、先進的な取り組みを独自に行っている企業も多く、そうした企業事例なども紹介していきたいですね。自社では普通の取り組みだと思っていても、ほかの企業から見ると新しい気付きにもなることも多いですから、ぜひ高年齢者雇用開発コンテストにエントリーしていただいて、より広く周知していきたいと考えています。また、高年齢者雇用開発フォーラムやシンポジウムについては、一般の方々に参加いただくことができます。こちらは先着順・参加費無料ですので、興味や関心のある方はぜひお越しください。
 
 
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
(高年齢者雇用開発フォーラムやシンポジウムへの参加申込みもこちらで受付けています)
https://www.jeed.or.jp
 
 
人生100年時代におけるシニアのセカンドキャリア
vol.4 専門家による助言・提案と助成金の活用
(2019.9.6)

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