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高速バスとLCC、連携の未来図
~都市間移動網の発達を経済活性につなげる~

 
 

◆伸び悩んできた国内LCC

 
 LCCも日本国内ではこれまで伸び悩んできた。昨年8月に運行を開始したエアアジア・ジャパンは直後の9月から採算ラインといわれる75%を割り込み、翌年1月には早々とCEOが退いた。2012年6月時点で世界のLCC就航比率は26%にのぼるが、日本では4%にとどまった。
 
 今年10月からピーチ・アビエーションが成田-関空便を就航させることを発表、7月には福岡では日本初の 「リージョナルLCC」 を目指すリンクが国土交通省に就航を申請するなど、普及を目指す動きはここにきて活発化している。ただ今年6月にボーイング社が発表したレポートでは、2032年には世界の航空便のうち半分以上をLCCが占めると予想されている。特にアジア圏ではLCCの比率が約7割にまで伸びると見込まれており、このままでは、日本が大きく出遅れることは必至だ。
 
 こういった状況に陥ったのは、大都市圏の主要空港においてLCCが冷遇されてきたことが大きい。羽田の発着枠はほとんど与えられず、関西空港では2015年に予定されていたLCC専用の拠点、第3ターミナルの供用開始が2016年度にずれ込む見通しとなっている。現状、首都圏では成田発着が多く、その他では地方空港どうしを結ぶ便が大半を占める。確かに将来的には地方都市どうしを結ぶ手段としての期待が高いが、そのための行政の補助もなく、羽田とのリンクも限定されたままの現状では、利用者が増えず、キャッシュフロー面で “安定飛行” に移ることもかなわない。
 
 

◆都市間移動充実による実体経済強化

 
 高速バスとLCCは一部競合する部分はあるものの、基本的には共存共栄が可能な交通手段である。道さえあればどこでも結べる高速バスは細かいネットとして日本全国を網羅でき、LCCは飛行場がある都市を高速かつ安価に結ぶ、より目の大きなネットとして機能する。相互補完することで、若年層から高齢者層まで、さまざまな層がニーズに合わせて、ローコストかつスムーズに移動できるようになる。
 
 人が動けばお金も動く。旅行予約サイト 「エクスペディア」 が発表した2012年末から2013年初めまでの旅行客動向調査によると、国内では札幌、沖縄など新たにLCCが就航した都市が初めて予約数のトップ10にランクインした。端的に、人が集まる場所、人気の場所は価値が高まり、地価が上昇する。安倍政権がこれまで実現した日経平均の上昇や円安にメリットを感じる人は少ないが、日本全体で地価が上がれば、多くの国民の資産がそれだけ増えたことになる。経済の底上げをそちらから実感する人が増加することで消費が活発化し、エコノミー症候群さながらの塞栓を起こしていたお金が、滑らかに流動することになる。
 
 そのカギとなるものこそ、高速バスとLCCのさらなる発展だ。高速バスについては、たとえば自治体レベルで利用者に対して補助金を出すなどの対応があっていい。コスト増による運賃値上がりぶんを補助金でカバーすれば、ビジネス客や観光客の増加が見込め、地方都市にとっても見返りは大きい。LCCについては、横田基地など、軍用に限られている空港を開放するぐらいの大胆な発想で、まずは首都圏と地方をしっかり結ぶために便数を増加させる策が求められる。
 
 金融政策により数字上の好景気を演出した安倍政権が、7月の参議院選挙で大勝した。今後求められるのは、こういった、地に足のついた経済政策である。
 
 
 
 

(ライター 谷垣吉彦)

 
 
 
 

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