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「人生100年時代」。これまでに得た経験やスキルを活かし、新たな仕事に挑戦するシニア世代に注目が集まっています。そのようなシニアのセカンドキャリアを支援する企業や団体の取り組みを紹介するとともに、シニア人材を活かすためのヒントや情報を探る連載の第3回。
 
今回は、シニア世代の多様なセカンドキャリアを支援するとともに企業や人材会社におけるシニアの活用や活躍を促進し、生涯現役社会の実現を目指す、シニアセカンドキャリア推進協会の髙平ゆかり理事長にお話をうかがいました。
 
 

現役世代よりも働き方が多様化するシニア

 
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シンポジウムで登壇する髙平理事長
――貴協会はシニアの人材派遣ビジネスで高い実績を誇る人材会社および関連する団体、研究者によって設立された業界初の任意団体とお聞きしています。
 
はい。シニアセカンドキャリア推進協会は、商社系の人材派遣会社など複数の人材派遣会社の実務責任者を中心に2007年に設立された任意団体です。当初は、実務責任者間の情報共有や情報交換、共同マーケティングや勉強会などを目的としていました。現在も変わらない理念として、これからのシニアのセカンドキャリアとはどうあるべきかなど、職業倫理や社会全体の意識を高めることを念頭に置いています。設立当時の社会は、定年以降のシニアが積極的に働くという機運が現在ほど高まっておらず、シニアのセカンドキャリアについて着目している人材会社は多くはありませんでした。そこで、当協会は人材業界のコンソーシアムとして、シニア世代に対してどのような支援ができるかを考えてきたわけです。
 
――具体的な活動内容もお聞かせくださいますか。
 
セカンドキャリアを促進させるセミナーや研修、シンポジウムや研究会、シニア活用に関する啓蒙活動などを行って参りました。その中で当協会は、若い方よりもむしろリタイアしたシニアにこそ“派遣という働き方”が適していると提言しているんです。というのも、シニア世代は、現役世代よりも一層働き方が多様化します。介護や自身の健康の問題など、さまざまな境遇がある中、必ずしも全員がフルタイムで働けるわけではありません。でも、人材派遣ならば、週2日や3日だけ勤務するなど、柔軟な働き方が可能なわけです。
 
しかし、人材派遣業界全体の意識がまとまっていなければ、そのための市場がつくれないという課題がありました。また、当協会の設立後、派遣切りや非正規雇用の格差などの問題が表面化し、派遣法の改正などもたびたび行われました。確かに、人材派遣の一側面として、派遣切りのような問題もないとは言い切れません。ただ、通常の雇用契約の場合、一般的に高齢者は労使関係の立場がどうしても弱くなってしまいがちです。一方、人材派遣会社ならば、派遣先企業とシニア派遣社員の双方向から契約を管理します。例えば、もしも当初の契約と実際の仕事内容が違うとなれば、派遣労働者を活用する企業に改善や適切な対応を申し入れることも可能なんです。つまり、人材派遣会社が使用者である派遣先企業と労働者であるシニアとの間に入って調整できる役割を持つことを鑑みれば、シニアの就労に関して、人材派遣はかなり適したシステムだと考えています。
 
 

長期化する職業人生における最適な働き方

 
――確かに、違法な労働環境などの、非正規雇用の問題が取りざたされることも多いと思います。しかし、一度リタイアを迎えたシニア世代にとって、人材派遣は多様な働き方に柔軟に対応できる選択肢としては、有益かもしれません。
 
そうですね。それに、派遣社員は当然ながら加入条件を満たせば社会保険や厚生年金にも加入できます。最近の事例ですと、介護などで仕事から離れていて厚生年金の受給資格期間が満たないから、期間を埋める分だけ派遣で働きたいという方もいらっしゃいます。そのような意味でも一定のメリットがあると思いますね。
 
また、ポートフォリオワークという考え方があります。それは、まず収入を目的としたワーク。次に新たなスキルの習得や、学習を目的としたワーク。そしてボランティアなどの社会貢献を目的としたワーク。最後に、家庭におけるワーク。この四つの“ワーク”が、個々人のキャリアを形成する要素になります。ある程度の年齢までは、ほとんどの方が生活のために収入を得る仕事の割合が大きいと思います。しかし、定年後などは自身の就労目的によってそのバランスを変えていくことで、キャリアに対する意識も変わり、多様な働き方につながるんです。そのように今後、長期化していく職業人生を、最適な時間配分で働いていくことが、現役世代はもちろんシニア世代の働き方においても重要になってくると思います。
 
 

人生の中で起こる変化をチャンスと捉える

 
――仕事に対する目的のバランスを変えていくことで、柔軟な働き方ができると。
 
ええ。この先どんな世の中になるかは誰にもわかりませんし、不確実性がものすごく高まっていますよね。私が言いたいのは、人生の中で起こるさまざまな変化を、ある程度予測しつつ自律的なキャリア形成を意識することが大事だということです。人生の変化をリスクとして避けるのではなく、新たな機会、チャンスと捉えて、いかに自分のキャリアにつなげていくか。例えば、気に染まない出向などで「これは左遷じゃないか」とか、「自分のキャリアはもうこれで終わりか」と落ち込むよりも、本社ではできない仕事を経験できたり、出向先企業の組織マネジメントを学んだりなど、捉え方次第でさまざまな学びの経験になります。それを前向きに自分の人生の糧としていけば、リタイアした後の仕事にも活かすことができるんです。私はこれまで、そういう方々を数多く見てきました。
 
――人生の転機や変化をうまく利用すれば、セカンドキャリアを充実したものにしていけるわけですね。それでは、最後に貴協会の今後の展望をお聞かせください。
 
当協会の新たなビジョンとして、任意団体から一般社団法人化を予定しています。そのうえで、従来の活動に加えて副業支援やプロボノ、社会貢献活動も行っていきます。また、昨年2018年10月1日には「生涯現役の日」が制定されました。当協会はこの「生涯現役の日」の普及活動にも参加しています。制定からちょうど1年を迎える今年10月1日には、「生涯現役の日交流フォーラム2019」を都内で開催する予定で、高齢社会共創センターの秋山弘子先生もご参加なさるんですよ。その中で、当協会は共催団体として社会への認知や普及に努めていきます。そして、セカンドキャリアに対してのしっかりとした考え方、フィロソフィを持つことの大切さを世の中に普及していきたいですね。“推進協会”と名付けているとおり、それを今の若い世代にも伝えていきたいと考えています。
 
 
■シニアセカンドキャリア推進協会
http://www.sscpa-j.org
 
■「生涯現役の日」制定・普及推進委員会
https://www.lifelongsociety.org
 
 
人生100年時代におけるシニアのセカンドキャリア
vol.3 長期化する職業人生を充実させるために
(2019.8.9)

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