「自分が好きなもの」を突き詰める
『十角館の殺人』はありがたいことに、発表から30年が経った今でも多くの人に読まれ続けているようです。その要因の一つはたぶん、あの作品が当時の流行を狙って書いたものではなかった、というところにあるんだろうと思うんですね。「自分は今、こういうミステリが読みたいんだ」という想いを最優先させて書いた結果、それが同じ想いを持っていた人々に伝わったんだろうと思うし、だからこそ年月が経ってもあまり色褪せない作品になったのかな、とも思います。
ミステリが好きで自分でも書きたいという人は、自分はミステリというジャンルのどこが好きなのか、どんなところに最大の魅力を感じるのか、ということをじっくりと突き詰めて考えてみてください。そうして、とにかく自分が一番好きなのは「これ」だから、自分でも「これ」を書くんだ、という創作の「芯」を持ってほしい。それがしっかりしていれば結果はおのずとついてくるものだ、というのが僕の経験則です。芽が出るまでに時間がかかることもあるかもしれませんが、若い人たちは時代に迎合するのではなく、「時代をオレに引き寄せるんだ」という気概で取り組んでほしいですね。
(インタビュー・文 中野夢菜/写真 Nori)
綾辻行人(あやつじ ゆきと)
1960年生まれ 京都府出身
1960年生まれ 京都府出身
幼い頃から推理小説に親しみ、小学校6年生のときにオリジナルの推理小説を書き始める。1987年、26歳のとき『十角館の殺人』で推理小説作家としてデビュー。当時は京都大学の大学院に在学中であり、1992年に単位取得退学して専業作家となった。同年、『時計館の殺人』で第45回日本推理作家協会賞を受賞。近年は横溝正史ミステリ大賞や日本ホラー小説大賞、日本ミステリー文学大賞新人賞など、数多くの文学賞の選考委員を務めている。
Twitter
https://twitter.com/ayatsujiyukito
https://twitter.com/ayatsujiyukito